問われるこれからの数値目標

2009.06.15

 政府はこのほど、国内の温室効果ガス削減の中期的なターゲットとして「2020年に2005年比15%減(1990年比8%減)」とする数値目標を定めました。当初有力とされていた「14%減」案から1%を積み増し、削減率としてはEUの掲げる「13%」や米国の「14%」を上回る格好となりました。2013年以降の温暖化対策の国際的な枠組みを決める「ポスト京都」の議論で主導的な立場を狙う政府としては、この1%が非常に大きな意味と持つというわけです。

 しかし、この数字が国際的に受け入れられるかどうかは微妙な情勢です。現に中国などは、先進国に対し1990年比で40%超の大幅な削減を求めています。「15%」で、こうした新興国や途上国からの理解を得るのは容易ではありません。

   一方、国内の産業界にとっては厳しい数値目標となりました。4月に政府が公表した6案でも、最も低い数値目標の「2005年比4%減」の支持が大勢。世界でもいち早く省エネ化を進めた国内産業は、他国に比べ温室効果ガス削減の余地が限られています。今後、さらに難易度の高い削減活動を展開することによって、大きなコスト負担を強いられるのは必至です。また、目標達成には一世帯あたり年7万円を超すコスト負担も見込まれており、国民生活への影響も懸念されます。 

 環境目標の議論ではよくその内容がいかに「野心的」であるかどうかが問われます。日本の中期目標は果たしてどうでしょうか。今回、首相はこの数字が「野心的」であることを強調していますが、もっと高い削減目標を期待する環境NGOなどは、そうは受け取ってくれないでしょう。

 とはいえ政府が具体的な数値目標を示すことは、国内の温暖化対策にとっては重要なステップといえます。数字の「一人歩き」は良くありませんが、それでも、数値目標には官民の取り組みを加速させる効果が期待できます。企業でも同じことがいえるのではないでしょうか。数値目標は、社内の活動ターゲットを明確化させるだけでなく、社会に対してより説得力のあるコミットメントともなります。 

 日経リサーチが主要企業約200社の環境報告書などを調査したところ、6年以上先を目標年とした温暖化対策目標を掲げる企業は21.1%(図1)ありましたが、具体的な温室効果ガスの数値目標(原単位はのぞく)を明示する企業は12.1%(同)止まり。

 今回の政府目標が今後、企業の目標設定のあり方にどんな影響を与えるか注目です。
環境+(プラス)では個別の企業の動向分析だけでなく、情勢もウオッチしています。
 近々、最新結果をご報告します。

図1

調査は企業の環境経営・CSR経営支援サービス「環境+(プラス)」の一環として実施。
調査対象:日経平均株価算定銘柄企業のうち、2008年末までに2008年度版環境報告書(CSRレポートなど含む)を発行した企業199社
調査時期:2009年1月

商品開発・営業グループ 大久保 昌彦