中国と韓国の化粧品事情
2009.02.05
日経リサーチでは、世界各地の文化や流行、社会事情などを収集するため、海外からの留学生「コミュニケーション・アンバサダー」(Communication Ambassador、略して「CA」)を集めて、さまざまなテーマに基づき現地事情についてディスカッションやプレゼンテーションを行っています。
今回は「アジアの化粧品事情」と題して、中国、韓国、タイ、ベトナム出身のみなさんが化粧品をめぐる各国の事情を紹介してくれました。その中から今回は中国と韓国での化粧品事情についてご紹介します。
韓国と中国で流行しているメーカーとその商品
韓国 BBクリームの発信地
まずはお隣の国、韓国から。参加者の金 秀娥(キム スア)さんは、韓国で流行っている商品として「BBクリーム」を紹介してくれました。BBクリームは日本でも美容家のIKKOさんが取り上げて話題になった“下地クリーム、ファンデーション、日焼け止めの役割をひとつで果たす”クリーム。もともとはドイツで医薬品として開発された商品で、その後化粧品メーカーが発売して普及。現在は複数のメーカーが販売しています。中でもハンスキン、スキン79などのブランドが有名だそうです。他にもピーリングジェルによる角質ケアや毛穴ケアができる商品に人気が集まっているとのこと。美肌を追求する女性の関心は日本と同様、いや、それ以上かもしれません。
世界に広がる韓国発ブランド
李恵卿(イ ヘギョン)さんも韓国出身。彼女は“HERA(ヘラ)”というブランドを紹介してくれました。ユーザーは20代から30代前半の学生、主婦、会社員。油分が多いので乾燥肌の人に人気だそうです。「韓国女性ならば最低一回は買ったことがあると思う」と話していました。また、“雪花秀(ソルファス)”というブランドも人気。HERAと同じく“AMORE PACIFIC”(アモーレパシフィック)という化粧品企業のブランドです。
この2つの人気ブランドを展開するアモーレパシフィックは日本のデパートにも店舗展開しており、日本のコスメ専門雑誌でもブランド名を目にするようになりました。
韓国のドラマやタレントが日本で人気が出ることは今や当たり前になってきていますが、今後は韓国発の化粧品が日本でブームになることもありそうですね。
中国人女性は化粧ビギナー!?
次は中国出身の劉瑾(リュウ キン)さん。「最近は花王の「ファインフィット」というファンデーションがOLなどに人気」と教えてくれました。テレビCMでうたわれた「肌が5歳若くなる」というコピーが人気の理由のようです。その他、カネボウの製品は日本の化粧品の中で価格が安く、種類が豊富なため人気があるとのこと。
中国の女性は高校を出るまで化粧をしません。みんなどのように化粧をしてよいのか知らないため、簡単な使い方が記された説明書が付録としてついている製品が人気のようです。
「大容量」・「リーズナブル」・「親しみやすさ」が人気
スキンケアでは、「豆乳イソフラボン」(なめらか本舗シリーズ/常盤薬品工業)の基礎化粧品が、容量が大きく、安いため評判だそうです。 “美容女王”の異名をもつテレビの司会者(日本でいうとIKKOさんのような人)もこの“イソフラボン”化粧品をメディアで紹介し絶賛したため、この2~3年で人気に火がついたとのこと。どこでも美のカリスマの影響力は大きいようです。
また、留学中の彼女たちは中国の友達から「DHCの商品を買ってきてくれ」と頼まれることが多いと話していました。中国ではDHCは高価なイメージがあるそうです。看板商品の一つであるクレンジングオイルも価格が日本の3倍ほどで、しかも専用の販売店がなく通販でしか手に入らないため、お友達のためにお土産として買って行くこともあるそうです。
興味深いのは、“これまであまりきっちりと化粧をする習慣がなかった中国の女性ですが、最近は若い世代がおしゃれの一環で化粧への関心を高めており、同時にスキンケアにも興味を持ち始めている”という傾向です。洗顔、スキンケア、美白の順に注目が集まっているとのこと。中国でも若い人の肌の悩みとして“ニキビ”があるそうですが、「中国製のニキビケア用クリームはあまり効果がない」と評判は低めのようです。
海外ブランドへの憧れ
最近中国でも韓国ドラマが人気で、化粧品も韓国のものが入ってきて人気が出てきているそうです。BBクリームも通販でのみですが入手できるとのこと。
一方で日本の化粧品への人気も根強く、とくに資生堂は憧れのブランド。劉瑾さんが、以前日本で中国人旅行者向けのガイドのアルバイトをしていた際、中国人の中年女性の旅行者の団体を、あるスーパーマーケットに案内したところ、中国よりも30%くらい安く販売されている資生堂の商品を買い占めるという出来事があったくらいの人気だそうです。
もう一人の中国出身者、禹香丹(ウ ヒャンダン)さんによれば、“AVON”というブランドが人気。「“価格がそれほど高くなく、効果がある”と若い女性にも支持されている」といいます。美容液が150元くらいで中国では少し高いと感じるけれども、手が届く程度の価格設定。人気の秘密はテレビCMにあるようで、「私たち毎日会うね」「私たちみんな使ってるよ」などのセリフとともに、OLや市場のおばさん、農民、工場労働者などが出演し、幅広い年齢、職業の人々から支持を集めていることをアピールしているそうです。
中国では国産商品を使うことに対してはあまり価値を見出していない様子。資生堂、DHCなどが有名で、最近ではカネボウの人気が出てきているとのことでした。
