株式会社日経リサーチ
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2020年、パラリンピックが東京にやって来る!

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 初めまして。障がいや難病の女性のためのフリーマガジン「Co-Co Life(ココライフ)☆女子部」編集部の守山菜穂子と申します。
 この度、「Co-Co Life☆女子部」の発行元である特定非営利活動法人 施無畏(せむい)は、株式会社日経リサーチと調査業務において協業することになりました。

 編集にご協力いただいている全国約600人超の障がい・難病の「読者サポーター」のネットワークや、編集部が撮影・イベントで培って来た障がい者の行動・感性に対する知見を活かし、企業のユニバーサルデザインに関するコンサルティング活動に役立てようというものです。その際には、フリーマガジンの配本先である、医療・福祉関連施設、障がい者福祉に携わる官公庁・団体・企業などへのコネクションもフルに活用します。

 障がい者に関する大きな話題と言えば、3年後の2020年8月に予定されている東京パラリンピックです。パラリンピックの開催は2011年3月に起きた東日本大震災の後と同じくらいの「心のインパクト」を東京に、そして日本全体に与えることになるでしょう。

 私たちはこの東京パラリンピックと、それを迎え入れる過程が、日本人の価値観をガラリと変える、大きな転機になるだろうと予想しています。ここから未来に向けて「新しいスタンダード」が定着することは間違いありません。
 今回のコラムでは、2020年の東京パラリンピック開催時に「東京の街に何が起こるのか」、その未来予想図を描いてみます。
フリーマガジン「Co-Co Life☆女子部」の表紙フリーマガジン「Co-Co Life☆女子部」の表紙
その時、東京に障がい者が押し寄せる
 先行して開かれるオリンピックは2020年7月24日に開会式、8月9日に閉会式が行われます。笑顔と涙の怒涛の日々が終わり、気が抜けたような東京…。
 そして2週間ののち、8月25日からは世界の障がい者スポーツの祭典、パラリンピック東京大会が開幕します。会期は9月6日まで16日間の予定です。
 あちこちで使われる象徴的な「2020年」という言葉。あなたはまだ「オリンピック」しか意識していないのでは?でも、パラリンピックを忘れずに。

 この「東京パラ」では230万枚近いチケットが発売されると発表されています。連日35度を超すうだるような蒸し暑さの中、世界中から100万人以上の身体障がい者、視覚障がい者、そしてパラスポーツの応援者、報道スタッフが、「トーキョー」に押し寄せます。
 国内の障がい者、例えば日頃は外出に気後れするようなタイプの人も、家族で、また友人と、こぞって競技会場にでかけることでしょう。

 日本人が、今まで見たことがないような膨大な数の「障がい者」が、その16日間めがけて、この狭い東京にやってくるのです。
あなたの街にも障がい者の集団が
 ターミナル駅に、車いすに乗った数十人の集団がやってきました。エレベーターは車いす2台しか入りません。介助者と共にエスカレーターを使って降り始める方もいます。つかまり立ちできる方は、自力でゆっくり階段を降り始めるかもしれません。
 通勤中のあなたは、こんな風に頼まれます。「恐れ入りますが、車いすを畳んで、ホームまで運んでもらえませんか」。あなたはもちろん快諾します。

 ホームに電車が入ってきました。板を渡して1台ずつ乗せていると、いつまで経っても電車が発車できません。電車に乗っている人たちがサッと立ち上がり、協力して車いすを車両に引っ張り上げました。無事に車いすの集団を乗せて、電車は定刻で動き出しました。

 暑い日の混んだ電車に、車いす数十人が乗り込んでくると、正直ちょっと狭い。でも、乗客はみんなどこかウキウキしています。だって今日から、日本でパラリンピックが始まるのですから。
街中のレストランや商店でも
 同じく8月のある日。あなたが経営するレストランに、視覚障がいの外国人の集団がやってきました。あなたはそんなにたくさんの「白杖(はくじょう)」の人を見るのは、生まれて初めてです。でも、日本では2016年に施行された「障害者差別解消法」で、障がいを理由に入店を断ることは禁じられています。あなたは恐る恐る、障がい者を店に迎え入れます。

