50年ぶりの新1セント硬貨
2009.02.26
米造幣局はリンカーン第16代大統領の生誕200年を記念して、新デザインの1セント硬貨を2月12日のリンカーン誕生日に発行しました。新デザインの1セント硬貨発行は約50年ぶりとのことです。
昨今のアメリカでは度々、「1セント硬貨は本当に必要なのか」という議論が起こっているようです。確かに1セント硬貨を受取らないお店や、おつりが数セントだけだった場合、おつりを渡さないお店もあったりします。道端に落ちているのも度々見かけたりしますね。さすがに日本では1円硬貨を渡さないお店なんて存在しないと思うので、日本の1円より確実に軽く扱われている気がします。The Wall Street Journalの記事によると、ハーバード大教授のGreg Mankiw氏も1セント硬貨は既に役目を終えたと発言していることを紹介していました。また新1セント硬貨を作るのに1.7セントの費用がかかるそうです。作れば作るほど赤字になるわけです。
そんな「必要ない」とも言われている1セント硬貨が、なぜ新しく発行されたのでしょうか。そこには私たちよそ者には分からない、アメリカ人の1セント硬貨に対する思い入れ、リンカーン元大統領に対する思い入れというものが大きく存在するようです。アメリカのコインスター社が実施した調査によるとアメリカ人の3分の2が「1セント硬貨はアメリカの文化、歴史、経済の象徴として必要だ」と回答しています。普段はじゃまな存在だけど、無くなるのは嫌なようですね。自らリンカーンマニアだと公言しているオバマ大統領も選挙キャンペーン中に「リンカーン元大統領に代わる人が見つかった場合には、ペニー(*1セント硬貨のこと)の廃止を真剣に考える」と述べていたそうですし、アメリカ人にとって、南北戦争とリンカーンという人物には非常に特別な思いがあるようですね。
ちなみに上記に記載した調査を実施したコインスター社、非常に面白いことをやっております。アメリカでは銀行に行っても硬貨を紙幣に換金してくれません。1セント硬貨を貯めてしまうと、お店では嫌な顔をされ、銀行でも換金してくれず、ただただ邪魔な存在になってしまうわけです。そんな中、このコインスター社は硬貨を紙幣に換金する自動販売機を作っています。ちなみに換金手数料は8.9%と非常に暴利な金額です。なんだか全く納得がいきませんが、アマゾンなどのギフト券と交換する場合には等価で換金してくれるようなので少し安心いたしました。コインスター社にとっては1セント硬貨の存続は会社の死活問題ですが、新デザインも発行されたようですし今のところは安心して良さそうですね。日本ではまず無理な商売だと思いますが、この商売感覚には本当に脱帽いたしました。
ニューヨーク駐在 木村久生



