喫煙者はコンビニへ向かい続けるのか?
2008.08.28
一般的に市場は、メーカー・サプライヤーが投入した商品・サービスによって変化が起こるものです。他方で既存商品・サービスの市場や流通チャネル構造が、新たな施策や制度の導入により劇変する場合があります。今回は、たばこ自販機の成人識別用ICカード「taspo(タスポ)」を例にとり、制度の導入による流通チャネルの変化を見ていくことにしましょう。
(社)日本たばこ協会をはじめとする各関係団体は、2008年3月より未成年者のたばこ購入防止を目的として、「taspo」の稼働を開始しました(*)。「taspo」普及の一方で、カードが無い喫煙者は自販機で「たばこ」を購入できないため、開店時間に左右されずに手軽に入手できるコンビニでの購入機会を増やしています。
日本フランチャイズチェーン協会が発表した2008年7月度の「コンビニエンスストア統計調査月報」によると、「たばこ」を含む非食品の売上高前年同月比(全店ベース)は33.0%の大幅増となりました。ここ1年間の非食品全店ベースの売上高前年同月比と商品構成比を見ても、1ケタ台だった非食品の伸び率は「taspo」の本格稼働が始まった2008年5月から急激に増加しています。また、非食品の商品構成比は、20%台で推移していましたが、「taspo」稼働後には、30%を超えるようになりました。同協会でも「たばこの売り上げ増」に言及しており、コンビニ業界は「たばこ特需」と言える状況にあります。
ブロガーは「taspo」の稼働についてどのような話題を書いているのでしょうか。blogVizセンサーで見ると、話題に火がついたときの規模を表す「露出量」と話題の広がり具合を示す「伝播量」がともに増加しており、関東・沖縄でのtaspo稼働開始日に話題が集中していることがわかります(図1)。両日の語彙ランキング(ブログとそのコメントについて、単語が含まれる文章をカウント)の上位には、「今日」「たばこ」「自販機」の他に「コンビニ」がランクインしています。具体的なブログの記事では、「コンビニに行くしかない」とか、「コンビニでまとめ買い」「コンビニでたばこを買っている人が目立った」など、「taspo」を持たない喫煙者がコンビニに駆け込んでいる様子がうかがえます。
図1 関東・沖縄でのtaspo稼働開始日(7月1日)前後のブログ露出量と伝播量

関東・沖縄での稼働日翌日である7月2日以降の語彙ランキングの上位では、「作る」と「コンビニ」が拮抗しています(図2)。「やはりタスポ作るべき?」などのブログ記事の他に、「taspoを作るのが面倒」「近所のコンビニでカートン買い」など、今後も全く「taspo」を持つ気が無い喫煙者は一定数いるようです。8月以降のコンビニでの売り上げ推移を検証する必要がありますが、「taspo」を持たない購入層が固定化し、棲み分けが定着する模様です。「taspo」の更なる普及を図るには、非保有者が今まで以上にtaspoを作りやすくするなど、関係機関・団体による新たな施策や啓蒙活動が必要となるでしょう。
図2 関東・沖縄での稼働日翌日(7月2日)以降のブログ語彙ランキング(上位5位)
(「taspo」が語られたブログとそのコメントについて、語彙をカウントした表 単位は件数)

(*)2008年3月:パイロットエリア(鹿児島・宮崎)からスタート
2008年5月:第1次稼働エリア(東北・中四国・九州)
2008年6月:第2次稼働エリア(中部・関西)
2008年7月:第3次稼働エリア(関東・沖縄)
デジタル調査グループ 大西裕