日本経済新聞社の総合調査会社
株式会社日経リサーチ

バイヤー調査、取り扱いたい米「青天の霹靂」がトップ

コシヒカリ粘るも、新興ブランドに高評価
46道府県66品種を94人の目利きが採点
 日経MJが毎月第2・4(・5)月曜日に掲載している「バイヤー調査」。毎回、食品や日用品の中から1つの商品を取り上げ、全国の百貨店やスーパーで仕入れを担当しているバイヤーに、その商品のメーカーやブランドを総合的に評価してもらう企画で、日経リサーチはその調査の実施と分析を担当しています。
 「バイヤー調査」には年に数回、国産の生鮮食品ブランドも登場します。去る2月29日付の日経MJでは「ブランド米」を取り上げました。対象となったのは、日本穀物検定協会が実施した2014年産米の食味試験で、最上級の「特A」評価を獲得した42ブランドの中から選んだ36ブランドと、試験の対象外である参考品種の中で特Aに輝いた2ブランドの合計38ブランド。紙面には米穀を扱うバイヤー94人による総合評価で上位に入った17ブランドのランキングが掲載されました。
 ただし、実際の調査自体はもっと大規模で、全体では東京都を除く全国46道府県で生産しているブランド米66品種について、バイヤーの評価を聞いています。今回は紙面の制約で報道されなかったデータも紹介しながら、最新のブランド米事情を見ていきましょう。
新興ブランド米が上位に並ぶ
 総合評価のランキングで全体の首位となったのは日本を代表する高級米「新潟県魚沼産コシヒカリ」でした。「味」や「ブランド力」、「知名度」など13の評価項目中、11項目で最高評価を獲得し、総合得点は329点。食味試験でも、特Aランクが設定された1989年から27年連続で特Aを取得している唯一のブランドです。
 これに対して、2位に入った「北海道産ゆめぴりか」は2009年デビューの新顔です。今や新潟県と並ぶコメどころとなった北海道を代表するブランド米で、10年に初めて特Aを獲得(この時は作付け面積が少なく、参考品種扱い)すると、その後、6年連続で栄冠に輝いています。「マーケティング戦略」などを除き、ほとんどの項目で魚沼産コシヒカリに及ばなかったものの、総合得点306点で3位を60点近く引き離しました。魚沼産コシヒカリと並ぶブランド米の「2強」と言えそうです。

 上位20品種を見ると、ブランド米の代表格であるコシヒカリが7ブランド入り、根強い人気を示しました。特A米全42ブランドの中でも19ブランドと、半分近くに達します。
 歴史を遡ると、89~91年には、その年の特A米全体の90%前後をコシヒカリが占めていましたが、その後、ブランド米の多様化が進み、コシヒカリのほぼ独占状態は次第に崩れていきました。94年にはコシヒカリ以外の品種が特Aの12ブランド中7ブランドを占め、コシヒカリは50%を切りました。以後、その比率はほぼ40~50%台を推移していますが、2010年のように20ブランド中わずか5ブランドという年もありました。実は、この年以降、特Aを獲得するブランド米が急増しており、2010年前後に初めて特Aランクを取得し、知名度を高めた新しいブランド米を一般に「新興ブランド米」と呼んでいます。
 今回のバイヤー調査ランキングでは、北海道産ゆめぴりかの他、3位の「山形県産つや姫」、4位の「北海道産ななつぼし」、7位の「熊本県産森のくまさん」などが新興ブランド米になります。しかも、その品種は今も増え続けています。例えば、同率7位に入った「青森県中弘南黒(ちゅうこうなんこく)産青天の霹靂(へきれき)」は14年産米の食味試験で参考品種として特Aを獲得し、15年にデビューを果たした超新星です。
ブランド米総合評価ランキングの上位20品種
順位 ブランド名 総合評価
1 新潟県魚沼産コシヒカリ 329
2 北海道産ゆめぴりか 306
3 山形県産つや姫 247
4 北海道産ななつぼし 234
5 秋田県県南産あきたこまち 185
6 宮城県産ひとめぼれ 154
7 青森中弘南黒産青天の霹靂 139
7 熊本県産森のくまさん 139
9 富山県産コシヒカリ 138
10 山形県産はえぬき 130
11 岩手県県南産ひとめぼれ 126
12 宮城県産つや姫 125
13 新潟県佐渡産コシヒカリ 114
14 京都府丹後産コシヒカリ 109
15 山形県産コシヒカリ 107
16 北海道産ふっくりんこ 105
17 福島県会津産コシヒカリ 103
18 島根県産つや姫 95
19 福井県産コシヒカリ 92
20 山形県産ひとめぼれ 89
仕入れたいブランド米、注目は青森県産!
 バイヤーに実際に取り扱っているブランド米を聞いたところ、やはりランキング上位に並んだ品種が上位を占める結果となりました。ところが、これから仕入れたいブランド米を挙げてもらうと、ランキングはかなり異なる順位となりました。
今後仕入れたいブランド米のランキング
順位 ブランド名 回答率(%)
1 青森中弘南黒産青天の霹靂 33
2 熊本県産森のくまさん 18
3 山形県産つや姫 13
3 北海道産ななつぼし 13
5 北海道産ゆめぴりか 12
6 京都府丹後産コシヒカリ 11
7 富山県産コシヒカリ 10
7 新潟県佐渡産コシヒカリ 10
9 新潟県魚沼産コシヒカリ 9
9 青森中弘南黒産つがるロマン 9
 総合評価ランキングで7位だった青森中弘南黒産青天の霹靂がぶっちぎりのトップとなりました。参考品種ながら、15年の食味試験で青森県米の悲願だった特Aを初めて獲得した高級米で、デビューと同時に東京でも話題を集めました。生産量が少なく、完売店が相次いだ上、青森県米の取り扱い実績がないと仕入れできなかったこともあり、売りたくても売れない店、食べたくても食べられない客が続出したようです。
 その影響か、同じ産地の「青森中弘南黒産つがるロマン」が9位に飛び込みました。青天の霹靂より先輩ですが、食味試験はA評価だったので、日経MJのバイヤー調査では対象外、対象を66ブランドまで広げたランキングでは34位でした。価格は手ごろで、バイヤーの間では「見た目(色・つや)」が対象外28ブランド中トップ、「味」も高評価でした。
 2~5位はバイヤーの期待の高さを反映するように、人気の新興ブランドが占めました。一方、6~9位は産地の異なるコシヒカリが並びました。新興勢力に追い上げられても、やはりそのブランド力は強力なようで、消費者の間で根強い人気があることが伺えます。
どんなブランド米が消費者に選ばれるのか
味の好みや食べ方の多様化が進むブランド米。写真は2合サイズのブランド米cocomeシリーズ
 消費者から選ばれるブランド米にはどんな条件があるのでしょうか。今回、バイヤーの方から寄せられた自由回答を見ると、「味」以外に、「知名度」「話題性」「安全性」「ブランド力」といったキーワードが浮かんできます。「顧客の共感を得られるストーリー性」「生産者の顔やこだわりが見える商品」といった具体的な指摘もありました。
 また、全国各地の個性豊かなブランド米を手軽に食べられるサイズで提供するcocome(ココメ)シリーズでは、「生産者と地域との連携が取れ、ブランド作りへ一致団結している銘柄」(株式会社cocome五ツ星お米マイスター鎌田浩規氏)を選択基準のひとつにあげています。「新しいことだけを売りにして、品質基準や売り先の狙いもなく、結果的に埋没しているブランド米が数多くある」が、連携が取れているブランド米ほど「品質や数量が安定し、方針が明確化され、売り場に欠かせない銘柄になる」そうです。
 さらに、鎌田氏は「限られた売り場の中で、他のブランド米との差別化ができていて、それを簡潔にお客様に説明できること」が選ばれるブランド米の条件だと話しています。

