株式会社日経リサーチ

「UDリサーチ」サービス始動
障がい者調査員の座談会も開催

 日経リサーチは障がい者の視点に立った新しいサービスをリリースいたします。

 新しいサービスは「ユニバーサルデザイン(UD)リサーチ」という名称で、UDの思想に基づいた次の3つの調査関連サービスを提供します。
  1. ユニバーサルな観点から現状を把握する定量調査(郵送、電話、ネットなど)
  2. ユニバーサルな観点からの気づきを得る対面調査(座談会、インタビューなど)
  3. ユニバーサルな観点から検証するミステリーショッパー
 UDミステリーショッパー(MS)については、10月掲載のコラムで銀行を対象にしたトライアル調査の様子をご紹介しました。その後、調査員をお願いした障がい者の皆さんにお集まりいただき、座談会を開きました。今回はその模様をご紹介します。
異なる障がい者が同席 “画期的な”座談会
 MS調査の終了後、担当した調査員の座談会を開くことは珍しくありません。ただし、今回のような障がいがある調査員の座談会は私たちにとって初めてのこと。しかも、今回の座談会は肢体不自由、視覚障がい、聴覚障がいという異なる障がいがある方々が同じテーブルを囲んで話し合うというマーケティングリサーチとしては画期的な試みです。限られた時間の中で、聴覚障がい者と他の障がい者の間のコミュニケーションをどうスムーズに進めるか。私たちにとって最高難度の座談会となることが予想されました。

6608_01n-370x250.jpg 座談会は9月下旬の週末、2回に分けて実施しました。会場は弊社を使いたかったのですが、ビルのトイレなどがバリアフリーになっていないため、UD対応ができている近くの公共施設を借りました。
 モデレーター(司会)をお願いしたのは以前から座談会でお世話になっている有限会社ジャコの代表取締役でマーケティングプランナーの小梨由美氏。小梨さんは生まれつき歩行障がいがあったのですが、2016年に脳性まひが原因と診断され、初めて自分が障がい者であると自覚したそうです。現在はユニバーサル社会の実現をビジネステーマに加えて活動中で、UDリサーチに関しても早くからご賛同をいただいていました。

 9月23日、土曜日、座談会初日。障がい者の方は雨が降ると外出の負担が重くなるので、お天気を心配していたのですが、幸いにも晴れました。初日は車いす2人、視覚障がいと聴覚障がい、上肢障がいがそれぞれ1人。バリアフリーモデルをしている女性など全員が20~30代で、男性も1人います。聴覚障がいの方については、隣にプロジェクトメンバーが座り、パソコンを使ってノートテイクすることにしました。ノートテイクとは参加者の発言をパソコンで素早く入力、聴覚障がいの方は画面を見て発言内容を把握するものです。

6608_02n-370x250.jpg 座談会ではまず今回のMS調査に関して、出迎え、窓口、送り出しというそれぞれの場面について、各自に振り返ってもらいました。「出迎えた銀行の警備員の態度がすごく(悪く)て『これはアカンなあ』と思った」「すべての障がい者が介助や支援が必要だと頭から思われても困る。正直言って要らない支援もある」といった率直な感想や意見が次々に飛び出しました。続いて、MS調査自体について、私たちへの要望や調査の改善点、調査してみたい業種などを自由に話し合ってもらいました。

 皆さんに共通した意見は「まずは一言、『何かお手伝いしましょうか?』と声掛けをして欲しい」ということ。何が必要かは障がい者によって異なるし、上に書いたように支援を必要としない障がい者もいます。「お手伝いしましょうか、と聞いてくれるだけで安心できる」そうです。また、「支援を断られても、『何かあったら声を掛けてくださいね』と言ってもらえると、こちらも声をかけやすくて、すごく助かる」という声もありました。

