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未知なる大国トルコ、イスタンブールにて

2009.09.08

まさに東洋と西洋の交差点、イスタンブール

「日本から来たの?」「ここの商品見て行ってよ、マイフレンド!」トルコ・イスタンブールの市場グランド・バザールでは、日本語の客引きにしばしば声をかけられます。商品には値札がついていないため、購入時にはシビアな価格交渉が求められます。グランド・バザールを歩くと、アジアのマーケットを歩いているのかと錯覚するほどです。ただ、バザールの外に一歩出ると、イスラム文化を感じさせる雄大なモスクが立ち並び、町並みにはヨーロッパの都市を彷彿とさせる石造りの建物が広がります。この街を紹介する際に必ずと言っていいほど用いられる「東洋と西洋の交差点」という形容がいかに的確であるかに気付かされます。

現地製造業の強さ

 去る8月、トルコ最大の都市イスタンブールを訪れました。今春、「トヨタ、トルコ工場の生産累計100万台」というニュースを耳にしていたため、訪問前は東南アジアと同様に自動車は日本勢が中心、家電製品の分野でもパナソニックやソニーなどおなじみのロゴに接する機会が多いだろうと考えていたのですが、その予想は大きく裏切られました。トヨタ車は見かけたものの数は少なく、自家用車やタクシーはルノー、フィアット、フォルクスワーゲンといったヨーロッパ勢が中心。家電は地元財閥系のArcelik(アルチェリッキ)とVESTEL(ベステル)が圧倒的な存在感を示していました。トルコで最も人気のあるスポーツ、サッカーのプロリーグでも携帯電話会社のTurkcell(テュルクセル)とともにArcelikとVESTELがスポンサーに名を連ねています。インドを含むアジア全域や中東地域と比較しても、トルコは日系企業の存在感が薄い国かもしれません。

※Arcelik 冷蔵庫・テレビ・エアコンなどに強みを持つトルコの電器メーカー。直近の売上規模は35億ユーロ前後と言われており、国内の販売網・アフターサービス網の整備に力を入れている。さらにトルコで生産した家電製品はヨーロッパ市場に輸出もしている。
※VESTEL テレビのOEM生産に強い家電メーカー。米国の調査会社によると、2009年第一四半期における液晶テレビの生産出荷台数が世界第2位。

東南アジアや中東と異なるイスラムとの日常関係

 今回は短い滞在でしたが、私が住むシンガポールなどの東南アジアとは様々な点で異なっていることに気付かされました。例えば、東南アジア諸国はマレー語・タイ語などそれぞれの母国語を持っていますが、そうした母国語を解さなくても、英字紙が容易に入手できるので、国内の情報収集に支障はありません。ところが、トルコでは現地発行の英字紙を探したものの、キヨスク店頭で売られている国内発行の新聞は一般紙からスポーツ・芸能に特化した新聞まで30紙近くあるにもかかわらず、すべてがトルコ語の新聞でした。タクシーの運転手にはイスタンブールのような大都市でさえ英語が通じません。トルコ語はアルファベットに近い書体なので、中国のように筆談を使って、運転手になんとなく行き先を理解させる感じです。現地のリサーチ関係者によると、ビジネス上求められる英語の水準に達している層は国民全体の10%未満ではないか、とのことでした。

 また、国民の99%がイスラム教徒であるにもかかわらず、スーパーにはアルコール類が大々的に陳列されていますし、国産のビールやワインもあります。都市部のビジネスパーソンはリベラルな考えを持つ人が多く、今回訪問した現地のリサーチ関係者とも、仕事が終わった後は国産のエフェスビールで乾杯をしてから食事をスタートし、さらに国産ワインを楽しむという流れでした。イスタンブールの目抜き通りイスティクラル通りを1時間ほど観察しましたが、ヒジャブ(黒いスカーフ)を着用している女性はほとんど見かけませんでした。忌避されるべきアルコールを楽しみ、ファッションもイスラムの影響が少ない。最も世俗的なイスラム国家と言われる所以を感じました。

 シンガポールに戻ってから、パナソニックがトルコに販売会社の設立を決定した、という報道がありました。このように販売先としてトルコ進出を検討する日系企業は多いようで、在ヨーロッパの日系企業を対象にしたジェトロのアンケート調査でも、トルコはロシアに次ぐ「販売先として検討している国」に挙げられています。イスタンブールだけで1,500万人以上、国全体では7,000万人を超える人口を抱えるトルコ。一人あたりGDPはIMF・世界銀行いずれの統計でも10,000USドルを超えており、シンガポールやブルネイを除く東南アジアの水準を大きく上回っています。最近はカルフールやイケアなど郊外型ショッピングセンターの業態も目立ち始めました。こうした流通構造の変化を捉えることで、日系企業のトルコ市場向け販売が大きく伸びる日も遠くないかもしれません。