株式会社日経リサーチ

障がい者の視点に立った新サービスを間もなくリリース

日経リサーチは今秋、新しいサービスをリリースします。
「UD」との出会い、手探りでの取り組み
 それは昨年末。あるクライアント様から、こんなご相談を受けたのがきっかけでした。

 「障がい者や高齢者の視点で、ミステリーショッパー(MS)調査ができないか」

 MSとは、担当者が調査員であることを隠して対象店舗を訪れ、一般の顧客としてサービスを受け、店舗の実態やサービスの品質を評価し、改善点を指摘する調査です。最近、注目されている「顧客視点」の経営には欠かせない調査です。
 日経リサーチにとってMSは30年以上の実績があり、年間2万店以上の店舗を調査している得意分野です。しかし、これまで障がい者や高齢者の視点で調査した経験はなく、当時の私たちには調査できるだけの体制も知見もなかったので、残念ながらお断りしました。
障がい者目線で店舗サービスをチェックするユニバーサルMS。
私たちにとって挑戦でした(写真はイメージ)
 ただ、そうしたニーズがあるということは発見でした。折しも新年度に向けて新規事業を模索していたこともあり、早速、年明けから社員6人でプロジェクトチームを組んで活動を始めました。と言っても、どこから手をつけていいのか見当がつきません。全くの手探り状態です。何しろ「ユニバーサルデザイン(UD)」と「バリアフリー」の意味の違いも知らなかったのですから。

 ちなみに「ユニバーサル」とは「すべての人・物に共通する、普遍的な」といった意味で、UDとは障がいの有無や年齢・性別、人種・文化・言語などの違いにかかわらず、あらゆる人が利用しやすいように考えられた環境や施設、製品・サービスなどのデザインを指す言葉です。

 私たちはまずNHK教育テレビの「バリバラ」を見ることから始めました。障がい者をテーマにした情報バラエティー番組です。並行して、各自が分担してUDに関する資料を集め、専門家に話を聞いたり、研修に参加したりして勉強しました。社会のニーズや企業の取り組み、どこにどういう資料があるかなども調査しました。とにかく様々な法律や制度に関する知見や情報を収集し、メンバーで共有しました。先進的な取り組みをしている企業に見学に行ったり、障がい者対応の専門家にお会いしたりすると、まだ形がはっきりしていない私たちのアイデアを歓迎し、知識の拙い私たちに様々なことを情熱をもって親切に教えてくださいました。私たちはそういった方々の期待を感じ、何とか形にしなくてはという気持ちになり、プロジェクトを前へ進めるよう背中を押してもらったように感じました。
  プロジェクトチーム全員で3級UDコーディネーターの資格を取得することも決めました。UDの視点を体系的に学ぶには、資格試験の勉強がいいと考えたからです。チームには、年明け早々にこの資格を取得したメンバーがいて、彼から受検に関する情報を聞いたりして、春には全員が合格できました。
 ちなみに彼はその後も資格の勉強を続け、準2級UDコーディネーターやユニバーサルマナー検定2級など3つの資格を取得、現在は更に上級の資格を目指しています。その熱意には頭が下がります。
障がい者目線のマーケティングリサーチを
 手当たり次第に色々なことに取り組むうちに、おぼろげながらサービスの形は見え始めました。私たちは活動を始めて以来、ユニバーサルサービスとして、高齢者と障がい者の両方を視野に入れていましたが、次第に障がい者に重点を置くようになりました。障がい者の視点に立った調査を手がけている調査会社はまだ少なく、どこでもできる仕事ではありませんし、障がい者への対応が高齢者の抱える不自由への理解にもつながると考えたからです。昨年お話をいただいたクライアント様以外にも、こうした調査の引き合いを耳にするようになりました。障がい者を対象としたマーケティングリサーチへのニーズは間違いなくある。私たちは自らの手で新しい市場に乗り出してみたいと思いました。

