各国のデジタルカメラ事情
2009.03.09
日経リサーチでは世界各地の文化や流行、社会事情などを収集するため、海外からの留学生(コミュニケーション・アンバサダー、Communication Ambassador、CA)を集めて、様々なテーマで現地事情のディスカッションやプレゼンテーションを行っています。
今回は、「各国のデジタルカメラ事情」と題して、中国、韓国、台湾、マカオ、タイ、ペルーのみなさんがデジタルカメラをめぐる各国の事情を紹介してくれました。 ~デジタルカメラが普及する前は?~
<デジカメ以前>
司会者: 「本日は皆さんの国でのデジタルカメラの利用について伺います。ではまず、そもそもデジタルカメラが普及する以前は、みなさんの国ではどんなカメラを使っていたのでしょうか?」
台湾(郭皇佑さん:以下台湾): 「台湾では、使い捨てカメラは『割高』『きれいに撮れない』というイメージがあり、あまり普及しませんでした。フィルムカメラはお店で現像してもらうのですが、台湾では当時から即日プリントは当たり前。一時間くらいで仕上げてくれます。来日した当時(1990年代初頭)、日本のお店にフィルムを持って行ったら『現像に数日かかる』、と言われてびっくりしたのを覚えています」
マカオ(エレーナ・ラモスさん:以下マカオ): 「マカオでも即日プリント。現像の早さで店舗同士が競い合い、追加料金なしでも30分位で現像してくれました。他にも、現像屋さんがサービスで勝手に美白効果を加えて写真を修正してくれたり、現像用紙は当時から防水加工してあるなど結構優秀でした。」
ペルー(最所賢二さん:以下ペルー): 「ペルーではデジカメブームがあったのですが、今でもフィルムカメラを使っている人はまだ多いです。フィルムは気軽に撮れないし、残りの枚数や電池を気にしながら撮っていた記憶があります。あと、インスタントは値段が高いので、観光地のカメラマンがビジネス用に使っていることが多いです。フィルムもカメラも、一番人気は断然”Kodak”です。」
~デジタルカメラの利用方法~
司会者: 「皆さんの国でもデジタルカメラが普及しているようですが、どんな使い方をしているのでしょうか?」
韓国(金ナンさん:以下韓国): 「韓国ではすっかりデジカメが普及し、日本と同じくらいに持っていることは当たり前になってきています。以前は慎重に人物や風景を中心に撮っていたけれど、今ではすぐに確認して削除したりできるので、日常生活の中で気軽に撮影を楽しむようになりました。PCのハードに保存して確認したり、ブログに載せたりします。」
タイ(ルジラット・ヴィニットポンさん:以下タイ): 「タイでも、デジカメ普及前より格段に撮影枚数が増えました。少しずつですが動画を撮る人も増え始めているようです。やはりSNSサイトやブログに載せたりして使います。印刷するのはつい忘れがちになってしまいますね。」
<カメラつき携帯の利用>
司会者: 「最近日本ではほとんどの携帯電話にカメラがついていますが、皆さんの国ではどうですか。」
中国(譚 林心さん:以下中国): 「中国の最近の携帯もほとんどカメラ付きになってきましたが、あまり利用していません。というのも、画素数が少なく、上手く写真が撮れないし、撮影した写真をメールで送ることができないからです。」
韓国: 「韓国では、日本と同様品質の高いカメラ付携帯電話が普及していて、使用頻度は高いです。携帯のカメラは自分撮りをすることが多い気がします。デジカメと同じレベルではないですが、デジカメを持っていない時に代わりに使っています。」
タイ: 「携帯のカメラは”小さく、便利”な印象。最近出ているものは品質が良くなってきました。」
~人気のあるブランド~
<ソニーの存在感は圧倒的>
司会者: 「それでは次に、みなさんの国で人気のあるデジカメのメーカー、ブランドを教えてください。」
台湾: 「Sonyは”オシャレ”なイメージがあります。Panasonicは、台湾でも人気の浜崎あゆみをCMに起用していて知名度があります。Samsungもありますが、携帯電話のメーカーとしてのイメージの方が強いですね。」
タイ: 「私の印象だと、カメラはCanonがベスト、というイメージです。Nikonはもともとカメラのメーカーだからよいものを作っている、という印象。タイでもデザインのよいSonyは人気があり、持っている人が多いです。」
韓国: 「一眼レフの人気が出始めていることもあり、Canon、Nikonが人気です。薄型ではSony。Olympusには人気歌手のBoA、Samsungには人気俳優のチャン・ドンゴンが出演していて、それぞれ注目されています。」
中国: 「中国でもCanon、Sony、Samsungが人気です。Canon、Ricoh、Kodakに対しては専門メーカーというイメージが強いです。唯一の中国ブランドであるaigoは低価格戦略をとっています。」
マカオ: 「マカオでは”カメラ”といえば、”日本”、そして”Nikon”、と連想します。」
ペルー: 「Sonyはアフターサービスのよさで人気があります。また、Canon、Kodak、Panasonicも知名度があります。Samsungはいいものを作っているということで、日本のメーカーと勘違いしている人もいます。」
~デジカメ購入の判断基準~
<「おまけ」が大事!>
司会者: 「皆さんの国ではデジタルカメラを購入する際にどんなことを重視していますか? デザインとか、価格とか、機能とか…また、どんな情報を参考にするのか、教えてください。」
