株式会社日経リサーチ

女性リサーチャーの見たサウジアラビアの今

 サウジアラビアと聞くと何を想像するだろうか。イスラム文化を重んじる国、それ故に自由が制限されている国、石油で潤っている国――。アラビア半島の大部分を占める大国だが、観光ビザがなく入国が世界一難しい国と言われる。閉ざされた印象が強く内情を知る者は少ない。今回顧客の依頼で、同国で調査にあたる機会を得た。女性リサーチャーの目に映ったサウジアラビアの今をリポートする。
入国までが一苦労
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 出張が決まったのは今年初夏。女性の渡航条件が緩和され、年齢制限がなくなったことを受けての社の判断だった。入国までが一苦労だった。ビザ(査証)の申請が一度目は却下され、当初のスケジュールがずれた。結局手続きを一からやり直して取得できたものの、ハッジ(巡礼)期間に入国日が重なった。最初に訪問予定だったジッダに巡礼目的でない私は国際便で入ることができず、日程の変更も余儀なくされた。
 手続き以外で戸惑ったのが服装だ。女性がサウジアラビアに入国する際は、外国人であっても伝統的民族衣装であるアバヤの着用が義務づけられている。入国する際には着用が望ましいとされ、手荷物で持参する必要があった。事前にオンラインで購入し、ようやく出発にこぎつけた。興味深かったのが乗り換えで立ち寄ったアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ空港での光景だ。ドバイもイスラム国家だが、巨大なハブ空港は非ムスリムの旅行客も多く、Tシャツ、短パンという軽装の女性も多い。しかし、サウジアラビア行きのゲートに近付くと雰囲気は一変した。
 観光目的での入国が許されていないサウジアラビアに向かう乗客のほぼ全てがムスリム系で、ゲート付近で搭乗を待つ女性は真っ黒なアバヤ姿のみ。アバヤ姿でないのは、恐らくサウジに駐在している夫・父親に会いに行くのであろう西洋人一家と、私ぐらいであった。あわててその場でアバヤを着用し、リヤド空港から無事入国することができた。
広がる女性の活動範囲
c6801_IMG_1902.jpg 今回女性の入国条件が緩和された背景に、閉ざされた国家からグローバル社会の一員としての地位を築きたいムハンマド皇太子の思いがあったと言われている。2016年に策定した「ビジョン2030」は国内総生産(GDP)に占める民間部門の割合上昇や失業率低下、運動する人の割合上昇などのほか、女性の社会進出を後押しする目標を掲げている。
 男女が同席することや大衆娯楽に批判的な宗教界の意向を受け禁止されてきた映画の上映が今年、約35年ぶりに解禁された。皇太子はイスラムの教えを厳格に守るために課せられてきた様々な規制を緩和する考えで、既にコンサート開催や女性の男子サッカー観戦が解禁された。世界で唯一禁止されていた女性による自動車の運転もできるようになり、6月に初めて免許を発行した。
c6801_IMG_1915.jpg  変わりつつあるサウジ社会を目の当たりにしたのはリヤド市内に繰り出してからだ。女性の活動が制限されてきたうえ、セ氏40度を超える暑さから野外活動も限られるため、家族や友人との外出先はショッピングモールが一般的だ。いたるところに大型ショッピングモールがあり、外資からローカルブランドまで様々な店が並ぶ。大半は服飾や化粧品など女性向けの店だ。女性の仕事は教師など一部に限定されていると聞いていたが、アパレルショップの店員は女性が主で、下着店では女性店員しか見かけなかった。


 
c6801_IMG_1883.jpg  ショッピングモールで見かけた車のショールームでは女性スタッフも常駐しており、面会したサウジ女性も運転を練習中だった。「子供の迎えやちょっとした買い物にも一人で行けるのが楽しみ」「BMWみたいな大型車が欲しいの」と目を輝かす姿が印象的だった。


 
変わらぬ「男女席を同じうせず」
 変わらぬサウジも実感した。イスラムの教えでは女性は男性に保護される立場にある。女性はまだ家にいるべきだという考えは根強く、家族の理解が得られず職に就けないサウジ人女性も多いと聞いた。また、自動車運転が解禁されたとはいえ、自由に運転できる女性はまだ少ない。「夫か息子が運転してくれるから私は免許をとらない」と話す女性もいれば、運転マナーが悪く事故が多いサウジアラビアで妻の運転を懸念する夫もいる。

c6801_IMG_1982.jpg 女性が家の外でくつろいで食事ができない事情も変わっていない。レストランでは入り口に「Family section」とサインがある店でしか女性が席について食事ができない。家族でFamily sectionがあるレストランに入った際は、カーテンで空間を仕切ってもらい、その中では女性もアバヤやヘジャブ(スカーフ)を脱いで家庭内同様くつろいで食事ができる。しかし今回私が一緒に行ったのは現地調査会社の男性。家族でない男性がいるところではアバヤを脱げず、そのまま食事をした。Family sectionがないレストランにはそもそも女性は入れない。料理をテイクアウトして、車内やオフィスに戻って食べなければならなかった。



 遠い国だと思っていたサウジアラビアだが、日系ブランドも多く見かけ、短期間ながら滞在してみると親しみが湧いた。中東の大国サウジアラビアが今後どう発展・変化していくか注視していきたい。
(国際調査本部 橋本実希)
Jeddah Corniche
※リヤドとジッダの街の様子については海外の現地ビジネス情報サイト「グローバル・マーケテイング・キャンパス」で画像・映像を公開中。
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