株式会社日経リサーチ

モノ消費に背を向けるゆとり世代は何を求めているのか

 いまマーケティングにおいて、「ゆとり世代」にあたる若者が注目されています。彼らは「消費意欲が薄い」、「モノを買わない」世代と呼ばれ、その欲のなさから、若くしてもうすでに現実を悟っているように見えることから、「さとり世代」とも呼ばれています。はたして彼らは本当に消費意欲が薄いのでしょうか。
 日経リサーチは各世代の価値観やモノの選び方にどのような差があるかを確認できる調査データ「日経リサーチシングルソースデータベース(SSDB) 」を保有しています。そのデータを分析し、巷で言われるようなゆとり世代の特徴が事実なのかを確かめ、今後のマーケティング活動に役立ちそうな情報を探っていきましょう。

 SSDBのデータを分析した結果、ほかの世代と比べて、ゆとり世代の価値観には大きく3つの特色があることがわかりました。

【ゆとり世代の価値観の3大特色】
①消費に対して堅実である
②他人からどう見られているかを意識している
③モノ消費よりもコト消費を重視していそう

 以下はそれぞれの特色を示す質問項目について、5段階で評価してもらい、「あてはまる+ややあてはまる」の合計スコアが世代間で一番高かった項目です(「全体」はゆとり世代~団塊の世代の平均値)。

消費に対して堅実

  • 【75%】いくつかの店を見比べて買い物がしたい (全体65%)
  • 【71%】買い物では事前に雑誌やインターネットで口コミや評価を調べる (全体59%)
  • 【66%】買い物は一番価格の安いところを探す (全体51%)

 

消費に対して堅実

 

他人からどう見られるかを意識

  • 【61%】出かけるときの服装には気を使っている (全体53%)
  • 【39%】身に着けるものにはこだわりがある (全体33%)
  • 【38%】部屋の模様替えなどをするのが好き (全体26%)
  • 【34%】ちょっと背伸びをすれば手に入るなら高級ブランド品を持ちたい (全体26%)
  • 【32%】高級ブランド品は社会的地位やステータスを表すと思う (全体25%)
  • 【16%】流行するものはいち早く持ちたい (全体9%)

 

他人からどう見られるかを意識

 

モノ消費よりもコト消費

  • 【51%】好きなものを食べるためなら、手間をかけてもよい (全体43%)
  • 【49%】趣味にお金をかけることをいとわない (全体35%)
  • 【46%】高いお金を払ってでもおいしいものを食べたい (全体39%)

 

モノ消費よりもコト消費
ゆとり世代の3つの特色から、「モノ消費よりもコト消費」という側面が見えてきました。ただし、これは一般的にゆとり世代の消費の特徴として言われている通説です。そこで、これがはたして本当なのかを検証するため、昔からモノ消費の代表的な商材で、「社会的地位やステータスを表す」代表である「クルマ」の保有状況や保有者の嗜好について、データを見ていくことにしましょう。

 ゆとり世代をはじめ、若者全般の「クルマ離れ」が叫ばれて久しい状況ですが、データを見ると、ゆとり世代の81%は普通自動車免許を持っています。運転に必要なことはもちろん、身分証明書の役割もあり、大人になったことを示すステータスとして運転免許証を持っている人も少なくないかもしれません。
 ゆとり世代のクルマの保有率は74%と高いですが、48%が親と同居しており、世帯所有の可能性が高そうです。ゆとり世代の世帯が所有する1台目のクルマについて見ると、「主にゆとり世代の若者が運転する」割合が最も高く48%ありますが、「主に両親が運転している」も37%に達しています。

 ゆとり世代のクルマへの意識をより深掘りするため、1台目のクルマを主にゆとり世代の若者が運転しているケースに絞って、さらにデータを見てみることにしましょう。

 1台目で主にゆとり世代の若者が運転しているクルマのうち、45%が中古車、40%は軽自動車となっています。クルマの平均取得額は159万円、最頻価格帯は「50万~100万円未満」です。中古車市場が活況であることに加え、彼らの平均世帯年収が513万円(SSDBより)であることから、なかなかクルマにお金をかけられない現実があり、中古車の価格に魅力を感じて購入している実情が想像できます。さらに、クルマの排気量については、33%が「わからない」と回答(全体では11%)するなど、走行性に魅かれるとか走る喜びを見出すというより、移動手段としてなるべくお金をかけずに購入・保有するモノと考えている人が多いかもしれません。

 次に、2013年以降に1台目のクルマを買ったゆとり世代の若者に絞って、その購入プロセスを見てみます。購入するときは、デザイン性(クルマの見た目、ボディーカラーなど)」を重視し、「環境性(ハイブリッド、EV、省燃費エンジンなど)」はあまり重視していない傾向にあります。このデータから、彼らは燃費の低さのような、おもてからは見えにくい優れた機能より、人からどう見られるかを意識したクルマ選びをしていると言えそうです。彼らの価値観として「ちょっと背伸びをすれば手に入るなら高級ブランド品を持ちたい」という意識がある中、新車よりも手頃な値段で購入できる中古車に注目し、その中で自分が納得のいくデザイン性を備え、自分を表現できるクルマを選んでいることがうかがえます。

 彼らの購入プロセスにおいて特徴的なのは、「家族」の情報がきっかけで購入を検討し、購入の決め手となった情報としても、「ディーラーの展示車」と並んで高い割合(12%)を示していることです。家族の存在の大きさは情報提供だけにとどまらず、購入決定にも表れています。ゆとり世代の若者自身が主に運転しているクルマであるにも関わらず、20%は「親」が購入に関与したと答えています。それは、資金的な援助だけでなく、自分がいいと思ったものを他人、特に一番距離が近い「両親」に認めてもらいたいという承認欲求があるのかもしれません。

 では、すでに1台保有しているゆとり世代の若者は2台目以降の「次のクルマ」をどう考えているのでしょうか。データから、ゆとり世代の79%が新車を視野に入れています。新車で欲しいブランドは「マツダ」がほかの世代と比べて突出して高くなっているのが特徴的です。ハッキリとした理由はデータからは分かりませんが、マツダは運転する楽しさを表現した「Be a driver」というスローガンや「魂動(こどう)デザイン」という独特の設計思想を打ち出しており、こうしたブランドの姿勢が、2台目として単なる移動手段以上のクルマを求めるゆとり世代の若者の目に魅力的に映っているのかもしれません。

 では、最後に、クルマを保有しているかどうかに関係なく、ゆとり世代の若者のクルマへの意識を見てみましょう。以下の通り、非常に前向きで意欲旺盛です。
  • 【49%】クルマを運転することは快楽だ (全体39%)
  • 【25%】クルマのデザインや内装にもお金をかけたい (全体16%)
  • 【21%】クルマは自分を表すステータスシンボルである (全体15%)

 クルマに対する意識から、そのモノの性能より、内装やデザインといった外見へのこだわりが強く、自分らしくチョイスしたモノによって、人から評価・承認されることで、アイデンティティーを感じる。そんなゆとり世代の若者、あまり知られていない一面が今回、垣間見えた気がします。彼らをターゲットにしたマーケティング戦略を立てる上では、彼らのニーズを満たす商品・サービスを提供することはもちろん、彼らがその商品やサービスを保有・利用しているシーンを他人が見てどのように感じるのか、その商品やサービスを保有・利用することで彼らの承認欲求が十分に満たされるのか、といった点も捉えていく必要がありそうです。

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