震災と原発事故で変わった価値  ブランド戦略㊤

2011.12.20

 日経リサーチは様々なブランド調査を手がけているが、その代表が「ブランド戦略サーベイ」だ。企業ブランドがコンシューマ(消費者)とビジネスパーソンという2つの視点からどう評価されているかを多角的に分析し、企業のブランド管理・ブランド戦略に役立てていただくのが狙いなので、広く消費者全般を対象にした調査と、それとは別個にビジネスパーソンだけを対象にした調査と、それぞれ独自に実施している。サーベイは年1回、インターネットを通じて行っており、調査結果の一部は「企業ブランド調査」として例年、日本経済新聞をはじめとする数多くのメディアに取り上げられている。

 

最新版「企業ブランド調査」の順位は?

  9回目となる2011年版「ブランド戦略サーベイ」は東日本大震災後の今年6月に実施した。評価対象企業は各業種を代表する560社(外資系を含む)。調査回答者は消費者が日経リサーチのアクセスパネルに登録した全国の16歳以上の男女3万793人、ビジネスは同じく全国のビジネスパーソン男女1万2451人で、消費者は1ブランド当たり約550人、ビジネスは同約220人が回答した。結果は9月8日付の日本経済新聞朝刊や日経産業新聞で、今年も「企業ブランド調査」として紹介されたから、目にした方も多いと思うが、消費者とビジネスパーソンの評価を合わせた企業ブランドの総合ランキング上位20位までは次のようになった。カッコ内の数字は2010年の順位・スコアである。

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   総合首位となったのは2年連続でグーグル。昨年は消費者が10位、ビジネスパーソンが2位だったが、双方で順位を上げた。スコアは落としたが、2位には27点差をつけた。グーグル製OSを搭載したスマートフォンの普及が進み、独自性などへの評価が高まった。

  一昨年まで5年連続総合首位だったが、昨年、わずか1ポイント差で2位に転落した日本マイクロソフトは今回さらに3位に後退した。グーグルと比べても消費者の評価が低くうえ、2位に粘ったビジネスパーソンでも大きくスコアを落としたことが、総合スコアに響いた。

  代わって、パナソニックが2位に躍進。スコアも昨年よりアップした。このほか電機大手ではシャープや東芝など、順位を上げた企業が目立った。原発事故に端を発した電力危機に伴う節電ムードの高まりで、省エネ家電を扱っていることが支持につながったようだ。

  このように今回の調査では、震災や原発事故の影響がランキングに現れた。8位に上昇したオリエンタルランドも、震災時に発揮した東京ディズニーリゾートの入園者に対する危機管理能力が、特にビジネスパーソンの間で共感を呼んだようで、評価が高まった。

  ただ、同じ電機メーカーでも、対照的だったのはソニーで、4月に発覚した個人情報の大量流出問題が響いたか、スコアが大幅にダウンし、順位も5位に下げた。

 

■「知覚指数(PQ)」再び登場!

  「ブランド戦略サーベイ」は14の質問で構成されており、その測定結果からいくつかの指標を算出しているが、「企業ブランド調査」で使用したのは、その中でもブランド力を表す代表的指標の「企業ブランド知覚指数(PQ)」だ。「PQ」は以前、このコラムで「ストアブランド」をご紹介した際にも登場したが、「知覚指数」を意味する「Perception Quotient」の略称である。人々が企業ブランドのどのような点に引きつけられるのか、人々の心の中に蓄積した企業ブランドに感じる魅力を、調査データから可視化し、企業ブランドの総合的パワー・価値を明らかにする日経リサーチが独自に開発した指標である。

  PQのスコアは14の質問の中から、消費者・ビジネスパーソン各5項目の回答を、統計的な手法で統合して算出した。「消費者PQ」を構成する評価項目は「自分必要度」、「独自性」、「愛着度」、「プレミアム(ブランドプレミアム・価格プレミアム)」「推奨意向」の5つ。「プレミアム」とは値段が高くてもその企業の商品・サービスを購入・利用したいかどうか。一方、「ビジネスパーソンPQ」は「独自性」、「プレミアム」、「推奨意向」の3つに加え、「ビジネス有用度」と「企業魅力度」の2つを聞いた。「企業魅力度」とはその企業で働きたいと思うかを尋ねた。質問はいずれも5段階評価で回答する形式になっている。

 各ブランドの消費者PQとビジネスパーソンPQの順位が先ほどの表のそれぞれの順位で、ここからさらに両方のPQを統合し、算出したのが総合的な企業ブランド力を示す指標「総合PQ」である。この総合PQのスコアを順位付けしたものが「企業ブランド調査」の総合ランキングで、PQのスコアはいずれも500を平均とした偏差値になっている。スコアは偏差値なので、消費者PQとビジネスPQを統合して総合PQを算出すると言っても、単純に足して2で割って求められるわけではないが、ほぼそれに近い手法だと思ってもらって差し支えない。

 

■消費者ブランドとビジネスブランド

  先ほどのランキング表を見ると、消費者の上位ブランドとビジネスパーソンの上位ブランドがかなり異なっていることに気付く。ビジネスの上位10ブランドがほぼそのまま総合ランキングでも上位10位以内に入っているのに対し、消費者の上位10ブランドは総合ランキングではトップテンの手前、20位までの間に集中している。今回の調査ではビジネスの上位ブランドのスコアが消費者の上位ブランドに比べて全体的に高く、またそうしたビジネス上位ブランドの多くが消費者ランキングでも比較的健闘したため、ビジネスと消費者両方のスコアを統合した総合ランキングでは、ビジネスの上位ブランドが消費者の上位ブランドを順位的に上回る傾向が出たと考えられる。

  例えば、ビジネスランキングで799点を稼ぎ1位を獲得したグーグルは、消費者ランキングでも699点を上げて9位に入り、見事総合ランキングでも1位に輝いた。一方、消費者ランキングの1位はキユーピーだったが、スコアは748点にとどまり、ビジネスランキングでも613点の63位と伸び悩み、総合トップテン入りはならなかった。

  また、総合ランキングでは、ビジネスランキングで790点を記録して2位に入りながら、消費者ランキングでは646点で46位だった日本マイクロソフトを抑え、ビジネスランキングが730点の6位、消費者ランキングが716点の4位とバランスよく高評価を集めたパナソニックが2位になった。やはり総合ランキングで上位に入るには、グーグルやパナソニックのように、消費者・ビジネスの両方で高スコアを上げること、つまり消費者にとってもビジネスパーソンにとっても身近なブランドになることが必要なのだ。

  総合ランキングの上位に入ること自体が最終目的ではないが、消費者とビジネスパーソン、両方の目を常に意識し、前年より1ポイントでもスコアを上げるよう行動することが、結果的にはブランド価値の向上につながると言えよう。