 彼ら彼女らは目が不自由なので、メニューが見えないそうです。
 「この店には何があるの?」片言の英語で、そう聞かれます。そして「メニューを読み上げて欲しい」というリクエスト。
 あなたはこの3年間、海外からのお客様が増えたので、メニューの英語を勉強していました。全てを読み上げた後、耳を傾けていたお客様たちは、それぞれに挙手をして、無事にオーダーしていただくことができました。

 食事の後、「トイレまで連れて行って欲しい」と言われます。視覚障がいの人をトイレに案内するのは、生まれて初めてです。あなたは自分の腕に捕まってもらい、トイレまで先導します。「右手側に水洗のレバー、左手側に手洗いの蛇口があります。壁のボタンはおしりを洗うための…」。トイレの機能をうまく説明できました。

 白杖の人たちは店を気に入ってくれたようで、チップを多めに置いて帰って行きました。その後、どうやらクチコミで評判が広がったのか、約3週間の会期中、外国語を話す白杖の人たちが店を埋め尽くしました。例年だと8月の閑散期ですが、今年はたいへんな売り上げになりました。
 同じ時期、街中のレストラン、商店、ショッピングセンターなどあちこちで、障がいを持つ外国人の集団とお店の人との同じようなやり取りが見られました。
ユニバーサルデザインな社会はこれからのスタンダード
 想像がつきましたか。これはまぎれもなくあと3年後の東京の姿です。駅に、レストランに、商業施設に,さまざまな言語の、さまざまな障がいの人が一斉にあふれ出します。
 世界のスタンダードな作法として、色々なことを「通りすがりの」あなたに頼んでくるでしょう。日本人は一般的に、見知らぬ人と会話するのが少し苦手かもしれませんが、「おもてなし」をしなくてはなりません。障がい者たちへの対応を含め、心の準備をしておいてくださいね。

 老若男女、障がいがある人、子育て中のママ、高齢の人、LGBTの人、日本語が読めない外国人。誰もが使いやすい表記や道具・建築物のデザインを「ユニバーサルデザイン」と呼びます。
 さらに、社会において多様な人々が自然に混じり合う「ダイバーシティ(多様性)」は近年、企業の経営・人事フィールドや街づくりにおけるトレンドワードになっています。
 あなたの店は、あなたが住んでいる・働いている建物は、ユニバーサルデザインの対応ができていますか?あなたが担当している商品やサービスは、ダイバーシティの考え方を取り入れていますか?

 「Co-Co Life☆女子部」編集部では、ユニバーサルデザインの実地検証や企業研修、コンサルティングなどを実施しています。障がいや難病の当事者の声を大いに活かし、日本社会の「心のユニバーサルデザイン」を推進し、多様性に共感できる社会を目指します。
 2020年、そしてその後、障がいのある人との「自然な共生」が、この国の圧倒的なスタンダードになることは間違いありません。ぜひ、一緒に前に進みましょう。
【団体概要】
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「Co-Co Life(ココライフ)☆女子部」
特定非営利活動法人 施無畏(せむい)が発行する、障がい・難病の女性のためのフリーマガジン。本誌は2012年に創刊し、6年目に入った。
年4回(季刊)、1万部を発行し、全国600人超の障がい当事者の自宅へ直送。また全国の市区町村の福祉課、社会福祉協議会、病院、リハビリ施設、福祉施設、障がい者雇用をしている企業などに冊子を設置し、無料で配布している。
編集部では、SNSやリアルなイベントなどを展開し、障がい・難病当事者の20~30代女性を中心としたコミュニティを育成している。
メイン写真
撮影:鈴木智哉(キリンニジイロ)
モデル:中嶋涼子(Co-Co Life☆女子部 読者サポーター)

コラム執筆者:守山菜穂子 Naoko Moriyama
「Co-Co Life☆女子部」編集部エディター、ユニバーサルデザインコーディネータ。特定非営利活動法人 施無畏 理事。
1975年 千葉県生まれ、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。
読売広告社、小学館を経て独立し、本業ではコンサルティング会社を経営。
同時にボランティアで、本誌の編集とコミュニティの運営に携わる。
一般社団法人 日本ショッピングセンター協会、日本財団などで、ユニバーサルデザインに関するセミナー講師の実績多数。
調査のご相談や見積もりのご依頼がございましたら、お気軽にお問い合わせください