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ヨーロッパの国々の食生活と健康意識

2009.05.27

20090527_01.jpg 日経リサーチでは、世界各地の文化や流行、社会事情などを収集するため海外からの留学生(コミュニケーション・アンバサダー、Communication Ambassador、CA)を集めて、様々なテーマで現地事情のディスカッションやプレゼンテーションを行っています。今回は「ヨーロッパの国々の食生活と健康意識」と題して、イギリス、ラトビア、フランス、ロシア出身のみなさんが食事と健康意識について各国の事情を紹介してくれました。  
 

 
 
~どんなものを食べていますか?~
<朝食はパン>
司会者: 「本日は皆さんの国の食文化と健康意識に関してディスカッションを行います。ではまず、みなさんの国の一般的な食事について、朝ご飯など例を交えて紹介してください。」
 
20090527_02.jpg イギリス(クローディアさん:以下「イギリス」と表記。他同様): 「朝食を抜く人もいますが、イギリスでは主にパンとシリアルを食べます。最近ではシリアルバーを食べることもありますね。また、自分で料理をせずに便利なバーガーキング、マクドナルド、KFCなどのほかケバブ(注)をファーストフードとして利用する人も増えています。ランチタイムには、お弁当ではなく、カフェでサンドイッチやサラダなどを食べたりテイクアウトしたりする人が多いです。」
注:ケバブ・・・塊の肉を回転させながら焼いてそぎ落としたものを野菜などと一緒にサンドイッチにしたもの。トルコ、中近東でよく食べられる。 
 
ラトビア(マーティンさん:以下「ラトビア」): 「朝食は2番目に重要な食事です。3食のうち、ランチがメインの食事で、ディナーは軽く食べることが多いです。朝はきゅうりやトマト、チーズなどを挟んだサンドイッチを食べています。7時からお店が開いているので、朝食用のサンドイッチなどを買いにいくこともあります。カフェではなく、自宅でラジオを聴きながら食べることが多いですね。」 
 
フランス(サンドリーヌさん:以下「フランス」): 「朝食は基本的には自宅でとります。コーヒー、紅茶、やミルク、チョコレートドリンクやオレンジジュースと一緒にブリオッシュなどのパンを食べますが、シリアルやフルーツ、ヨーグルトなどを食べる人もいます。クロワッサンやパン・オ・ショコラのようなちょっとリッチなパンは週末に食べることが多いです。病気の防止や疲れにくくなるために、朝食を大事にすべきだという認識が広まっていて、学校や大学で“朝食を食べよう”というキャンペーンをやっています。フランスでも朝はテレビではなくてラジオを聴きながら食事をする人が多いです。」 
 
イギリス: 「イギリスでも朝はラジオを聴くのが主流だと思います。テレビを見るのは夜が多いです。」
 
ロシア(パベルさん:以下「ロシア」): 「朝の飲み物は紅茶かコーヒーです。バター、チーズ、ハム、ジャムなどを挟んだサンドイッチなどを食べています。ポリッジ(ボイルしたシリアル、日本ではオートミールと呼んでいる。ミルク、フルーツなど一緒に食べる)を食べる人も多いですね。人によりますがあとはカッテージチーズ、サワークリーム、ヨーグルトなども食べます。朝食は簡単なものだけれども、基本的には母親が作ってくれていました。」
 
司会者: 「朝食は大事だと思いますか?」
 
ラトビア: 「パワーが出ないので、朝食は大事。食べないと仕事ができません。」
 
フランス: 「食べないと疲れて集中力が途切れてしまうので、健康的な朝食は大事だと思います。」
 
ロシア: 「日本の牛乳や乳製品は質がいいので飲んでいます、たとえば“飲むヨーグルト”とか。」


~食事と健康~
<原料に気を使う人が増加中>
司会者: 「健康と食事は大変密接な関係があると思いますが、皆さんの国の健康意識について教えてください。」 

イギリス: 「カロリーを気にする人が増加していて、無脂肪の食品やダイエットコークなどが売れています。でもおいしくないので、好きで食べている人はいないのではないかな。それと、果物や野菜が健康的な食品ということで注目されていて、ファーストフードチェーンも最近はサラダメニューに力を入れているようです。あとは、レストランはメニューに“100%ミート”などと表示するようになっています。食物原料偽装などのスキャンダルがあり、食べ物に使われる原材料が信頼できるものかどうか心配する人が増えているためです。不飽和脂肪酸などの“Good Fats(良い脂肪)”と、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸などの“Bad Fats(悪い脂肪)”の違いを気にするようになりました。サプリメントでいえば、オメガ3やビタミンなどが人気です。」

