日本式ホスピタリティ輸入の始まり!?
2009.06.05
海外で暮らしていると、日本の優れている点や劣っている点をしばしば実感します。その中で優れている点の一つは接客サービスの素晴らしさではないでしょうか。高級ホテルはもちろん、コンビニエンスストアやレンタルビデオ店に至るまで、日本では満足度の高い、心地良い接客サービスを受けられる機会が多いのに対し、東南アジアではそれを期待することさえ難しいのが現状です。
先日マレーシア・ジョホールバルにあるジャスコに買い出しに出掛けてきました。ジョホールバルはシンガポールとの国境に接するマレーシア南端の街です。シンガポール市街地から電車やバスなどで国境に向かい、1日約6万台の交通量がある橋を渡ると、ジョホールバルに到着します。ジャスコは当時首相のマハティール氏の要請を受けて84年に進出、以来25年間でマレーシア全土に21店舗の店舗網を築き、そのうち17店舗を大型ショッピングセンターとして展開しています。ジョホールバルには4店舗あり、今回は06年開業の3階建て、ジャスコを核テナントとしつつ、Espritなどのアパレルやスターバックスコーヒー、シネマコンプレックスなどが入居する巨大なショッピングセンターであるTebrau Cityに行ってきました。
買い出しのお目当ては日本でおなじみのプライベートブランド"トップバリュ"。マレーシアでもうどん・そばの麺類や乾物といった食材から清掃用品まで、日本の様々な商品が入手できます。2万人以上の日本人が住むシンガポールでは日本の食材が充実しているものの、価格は日本のおよそ2倍から2.5倍。安くて品質の高い日本の小売業のプライベートブランドを求めてシンガポールから国境を越える日本人が多くおり、現地旅行代理店主催で「ジャスコ日帰り1dayツアー」も企画されています。
一通りの買い物を終え、目に入ったものはミステリーショッピングの調査員募集の告知。調査員が一般の買い物客を装い入店し、挨拶の有無など店員の接客レベルや商品の陳列状況、清掃状況などを顧客視点で評価する調査です。通常は専門に教育された調査員が店舗に赴き評価するケースが多いのですが、ここでは一般の買い物客から調査員を募集し、調査を実施しています。
当日、レジ担当が前のお客様のクレジットカード処理に手間取り、やや待ち時間が発生したにもかかわらず、特にお詫びの言葉がありませんでした。「大変お待たせいたしました。」などの一言があれば、大きく印象が変わります。東南アジアのサービス基準に慣れているので、特に不満を感じたわけではありませんでしたが、仮により良い接客サービスが実現できれば、それだけで他店との大きな差別化になるでしょう。ミステリーショッピングのプログラムは年末まで継続されるので、これからの改善に期待したいところです。
イオンのマレーシア子会社の08年度売上は約100億円で前年比19%増、利益は10%増と着実に成長を続けています。世界的な不況にもかかわらず、新興国の消費は堅調と言われています。イオンとイトーヨーカ堂合わせても日本の小売業の進出国は中国(香港含む)、マレーシア、タイなどアジアの一部に留まります。今後日本式の出店形態や品揃えに加えて、日本式のホスピタリティ導入が進めば、より日本の小売業の活躍の場が広がるのではないでしょうか。それに伴って、消費者の要求が厳しい日本市場で鍛えられた商品がアジアの店頭に並ぶことも期待されます。
5月下旬には成長市場として注目の集まるインドへのウォルマート進出のニュースがあり、独メトロ、英テスコに続く出店となりました。インドでは地元の小売業者保護のため、外資による国内小売事業への過半数出資は認められていません。このため地場企業とフランチャイズ契約を交わす小売りではなく、卸売業として進出するなどの方法で欧米小売業はインド市場への橋頭堡を築きつつあります。インドでは日本の小売業は、欧米小売業と比較し進出が遅れているのが現状です。個人的には、単品管理されホスピタリティ溢れる日本の小売業にインドを含む広範囲のアジアでより存在感を発揮してもらいたいと思っています。
そんなことを考えつつ、シンガポールへの帰途に立ち寄ったマレーシアの出国審査場では、長い列にもかかわらず出国審査官はお隣の同僚とのおしゃべりに夢中でした。日本式ホスピタリティ、営利事業への導入はもちろんですが、公的部門にも導入してもらいたいものです。
シンガポール駐在 橋本樹一郎