韓国: 「確認しやすいよう、画面の大きさや、画素数の多さが重要なポイントになります。また女性だと、デザインや重さが大事になってきますね。値段と機能のバランスも考えます。」
台湾: 「ブランドは大事です。あと、”おまけ”がとても重要!台湾ではデジカメを買うと、革製カメラケースやメモリーカードなどがおまけでついてくることがあります。あるとないとでは購入意欲がぜんぜん違いますよ。通常販売店がおまけをつけるのですが、カメラメーカーがつけていると断然購入意欲が高まります。」
タイ: 「タイでも同じく、おまけでSDカードが無料でついてきたりします。台湾同様、販売店でなくメーカーからのおまけだともっとうれしくなります。」
中国: 「基本的には外国の有名ブランドから選びます。デジカメを買った人にはまず『画素数はいくつですか?』と尋ねて、その性能を確かめます。次に決め手になるのは値段ですね」
ペルー: 「メーカーや、保証、アフターサービス、そして値段などが基準になります。品質がよいというだけではなかなか売れません。また、メガピクセル神話が根強く、画素数が多ければ多いほどいい写真が撮れる、という考えを多くの人が持っています。」
<情報入手経路は?>
台湾: 「ネットで買う人はインターネットのクチコミサイトを参考にします。日本語ができる人もいるので、事情通の人は価格.comなど日本のサイトを参照して値段を比較することもあります。」
タイ: 「若い人はインターネットで調べます。ただしネットユーザーはまだ15%未満なので、親世代はクチコミや若い人からの情報収集がもっぱら。デジカメの買い方に関する書籍があってそれを参照する人もいます。」
韓国: 「韓国はネット社会なので、事前に必ずウェブで下調べをしてから、実際に店頭に足を運んでチェックします。その後、ネットか家電店で購入する、ということが多いです。」
中国: 「販売店の店員から聞く情報を参考にして検討します。インターネットは情報が多すぎて何を信じていいか分からないので…。」
ペルー: 「ネットの普及が十分でないため、情報は販売代理店が出している新聞広告などに限られます。通信販売のサイトはまだ少ないですね。」
~そのほかのデジタルカメラのトピック~
<写真をめぐる価値観>
司会: 「その他にそれぞれの国で話題はありますか」
中国: 「中国では男女に関わらず、無断で写真を撮られることを嫌う傾向にあります。『写真を撮られるのは恥ずかしい』という意識がまだあります。あと、知らない人にレンズを向けられると、『何かよからぬ目的があるのでは?!』と感じてしまうなど、写真に対する感覚がちょっと保守的かもしれません」
マカオ: 「マカオでは昔から寝ている人の写真を撮ると、『魂がとられる』と信じられているので、寝ている人の写真を撮ることはありません。だから、たとえかわいい赤ちゃんでも寝ているときはカメラで撮ったりしません。最近日本のCMで寝ている赤ちゃんの写真を撮っているものがありますが、マカオではあまり考えられないですね。」
ペルー: 「ペルーなどラテンアメリカでは”女の子の15歳の誕生日”(日本でいう成人式)を盛大にお祝いするためカメラは必須になります。このタイミングでカメラを新規購入する人も多いと思います。」
<海賊品>
マカオ: 「あと、マカオでは隣接する珠海(経済特区)で簡単に入手できる海賊品を面白半分に買う人がいます。有名なブランド名”Canon”, ”Panasonic”と本体に書いてあるのですが、『何かが違う』という品です。お金のある人は海賊品を持っていることがバレると恥ずかしいので買いませんが、若い人は購入したりしているようです。」
中国: 「中国でも、”山寨 (さんさい)”と呼ばれるノンブランドのデジタルカメラは多く出回っています。有名ブランドの商品をコピーして、ほぼ同じ性能のカメラを正規商品の5分の1、10分の1くらいの値段で販売(200元-300元)しています。やはり低所得層や初心者が買ったり、または使い捨ての用途で買われているようです。」
<デジタル一眼レフ>
司会者: 「最近日本ではデジタル一眼レフカメラの購入者が増えています。買いやすくなったこともあるのでしょうが、個人の写真へのこだわりが強くなってきたともいえそうです。みなさんの国ではどうですか」
ペルー: 「一眼レフカメラの普及はまだまだこれから。所有しているのは、カメラマンや新聞・雑誌の報道記者などのみです。」
韓国: 「韓国でも日本と同様に最近デジタル一眼の人気が高まっています。プロっぽく、もっといい写真を撮りたい、という趣味を持つ人や、赤ちゃんがいる30代の会社員などが購入しているようです。」
司会者: 「みなさん今日はどうもありがとうございました。」
歩みを同じくしてきたインターネットとデジタルカメラの普及。デジタルカメラの恩恵を受けて、今後はますます多くの国でブログや交流サイトを通じて、写真や動画が生き生きとした情報を発信し、離れた場所同士の交流が勢いを増すはずです。
一方で、写真に関する感覚の違いも今回のディスカッションで浮き彫りになりました。日本にはデジタルカメラメーカーがたくさんありますが、広告を作成する際にはちょっとした気遣いが必要かもしれません。
※写真は本人の了解を得て掲載しています。
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国際調査グループ 井上弘喜



