米国好調、タイ復調、中国は過去最低EU離脱の英国は3カ月後に悲観的
日経リサーチが2016年7月に実施した第13回「世界暮らし向きDI」調査の結果がまとまりました。
この調査は米国、英国、中国、インド、マレーシア、タイ、ブラジル、ロシアの8カ国に、2014年4月調査から日本、2015年4月調査からベトナムを加えた計10カ国に住む20~59歳の男女各国約200人ずつにインターネットを通じて生活実感を尋ねるもので、現在と3カ月後の暮らし向きを聞き、「暮らし向きがよい(よくなる)」と回答した割合から、「悪い(悪くなる)」と回答した割合を引いた数値が「暮らし向きDI(指数)」となります。
調査は2013年7月から3カ月に1回実施しており、今回が第13回になります。結果は短信スタイルにまとめてお客様にご提供しています。
景気拡大が続く米国が現在の暮らし向きDI・3カ月後の暮らし向きDIともに好調で、いずれも76と、16年1月調査と並ぶ過去最高を記録しました。幅広い業種で雇用が拡大しているほか、個人消費が底堅く、16年4~6月期の実質国内総生産(GDP)では4%増の高い伸びを示しました。ただ、新車販売に減速懸念が出てきたことに加え、小売売上高も勢いをなくしています。11月の大統領選を取り巻く不透明感が強まれば、消費者心理に影響を与える可能性もありそうです。対照的に中国は現在DIが過去最低の70となりました。小売売上高が改善するなど、個人消費は回復を見せていますが、輸出の不振や民間投資の減速などが続き、景気はなお勢いを欠いています。ただ、3カ月後DIは前回(16年4月)から8ポイント上昇しており、将来には楽観的なようです。
前回、現在DIが過去最低の40だったタイは今回14ポイントアップして54まで回復しました。調査時期は民主的な総選挙への道を開く憲法草案の国民投票が実施される約3週間前にあたっており、消費者の明るい気分を反映したのかも知れません。ただ、現実のタイの景気回復は歩みが遅く、好調な観光業を除けば、公共投資が下支えしている状態で、新車販売など耐久財市場の停滞により、消費は冷え込みが続いています。
3カ月後DIはロシアと英国の落ち込みが目立ちます。ロシアは前回から20ポイントの大幅ダウンで32。原油価格の反発などで経済指標の中には景気回復の兆しも見られ、年内に景気後退期を脱する可能性も指摘されていますが、国民にはまだその実感はないようです。また、クリミア情勢が緊迫化すれば、国際的な制裁が強化される恐れもあり、その場合はロシア経済に再び大きな打撃となりそうです。一方、6月23日の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の3カ月後DIは過去最高だった前回の60から16ポイントも低下して44となりました。調査は国民投票の約3週間後に実施されましたが、将来への不透明感が漂う中、早くも消費の手控えを示す指標が公表されるなど消費者心理に悪化の兆しが表れているほか、不動産市況に冷え込みの懸念も出ており、年内にも景気後退に陥る可能性も指摘されています。
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