<サプリメントよりも食事から栄養を!>
ラトビア: 「最近オーガニックフードに関心が寄せられています。日本でも輸入食品の安全性について問題になりましたが、ラトビアでも同様にドイツやフランスから輸入した食品に農薬が使われていたのです。そこで、土曜日など週末に開催される市場で農家から直接買うとフレッシュで化学肥料を使っていない食品が食べられる、と買い求める人が増えています。でも実際は国内の農家も農薬を使っていると思うのですが…。サプリメントについていうと、ラトビアではあまり一般的ではありません。ビタミンやミネラルなどの栄養は、食品から摂ります。健康に良いといわれている食品には、造血作用があるビートルート(ビーツ)、ケフィアなどがあります。輸送技術が発達したので、南の国からフルーツがたくさん入ってきて、ラトビア人の食生活も変化してきています。それと、日本同様、女性のダイエット志向はあります。」 

フランス: 「ジャンクフードが好きな人も多いのですが、最近カロリー計算や脂肪、糖分・塩分への関心が高くなってきています。その影響で、フライドポテトにも塩がかかっていない場合があるそうです。栄養素としては、魚や油などに含まれるオメガ3が有名です。オメガ3入りをうたったマーガリンや飲料も商品化されています。錠剤などで栄養補給をする人はほとんどいません。サプリを摂るのは、妊娠した人や病気の人などです。政府が『食べたら動け』キャンペーンを行っており、テレビやウェブの食べ物の広告に強制的に入れなければならないスローガンなどがあります。結構強制力があり、たとえばファーストフードなどの広告にもこのスローガンが入っています。一日最低5種類はフルーツや野菜を食べよう、という活動もあります。」
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ロシア: 「ロシアでも、健康のために食事に気を使っている人が増えています。輸入食品に化学薬品が多く使われていたり、品質管理が不十分だったりといったことが問題化したので、原材料は自然由来のものか、オーガニックか、原産地はどこか、などに関心を寄せています。
実際に田舎で農民が開いている市場で買う野菜がもっとも健康によいとされています。というのも、ロシアの農家の人々は肥料を買うお金がないので、そこで売られている農産物は正真正銘のオーガニックのはず、と考えるからです。また、ロシアでもサプリメントを利用するのは病気の人くらいで、まだまだ一般的ではありません。日本ではスーパーやコンビニにサプリメントを売っているようですが、ロシアでは薬局に行かないと手に入らないので、まだ“薬”という認識ですね。」 
 
司会者: 「生産者の顔が見える食品、ということでいうと、日本のスーパーなどでも農家の人の顔写真をつけて売っている野菜などがありますね。ところで、サプリメントがあまり浸透していない国が多いようですがイギリスではどうですか。」 
 
イギリス: 「イギリスではサプリを摂るのは一般的です。」
 
フランス: 「フランスでは、医師はオレンジジュースなどの飲み物や食べ物から栄養素を摂るようをすすめることが多いです。」

~お酒と食事~
<季節やタイミングに合わせて>
司会者: 「それでは次に、みなさんの国でのお酒について、どんな種類が人気か、またお酒の飲み方と食べ物との組み合わせなどの習慣について紹介してもらいましょう。」
 
20090527_04.jpg イギリス: 「日本で居酒屋に行くような感覚でパブやクラブに行ってお酒を飲むのですが、種類でいえばビールやジンが人気。クラブだと“テキーラショット”をよく飲みます。ワインは洗練された飲み物、というイメージがあり、フォーマルな席で飲まれる傾向にあると思います。飲みに行くときは、おつまみはスナック程度で、日本の居酒屋のようにお酒と一緒にご飯を食べる習慣はあまりありません。ワインは他のアルコール類と比べると、食べ物と合わせることが多いですね。お酒そのものを楽しむというより、ソーシャル・ドリンキングといって、人間関係の維持や構築のために飲みに行くこともあるので、お酒にはそうした機能もあります。それと、イギリスでは若年層の飲酒が社会問題化しています。」 
 
ラトビア: 「ラトビアでは、ビールを飲む人がここのところ急に増えています。お祭りなどでは、ビールをチーズと合わせて食べます。その他におつまみでよく見るのは、スパイシーな味付けのグリルしたチキン、ソーセージ、ポテトチップス、生サーモン、缶詰入りの魚、エビなどですね。お酒に関する規制は結構厳しく、購入できるのは18歳以上で、22時から朝8時までは酒類の販売が禁止されています。路上でお酒の栓を抜くのは禁止されていて、もし抜栓されている場合は、アルコール表示のパッケージ部分を隠す必要があります。」
 
