"顧客の心に響く"切り札~手書きのメッセージ~

2008.10.02

下町の小さな洋菓子店

 先日、友人が遊びにきたので、谷中に近い商店街沿いの洋菓子店にケーキを買いに出かけました。入口の扉をあけるともうすぐ目の前に6種類ほどのケーキの並ぶショーウインドーという小さい素朴なお店で、ケーキを3個だけ買い求めました。いかにもその辺りを歩いていそうなエプロン姿のお母さんのような人が、時間をかけて丁寧に箱に入れてさらに袋に入れてくれました。「ああ、自由が丘のいつも大混雑のあの店とは随分違うな・・・」正直、ちょっと不安になりました。家に帰って早速食べようと袋から取り出そうとしたところ、水色の小さなカードが入っていて、びっしりと小さな手書きの文字が並んでいました。「う~ん。すごいね、コレ」「ここまでやるとは、初めて」思わず顔はほころんだのは言うまでもありません。間違いなく店主の気持ちは十分伝わってきました。
 店主が戦略的にこのカードを使ったかはどうかはわかりませんが、"顧客の心に響く"切り札となったことは間違いないと思います。しっかりと次に購入してもらいたいケーキまで紹介していましたし。

 この小さな下町の洋菓子店にも私の知る限り5店舗ぐらいはライバルが存在します。真剣に自分の商品と顧客を大切にする気持ちを伝えていかないと、見向きもされなくなってしまう可能性があります。このカードをもらって「また今度新しいケーキが出る頃に出かけてみよう」と思った顧客はきっと私たちだけではないでしょう。

生命保険会社

 そういえば、こんなこともあったのを思い出しました。ある生命保険会社の方を訪問したとき、びっくりするような発言を聞いたのです。「私のお客様は100%私のお客様からのご紹介によるものです。特に自分から新規で法人や個人宅を訪問するようなことは一切しません。」さらに「自分のお勧めする商品で、後悔はさせません」ときっぱりといわれました。これには圧倒されてしまい、返す言葉もなくなってしまいました。
 すると翌日に、なんと手書きのはがきが届きました。「あっ、これだ、きっと」と、すべてを理解できたように思えたのです。出会った人すべてにきっとこの人は手書きのはがきを送っているのだろうと。そしてたった1通のはがきが、一人ひとりの顧客との結び目を作り、人が人を呼んで、人脈が鎖のようにどんどんつながっていくのだと。
 なかなかすぐには真似のできることではありません。ただeメールや携帯電話など便利なコミュニケーションツールがビジネスでも主流となっている今だからこそ、ひと手間かけた手書きのメッセージが顧客の心を掴むのではないでしょうか。
 買い物をして、家に戻って商品を取り出すとき、「これでよかったかな」「もっと他を見たほうが・・・」「何で買っちゃたんだろう」などと迷いや後悔があることもあります。そんな時、「商品はいかがですか?お気づきの点はご連絡ください」という手書きのメッセージをもらったらどうでしょう。「ちゃんと気にかけてくれている。(買ってよかったかもしれない)」と、気の利くアフターフォローがあると救われる顧客もきっと多いのではないでしょうか。

 下町の小さなケーキ屋さんと生命保険会社、業態も規模も全く違いますが、ひと手間かけた「手書きのメッセージ」がとても有効なのは変わりないと思います。

デジタル調査グループ 中谷真由美