化粧品の購入場所
ネット先進国・韓国、通信販売を駆使それでは、女性たちは化粧品をどのようにして手に入れているのでしょうか。韓国の李 恵卿さんは、「インターネットを通じて化粧品を購入することが多い」といいます。とくに香港は化粧品が安く、現地在住の業者から直接輸入することができるインターネット販売が人気だそうです。訪問販売で有名なのは、冒頭で触れたHERA。訪問販売とインターネット販売をうまく組み合わせて成功したブランドで、サンプルを30個くらいもらえるので人気だそうです。また、耳寄りな情報として、韓国の免税店は一般の店舗より30%安くするという話が出ました。さらに、カードを作ると、10~20%引きになったりもするということで、他のCAから「うらやましい!」という声が聞かれました。
対面販売重視の中国
禹 香丹さんによれば、中国の購入チャネルとしては大型スーパーと百貨店が主とのこと。一つの都市には必ず一つは百貨店があり、「少し背伸びをすれば買える」商品が充実しているそうです。こだわりがある人はここで買い物をするということです。中国では海賊版が多いので、化粧品に関しても、小さな路面店ではなく、百貨店での購入が最も安心できるようです。
気候が違うと肌の調子も違う
また中国出身のお二人から興味深いお話がありました。「中国では南部と北部で化粧の習慣がちょっと違う」というのです。禹 香丹さんは、北にある吉林省の出身。気候が厳しく、乾燥に悩まされたり、強い風が吹いてほこりや黄砂が顔についてしまったりするため、洗顔フォームの使用が必須と言います。中高生ではニキビ、大学生は美白の機能がある洗顔料を使うそうです。一方、劉さんが生まれ育った南部の湖南省では気候が北部ほど厳しくないため、水だけで洗顔することもあるそうで、基礎化粧品を含む製品への意識は北部ほど高くないと話していました。国内の気候の違いがお肌への意識の違いも生み出しているようです。
化粧品に関する情報入手経路
ネット情報に頼る韓国
それでは、それぞれの国々で、ユーザーは化粧品の情報をどのように入手しているのでしょうか。ネット先進国の韓国では、インターネットを活用して情報を集めることが多いそうです。無料の会員制情報サイト(“COSINSIDE”など)を通じて、ユーザーによる化粧品のレビューや、売り場の感想などのクチコミをチェックできるそうです。そこにはブランドの広告リンクも多数あって、業界情報、ニュース、イベントの情報、新製品情報をいち早く入手できます。他にも、個人ブログなども参考にすることがあるそうです。一般のユーザーが、発売日、容量、価格、特徴、質感、さらには製品の歴史などまで調べて書く人もいて、自ら複数の商品を試して、それぞれの使用感などを掲載する個人ブロガーもいるとか。ビューティーライター顔負けの分析力でブログに情報発信しているので、それらも商品選びの際のヒントになるようです。李さんは、「化粧品はデパートなどの販売員の話よりネットのブログなどを参考にしています」と話します。というのも、対面販売だと当然ながら自社ブランドしか勧めないので、むしろネット上の情報の方が信用できるから、というのが理由です。
とはいっても、40代、50代のネットに親しんでない世代は、やはり知人からの情報や化粧品売り場が主な情報入手経路になっているそうです。
日本でいくつか見られる化粧品専門誌は利用しないのでしょうか?という質問について、「韓国ではインターネット上でほとんどの情報が手に入るので、わざわざ雑誌を買うことはあまりない」との答え。
市場の拡大が予想される中国では?
中国では化粧品そのものについて取り上げられている専門誌ではなくて、「化粧の仕方」について解説してある書籍のようなものが売られているそうです。化粧の仕方が分からない女性たちが化粧品の売り場においてある小さな化粧品のハウツー本、解説本などを手に取ることは多い、とのことでした。シンプルに製品をアピールするのではなくて、「きれいになる」ということを啓蒙する活動が併せて行われる必要がありそうです。
また、中国ではまだ韓国ほどインターネットが普及していないので、テレビCMなどを頼りにすることが多く、中でも有名人が出演した商品に人気が集まるとのこと。企業は自社ブランドのイメージに合う出演者を慎重に選ぶ必要がありそうです。また、中国の雑誌は全ページカラーではなく、白黒のものも多いので、雑誌は情報源にはなかなかならないということでした。
女性なら誰もが「きれいになりたい!」という願いを持っていると思いますが、今回のディスカッションを通じてわかったことは、国や地域、文化、気候によって化粧への意識や化粧品の使い方が異なるということです。私たちにとっては大変新鮮な驚きがありました。海外進出を考える化粧品メーカーは現地のニーズをキメ細やかに把握する努力が求められそうです。
インターネットを通じて他国の化粧文化に親しんだり、インターネットショッピングで実際に商品を手に入れることができたり、これからますます女性同士の交流が進みそうです。それぞれのいいところを取り入れて、楽しく異文化交流ができたらいいですね。
※写真は本人の了解を得て掲載しています。
※このコラムの内容は、各国全体の事情を現すものではなく、一部の留学生の意見・視点も含まれるものとしてご理解ください。
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国際調査グループ 井上弘喜