 新興ブランド米が次々と登場する背景には、コメの国内消費量の減少が続く中、新たな人気銘柄を育てることで消費を喚起したいという生産者側の思惑があります。特に、品質面などの付加価値を高めた高級米は高値で取引できることから、今後、ますます数が増えそうです。すでに、新潟県はコシヒカリと並ぶトップブランドを目指して「新之助」を今年から一般販売するほか、岩手県も2年後に高級米を投入する計画です。
 環太平洋経済連携協定(TPP)の発効で外国産の安いコメが国内市場に大量に流入すれば、ブランド米の販売競争はますます激しくなることが確実です。各ブランド米がいかにして自らのブランドを確立できるか。それが今後の生き残りのカギを握りそうです。
追加情報:
 去る2月25日、日本穀物検定協会が2015年産米の食味試験の結果を発表しました。特Aランクに輝いたブランド米は過去最高の46品種(参考品種を含めると48)、そのうちコシヒカリは前年と変わらず19品種でした。
 初めて特A評価を受けたのは10品種(参考品種を含めると12)。前年は参考品種として特Aを獲得した、総合評価ランキング7位の青森県中弘南黒産(15年産米は中弘南黒・津軽・青森中央産)青天の霹靂と同16位の「北海道産ふっくりんこ」が正式な対象品種として特Aに選ばれました。今まで特Aランク米のなかった県では、滋賀県が「滋賀県産秋の詩」と「滋賀県産みずかがみ」の2品種、山口県が「山口県県西産きぬむすめ」、宮崎県が「宮崎県霧島産ヒノヒカリ」で、それぞれ初めて特Aを獲得。また、広島県は「広島県産ヒノヒカリ」で23年ぶりに特Aを取得しました。このほか、前年は参考品種だった「栃木県産とちぎの星」と「福井県産あきさかり」が念願の特A昇格を果たし、新たに「岩手県産銀河のしずく」と「静岡県産きぬむすめ」が参考品種ながら初の特Aとなりました。
 一方、特AからAにランクを下げたブランド米も多く、今回の総合評価ランキングの対象品種でも7位の熊本県産森のくまさん、14位の「京都府丹後産コシヒカリ」、15位の「山形県産コシヒカリ」など8品種がAランクに落ちました。今回の食味試験の結果、京都府のほか、香川、愛媛、福岡の各県は特Aランクのブランド米がなくなりました。
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