 会は終始なごやかなムードで、コミュニケーションにも問題はありませんでした。最後は皆さんから「異なる障がいがある人と接する機会がなかったので、色々と気づくこともあり、勉強になった」「他の障がい者と話せて、どう考えているのかよくわかり、すごく意味があった」「自分自身も色々考えるところがあり、良い機会をもらえた」といったお褒めの言葉をいただき、初日の座談会は終了しました。
難度アップ 視覚・聴覚の障がい者2人ずつ
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 翌24日、日曜日。座談会2日目。この日も天気は晴れ。今日の5人の参加者は年齢が20~50代と幅広く、全員女性でした。昨日の座談会はまずまず成功しましたが、今日のハードルは昨日より確実に上がっています。と言うのも、今日は聴覚障がいと視覚障がいの方が2人ずついるのです。うまくお互いのコミュニケーションが取れ、スムーズに座談会が進行するでしょうか。今日は聴覚障がいの2人には小さなパソコンの画面を覗き込んでもらうのでなく、画面をホワイトボードに投影して見てもらうことにしました。
 参加者の自己紹介が終わったところで、視覚障がいの1人から「まだ声を出していない人が2人以上いる」と指摘がありました。人の気配を感じるが、誰だかわからない、ということで不安な気持ちになったようです。視覚障がい者でないと気が付かない感覚だと思いました。慌てて全員が自己紹介しました。

 本題に入ると、参加者の皆さんから銀行の対応に厳しい意見が相次ぎました。前日は「声掛けが大事」という話が出ましたが、この日は視覚障がいの2人から、声掛けがあっても「言葉が足りない。説明不足」と感じる事例が次々に飛び出しました。「『ここでお待ち下さい』と言われても困る。何のために待つかわからないからすごく長く感じる」「『後ろにソファーが…』とだけ言われても、お座り下さいか危ないですよか、最後まで言ってくれないと情報が不十分」「こそあどことばを使われると、何を指しているかわからないから話が進まない。具体的に指示して欲しい」「『そこに段差が…』だけでなく、上りか下りかも言ってくれないと」。私たちが普段意識していなかったことで、視覚障がい者がどれだけ困っていたのか、痛切に気付かされました。同時に「行員の〇〇です」という自己紹介や「承知しました」といった言葉を添えられると、印象がかなり変わるという話もありました。

 また、聴覚障がいの1人は口の形や手の動きを見て相手が何を話しているか読み取っているそうで、「モゴモゴしゃべるなど口の形が読み取りにくい人は困るが、大声でなくても、ゆっくり話してもらえれば、話の内容は理解できる。ただ、マスクをしている人や口に手を当てて話すクセのある人は何を話しているのかわからない」と訴えます。
 3人が横並びになったこの日の座席のレイアウトについても、「隣の人は横顔になってしまい口の動きが良く見えない。全員の顔が正面に見えるレイアウトにして欲しかった」と指摘がありました。この方はこうした座談会などに出席する際、早めに会場に行って、どうやってコミュニケーションを取るか、打ち合わせをすることもあるそうです。ノートテイクをしっかりやっておけば大丈夫と思っていた私たちは気付かなかったポイントでした。
私たちが得た気付きと手応え
 こうして2日間に渡る座談会は無事終了しました。障がいがある方としっかり触れ合ったのは私たちUDリサーチプロジェクトチームのほとんどのメンバーにとって初めての体験でした。そこでまず感じたことは、私たちの調査仕様がいかに不親切であったかでした。このコラムで取り上げた以外にも数多くのご指摘、気付きをいただきました。一方で、2回の座談会を乗り越えたことで、MS調査や各種対面調査などのUDリサーチについて、「やれる」という手応えを感じることもできました。

 それと同時に、調査仕様だけでなく、私たちを取り巻く環境がいかに不親切にできているかも改めて痛感させられました。ある参加者は「障がい者にどう接したらいいか、頭では理解していても、実際に障がい者を前にすると、余裕がなくなり、行動できなくなってしまうのではないか」と話していました。そんな風に感じているから、障がい者側も「銀行などで忙しそうだな、余裕がなさそうだなと感じると、こちらも遠慮して引いてしまう。来なければ良かったと思うこともある」という心境を話してくれました。健常者と障がい者の間のギャップを埋めるために、私たちのUDリサーチも何かのお役に立てること、小さくない意義を持っていることも確信できました。

 健常者と障がい者が接触する機会は今後、ますます増えていくでしょう。それに合わせて、私たちの社会はすべての人にとって優しく、快適で、暮らしやすくなっていかなければなりません。UDリサーチがその一助になれればと願って止みません。
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