ユニクロがダイソーに負けたワケ ストアブランド調査から②
2011.05.27
今回は「
ストアブランド戦略サーベイ」の「場力(ばぢから)PQ(Perception Quotient=知覚指数)」総合ランキングを詳しくみていこう。まずは上位20位までを場力PQのスコアと併せて紹介する。
場力PQは、各ストアブランドの店舗・施設に対する「その店に行ってみたいか(来店意向)」「その店で過ごす時間が特別だと思うか(時間消費プレ
ミアム)」「その店で買い物したいか(購入・利用意向)」「その店を他人に勧めたいか(推奨意向)」という4項目の評価で構成される指標だが、単純に点数
(%)を足し合わせたのでなく、各項目の比重が均等になるよう、4項目それぞれの点数に重みづけをして、総合的に偏差値化した。店舗・施設の総合力を公平
に評価でき、スコアの平均は500となっている。
軒並み大幅ダウンした生花店
まず、今回の調査の前身である2009年の「ストア&サービス顧客接点評価調査」の総合ランキングベストテン(前回掲載)と比べてみよう。所属業種が調査
対象から外れたアマゾンと帝国ホテルを除く8ブランドが今回も調査対象となったが、スターバックスコーヒー、無印良品、東急ハンズ、ユニクロ、イオンの5
ブランドは引き続きベストテンに残り、ロフトとニトリも20位以内に踏ん張った。8ブランド中7ブランドが上位に名を連ねた中、唯一大きく順位を下げたの
が、前調査で3位だった青山フラワーマーケット。今回は346ブランド中277位だった。どうしてここまで順位が下がってしまったのか。
理由は大きく2つ考えられる。1つは調査コンセプトが大幅に変わったこと。前調査は「商品・サービス」「店舗・施設・ホームページ」「接客・アフターサー
ビス」「コミュニケーション」という、消費者と各ブランドとの直接の接点である4分野に対する、実際に店舗に行った消費者による評価が中心だったが、今回
は行ったことがある人もない人も含めて、消費者の「意向」に焦点を当てて、店舗・施設の魅力度を探る調査だったため、規模や知名度で劣る青山フラワーマー
ケットには不利に働いたようだ。前調査で青山フラワーマーケットは商品・サービスとコミュニケーションで1位だったが、こうした"得点源"の質問項目がな
くなったことも大きく影響したと思われる。
もう1つの理由は花需要の低迷だ。リーマン・ショックが起きた2008年秋以降の景気悪化に伴う法人需要の落ち込みに加え、所得減による節約志向で家計の
花への支出額が年々減少するなど消費者の花離れも進んでいる。総務省の家計調査によると、全国の2人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)の2010年の1世
帯当たりの支出額は1万46円と、ピークだった1997年より3,084円も減った。こうした花業界の「構造不況」が調査結果に反映された面もありそう
だ。生花店では前調査、今回調査とも同じ3ブランドが調査対象になったが、青山フラワーマーケットだけでなく、前調査で24位の日比谷花壇が今回248
位、同36位の第一園芸が同307位と、いずれも大幅にダウンした。
モスバーガーが首位!飲食店は大躍進
逆に調査コンセプトの変更がプラスに働いたのは、大都市圏を中心に多店舗を展開し、規模や知名度で勝る、普段よく利用するような身近なストアブランド群
だった。中でも大躍進したのが飲食業、特にファストフードとカフェだ。前調査ではかろうじてスタバがベストテンのしんがりに滑り込んだだけで、20位まで
見ても合計3ブランドだったが、今回は1位のモスバーガー以下、スターバックス、ミスタードーナツ、マクドナルドとベストテンに4ブランド、20位内では
合計7ブランドを数える。ちなみに、マクドナルドは前調査で12位、ミスタードーナツは39位だったが、モスバーガーは50位以内にも入らなかった。
場力PQを構成する4要素のランキングを見ると、モスバーガーは「来店意向」と「推奨意向」でトップを獲得、「購入・利用意向」でも3位だった。一方、ラ
イバルのマクドナルドは来店意向が5位、購入・利用意向が4位、推奨意向が10位と、いずれもモスバーガーに及ばず、総合ランキングは8位止まり。価格設
定は高めだが、手作り感や上質な素材にこだわり、おいしさと安全性を強調するモスの戦略は、「食べに行きたい」「他人に勧めたい」という消費者の「意向」
を刺激した格好だ。モスバーガーはその店で過ごす時間を特別だと思うか、という「時間消費プレミアム」の項目でも7位に入った。すべての要素でまんべんな
く高い支持を集め、4項目ともベストテン入りという安定した評価を得たのはモスバーガーと総合ランキング2位のスターバックス、同3位タイの東急ハンズの
3ブランドだけだ。
明暗分けた「時間消費プレミアム」
実は、モスバーガーとマクドナルドで一番大きな差がついたのが、この「時間消費プレミアム」だった。ランキング上位にティファニーやカルティエ、ブルガ
リ、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドが並ぶ中、モスバーガーはエルメスを抑えて30%で堂々7位。対するマクドナルドは18.4%で40位台にとどまっ
た。総合ランキング2位のスタバは居心地の良さ、快適さが評価され、この項目で首位になったのが大きかった。時間消費は平均スコアが低く、首位のスター
バックスでさえスコアは37.1%。差がつきにくい項目だけに、偏差値化した場合、ちょっとの差が大きな違いになって跳ね返ってくる。
時間消費プレミアムは小売ブランドの順位にも影響を及ぼした。無印良品、ザ・ダイソー、ユニクロという日常使いする3ブランドの構成要素ランキングを見てみよう。
ユニクロは3項目で無印良品を、2項目でダイソーを上回った。特に購入・利用意向の項目は良い品が安く買えるとあって、全体で1位に輝いた。にもか
かわらず、総合ランキングは無印良品の3位タイ、ダイソーの5位に対し、ユニクロは6位にとどまった。ここで大きく響いたのが時間消費プレミアムのスコ
ア。無印良品が23%、ダイソーは20%だったが、ユニクロは18.9%。ほんのわずかの差のようだが、これが明暗を分けた。もっとも、場力PQはあくま
で各ブランドの現在の立ち位置を確認するための指標であり、競合ブランドと比べて自らのブランドの評価はどうなのか、振り返ってみるための材料として活用
してもらえればいいのであって、結果を見て一喜一憂する必要はない。
ただ、この結果だけでは、消費者が無印良品やダイソーのどこをユニクロより評価していたのか、判然としない。そこで次回は消費者が各ブランドの店舗や施設のどのような点を評価しているのか、各業種の競合ブランドについて、具体的に見ていくことにしよう。
<参考リンク>
ストアブランド戦略サーベイ
(ま)