 そこで、障がい者の目線によるトライアル(試行版)MSと参加者による座談会をやってみることにしました。ただ、実現には課題が2つありました。まず、ご協力いただける障がい者の方をどう集めてくるかです。MSには調査員としてご協力いただける障がい者の方が必要です。私たちでそうした方を集めるのが理想ですが、そもそも希望者がいるのかもわかりません。

 最初にお力を貸していただけることになったのは「Co-Co Life ☆女子部」という障がい者向けフリーペーパーを発行しているNPO法人「施無畏(せむい)」です。趣旨を説明して、「Co-Co Life ☆女子部」の編集などに協力する障がい者サポーターの方にインターネットでアンケートを実施し、その中で調査員の仕事に興味があるか尋ねることになりました。アンケートを回収した結果、「やってみたい」という前向きな方が何人かいることがわかり、調査実施が決まりました。

 私たちは施無畏とパートナーとなり、一緒にこのプロジェクトに取り組むことになりました。トライアルMSでは、「Co-Co Life ☆女子部」のサポーターを中心に手を挙げていただいた10人に調査員をお願いすることにしました。視覚、聴覚、上肢・下肢など皆さん、障がいも様々です。訪問対象は銀行で、自宅近くなどにある店舗から1カ所を選んで調査してもらうことになりました。
マニュアルはUD化、調査の本質は変えず
メンバー全員が出演した動画も作成しましたメンバー全員が出演した動画も作成しました
 ただ、課題はもうひとつありました。私たちが持っている調査ノウハウが果たして障がい者の方を対象にした時、そのまま当てはめることができるのだろうかということです。私たちはノウハウがうまく伝わるよう、マニュアルをUD化しました。健常者だけでなく、視覚や聴覚に障がいがある方でも、誰が見てもわかるマニュアルを目指しました。紙資料はフォントやレイアウトを工夫し、ナレーションと字幕の入った動画も作成しました。動画はプロジェクトメンバー全員が出演する“力作”です。
 調査項目についても検討を重ねました。MSは接客のあるべき対応ができていたかどうかでその店舗を評価し、得点化します。今回のMSでは、障がいにあわせたサポートができる(「合理的配慮」)ことが重要なのは言うまでもありませんが、それをどこまで具体的な評価項目に入れるべきかはかなり議論しました。最終的には、障がいに対するサポートを形式的にとらえるよりも、お客様1人1人のお困りごとを理解し、それにあわせた行動がとれるか、という点が大事であるという結論に達し、調査の本質は変えませんでした。
手ごたえ感じたトライアル
実査終了後、調査員の方に感想などをお聞きしました
 トライアルMSは9月上旬に実施しました。プロジェクトメンバーは実査の前に調査員と待ち合わせて、必要事項の確認など軽く打ち合わせをしました。MSでは当社の担当者が当日、現場に出向くことは滅多にありません。調査員の皆さんにとってMSは恐らく初めての経験だったと思いますが、実は、メンバーも障がい者と接した経験がなく、現場でお会いしたのが初めてという者がほとんどでした。調査員が店内で接客を受けている間、私たちはその様子を離れたところから見守っていました。終了後、近くの喫茶店で感想などをお聞きしましたが、どなたも快活に行員の対応ぶりなどを振り返ってくださいました。もしかしたら、当日は私たちの方が緊張していたかも知れません。
 トライアルMSは無事終了しました。私たちとしては、商品化できる手ごたえを十分に感じました。一緒にやっていただけるパートナーの方もNPO法人・実利用者研究機構など少しずつ増えています。MSやその後に開いた座談会を通じて障がい者の方々から得た数々の気づきは、今後の活動にとって極めて示唆に富んだものでした。多くの人の期待に応えていくためには、ボランティアではなく、ビジネスとして継続していくことが重要だ、そんな思いも強くしました。

 私たちの思いは今、新しいサービスとして形になろうとしています。今回、詳しく触れられなかった座談会(グループインタビュー)については、近いうちに稿を改めてご紹介します。今後の日経リサーチの発表にどうぞご期待ください。
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