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「調査会社」自身がもっと情報発信を

2010.12.17

「調査」の社会性とは

 「職業」をいくつかの辞書で引いてみると「日常従事する業務。生計を立てるための仕事。生業。なりわい。」「日常的に従事する業務や労働など、技能、知識、能力などをまとめた一群の職務のこと。」と記されている。また、職業の三要素として、①経済性:収入を得て、生計を支えること ②社会性:社会の中での役割を担う事により、社会に貢献すること ③自分個人の人生の目標や生きがいを充足させ、実りあるものにすること、とも書かれている。①は手段としての職業、②③は目的としての職業を示していると言えよう。仕事のやりがい、達成感、目標設定といった言葉を見聞きする機会が増えていることからも、個人の職業意識において②③の比重が高まっていることは想像に難くない。
 職業・仕事としての「調査」の社会性といったことを少し考えてみたい。

キーワードは対話・コミュニケーション

 当社の経営理念では、「私たちは付加価値の高い調査・情報サービス事業を通じて、企業と社会との対話を促進し、顧客の繁栄と社会の発展に貢献します。」と謳っている。
 調査会社の業界団体である社団法人日本マーケティング・リサーチ協会のホームページにおいても「マーケティング・リサーチの健全な発展と普及、倫理の確立を目指し、(中略)マーケティング・リサーチは、あらゆる種類の財やサービスに関して供給者と消費者の間のコミュニケーションとして極めて重要です。」と表明している。対話・コミュニケーションがキーワードであり、調査会社の存在価値そのものを示しているといえよう。
 また、調査会社への就職希望者の志望動機としてよく聞く言葉は、以下のようなものである。「企業と消費者の接点になる仕事ができる」「消費者、企業の両方にメリットをもたらす仕事ができる」「多くの業界・製品・サービスとの接触ができる」「多業種と関われる可能性がある」。ここでも、要素としては媒介・コミュニケーションが登場する。

調査会社と社会とのコミュニケーションは

では、調査会社の機能・要素として対話・コミュニケーションをかかげる調査会社自身が社会とのコミュニケーションを十分にできているといえるであろうか。
 一般の人々に「調査データ」で思い起こすものをなんでもあげてくださいと質問したら
どんな回答となるであろうか。視聴率、世論調査等はあがってくると思われる。昨今の状況から推測すれば内閣支持率という言葉もあがる可能性は多分にあると想像する。あとは記事・ニュース等で報道される機会が多い政府の統計調査であろうか。マーケティング・リサーチ、市場調査あるいは企業調査という言葉が一般の人々からどの程度あがってくるであろうか。想起の範囲・頻度のこともさりながら、全体的状況として調査への協力率(回収率)が低下傾向にあることも考えあわせると、「調査データ」の有効性をわかりやすく伝えていく活動を展開し、その認知・理解を拡大・深化していく余地がまだまだあるのではないかと思われる。
 そもそも「調査」という業務は、調査に回答していただく方々の協力があって始めて成立するものであることを忘れてはならない。日本マーケティング・リサーチ協会の綱領における「調査対象者の保護、すなわち、調査に協力したことの直接的又は間接的な結果として、調査対象者が身体的、精神的、経済的、その他いかなる側面においても被害を受けたりや不利益を被らないことを保障することは、マーケティング・リサーチの存立基盤である。」との記述も前記のことがベースにあることは疑いの余地がない。
調査への回答をお願いする人々は、ビジネスマン・ウーマンの場合もあるが、多くは一般の人々である。ビジネスマン・ウーマンであればご自身の仕事を通して「調査」「調査データ」と接点のある人もいるとは思われるが、それでも直接的接点のある人は少数派であることは間違いない。一般の人々はとなると、調査の回答依頼を受けるという接点があるにしても、その機能・役回りまでを多く理解していただけている人々はさらに少数派であると推測できる。今後に向けて「調査データ」の存立環境を維持・向上させていくためには、まさにその機能・役回りについての理解を広く獲得していくことが必要と思われる。

調査の特質を超えた情報発信を

あらためて調査の特質をいくつかあげてみよう。①公表を目的とした一部の業務を除けば調査データは依頼主だけに提供される ②業務の発生が依頼を受けて実施する受注型が中心である ③(したがって)守秘義務を伴うケースが多い ④企画設計・調査準備・調査実施・分析・報告という業務のプロセス・内容を説明しにくい。これらの業務の特質も関係し、その時々の業務で回答を依頼する人だけではなく、人々一般に対して「調査データ」の有効性そのものをわかり易く伝える機会や行動が不十分であったという傾向は否めないのではないだろうか。
社会に向けては、タイムリーな自主調査の企画・実施、その調査データの発表等を積み重ねていくことが必要であろう。このような活動を通して「企業と社会のコミュニケーションを図る」ことを実行する調査結果・データをいろいろな機会を通して伝えていくべきであろう。商品・サービスの開発あるいは評価につながっている、顧客満足の向上につながっている、企業と消費者の円滑なコミュニケーション活動につながっている、といったことを調査会社自身のデータとして世の中に発表していくことが必要かつ望まれていると思われる。そのことが調査の有効性・有用性をより多く浸透させることにつながり、調査環境の維持・向上にもつながることになると思われる。
クライアントに向けては、なによりも受注型を中心とする業務対応からの脱皮が必要であろう。自主調査をベースとしての積極的なデータ提供、個別受託業務の範囲を超えた各種関連情報の提供等も行っていくことが、顧客との一体型を実現していくことになり、「パートナー」と言われる道を切り開いていくことになろう。
 対社会全般、対クライアントに向け、上記のような展開を実行していくことが調査会社の存在と機能の認知拡大につながり、ひいては「調査データ」そのものの有効性向上を促進することにつながると思う。