フランス: 「食前酒としてウィスキー、ウォッカ、マリブなどのお酒を、前菜をつまみながら飲み、食事中はワインを飲むことが多いです。ビールは夏に食前酒としても飲むし、ベルギーに近いフランス北部では特にビールはよく飲まれているようです。外食は高くつくので、みんなでアルコールやおつまみを持ち寄って家でホームパーティーをします。食後のデザートと一緒に、リキュールやブランデーを飲むこともあります。」
 
ロシア: 「ロシアでは基本的にはウォッカのような強いお酒やウォッカベースのカクテルが好んで飲まれています。皆、そういうアルコール度数の高いお酒を通常の食事をしながら飲んでいます。夏にはポテトチップスやナッツなどのスナックと合わせてビールもよく飲みます。ソフトドリンクのように昼間から飲んでいる人もいます。ロシアではワインが少なく、品質もあまり高くありません。いいワインを手に入れるのは特別なお店などに限られてしまうため、他のヨーロッパの国に比べると入手しにくいという事情があります。そのため、ワインは中流階級以上の人々が飲むもの、という感じです。」

~故郷の味と日本の味~
<意外にも日本食が人気!>
司会者: 「それでは最後に、留学中のみなさんに懐かしい故郷の味や、日本の好きな食べ物、嫌いな食べ物があれば発表してもらいましょう。」
 
イギリス: 「イギリスでは、インド系料理や中華料理のテイクアウトが人気です。ロンドンにあるチェーン店の“wagamama(ワガママ)”は、西洋風にちょっとアレンジした日本食レストランで、店舗をいくつか展開しています。寿司はすでにかなり一般的になりつつありますが、一方で納豆はその臭いなどでイメージが悪いです。日本のカレーライスやケーキはとってもおいしいので大好きです。」
 
ラトビア: 「故郷の味で懐かしいのはミルクの味のするチョコレートと黒パン。あと健康にはよくないかもしれませんが、ガス入りのミネラルウォーターが好きでよく飲んでいました。日本ではなかなか売っていないですね。日本の寿司は魚介が新鮮で大好きです。特に炙ったネタが好みで、サーモン、マグロなどのネタが気に入っています。納豆は僕も食べられません。」
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フランス: 「フランス人なのでやっぱり故郷のチーズとパン。和食で言うと、色々な食材が入っているお好み焼きが好きですね。それと、おにぎりも気に入っています。とくにツナマヨ味。コンビニで買っています。友達が“納豆はカマンベールと同じ味”と言っていましたが、まだ挑戦していません。日本にいる間に一度は食べてみようかな。」 
 
ロシア: 「好きな和食は、海鮮、てんぷら、のり、ごはん、みそ、麺類、お好み焼きなどです。あとはアイスクリームも日本のものは美味しいです。日本の乳製品は品質が高いと思います。緑茶も品質の高い日本のものが大好きになり、今ではよく飲むようになりました。あと、冬はおにぎりを温めて食べています。懐かしいのはロシアの黒パン。日本のパンはコットンみたいに柔らかく、あまりおいしいと感じません。シーフードはロシアでは値段が非常に高いのですが、日本では安くてよいものが食べられるのがいいですね。それと、私の場合納豆は苦手ではないのですが、食べるときに必ずまわりを汚してしまうので、自宅で食べるようにしています。」
 
司会者: 「お好み焼きが人気なのは意外でしたね。皆さんがいろいろなかたちで日本の食に親しんでいるのがよく分かりました。今日はどうもありがとうございました。」

 それぞれの地域の文化や気候にあった食文化が発達しており、大変興味深いディスカッションになりました。
 食品の安全性やオーガニックフードへの関心の高まりは日本と共通していますが、その一方で、日本ではまだそれほど知られていない“オメガ3”がイギリスやフランスでは注目を集めていること、逆に日本で市場が拡大しているサプリメントがほとんど市民権を得ていない国があるなど、「健康的な食品」のイメージも少しずつ異なるようです。
 日本食はそのヘルシーさで海外でも人気を集めているようですが、「安心」「安全」という部分でも優位性をアピールできれば、さらに広がりが期待できそうです。各国の健康意識や食文化をきめ細やかに把握することが成功の鍵といえるかもしれません。 
 
※写真は本人の了解を得て掲載しています。
 

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国際調査グループ 井上弘喜