株式会社日経リサーチ

金融機関の取り組みと
顧客ニーズのギャップとは?

~顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)のためのNPS活用~
顧客評価を知りたい金融機関と注目の指標NPS
 2018年3月、金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表し、金融機関に取組方針や取組状況の公表を促しました。併せて、顧客本位の業務運営の定着度合いを客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)も盛り込むように働きかけています。それ以来、金融機関の間で顧客からの評価を測定するため、アンケート実施を検討する動きが活発になったと感じます。

 顧客評価の指標としては近年、NPS®を活用する企業が、金融機関に限らず増えています。NPS(Net Promoter Score)は企業や商品の推奨度を表す顧客ロイヤルティー指標で、企業の収益性や成長性と関連がある指標として注目されています(※1)。
 NPSはある企業や商品を「他の人に薦めたいか」を回答者に0~10点の11段階で採点してもらい、9~10点を付けた「推奨者」の割合(%)から0~6点を付けた「批判者」の割合(%)を引いて算出します。たとえば、推奨者が45%、批判者が15%の場合、NPSは45-15=30 という値になります。ちなみに、国内でNPSを測定すると、マイナスの値となることが一般的です。
図表1 NPSの算出方法
6813_01.png
 
6813_02.png
(※1)Net Promoter®およびNPS®はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
金融機関の業態別NPSスコア
 今回、日経リサーチは金融機関顧客評価調査「金融METER」2018年版で全国の金融機関のNPSを測定しました。その一部をご紹介しましょう。
金融機関顧客評価調査「金融METER」調査概要はこちら
 同調査では、全国の消費者に利用している金融機関を尋ねたうえで、その金融機関を家族や友人などに紹介したいと思うか質問しました。その結果に基づき算出したNPSの業態別平均スコアが図表2です。
図表2 業態別NPS(各業態の測定企業平均)
業態区分 NPS
都市銀行 -69.9
信託銀行 -59.1
地方銀行 -68.3
ネット・流通系銀行 -55.1
証券会社 -61.3
生命保険 -64.2
損害保険 -62.5
 NPSが最も高い(と言ってもマイナス値ですが)業態はネット・流通系銀行の-55.1で、最も低いのは都市銀行の-69.9でした。
都市銀行のNPSが上昇するには?
 都市銀行のNPSについてもう少し詳しく見てみましょう。回答者の中には、その金融機関の営業員と頻繁にコンタクトをとっている人もいれば、口座を持っているもののほとんど利用していない人も含まれています。そこで、都市銀行について、コンタクト状況別にNPSを集計してみました。それが図表3です。
 都市銀行の利用者全体のNPSは-69.9ですが、自分が利用している銀行に相談したり説明や提案を受けたりしたことがある人に限ると-42.3に、その中でニーズのヒアリングを受けたことがある人に絞ると-33.1に、さらに銀行からの説明や提案がニーズに合っていた人では-14.7にまで上昇します。
図表3 都市銀行のNPS(コンタクト状況別)
図3
(※2)以下の質問文で、相談や説明・提案の有無を聴取。
質問文:あなたがご利用の以下の金融機関について、資金プランや商品について、相談したり、説明・提案・アドバイスなどを受けたりしたことがあるものをすべてお選びください。

(※3)以下の質問文で、ニーズのヒアリング有無を聴取。
質問文:「相談したり、説明・提案・アドバイスなどを受けたりした」とお答えの金融機関について、あなたのニーズ(要望)や考え方を聞いてくれたものをすべてお選びください。

(※4)以下の質問文で、説明・提案がニーズに合っていたかを聴取。
質問文:「相談したり、説明・提案・アドバイスなどを受けたりした」とお答えの金融機関について、その説明・提案・アドバイスはあなたのニーズ(要望)に合っていましたか。


 この結果から、顧客との間で相談や説明・提案といったコンタクトをとり、その際に顧客のニーズを聞き取り、ニーズに合った説明や提案をする、という流れによりNPSが上昇すると考えられます。
都市銀行利用者の「ニーズ」と対応状況
 それでは、顧客が都市銀行に求める「ニーズ」とは何でしょうか。金融機関の営業や窓口の担当者に求めることを尋ね、その結果をまとめたのが図表4です(※5)。「わかりやすい説明」「プロとしての専門知識」「あなたに合った商品の提案」などが上位に挙がりました。
図表4  都市銀行に相談したり説明や提案を受けたりした人が、営業・窓口担当者に求めること (複数選択可、%)
図4
(※5) 以下の質問文で聴取した結果を、都市銀行に相談したり説明・提案を受けたりした人において集計。
質問文:あなたは、金融機関の営業担当者や窓口担当者に、どのようなことを求めますか。あてはまるものを3つまでお選びください。


 続いて、それぞれの項目について「求める」と答えた人に、都市銀行がその内容に対応してくれていると思うかを尋ねた結果が図表5です(※6)。求める人が最も多かった「わかりやすい説明」は対応してくれていると思う割合も最も高く、37.1%に達しましたが、それ以外では3割前後にとどまる項目が目立ちました。また、「商品やサービスの購入・契約後のアフターフォロー」「ご自身の状況(ライフステージ、家族、事業など)への理解」「金融以外の情報・話題の豊富さ」の3項目は2割前後にとどまっています。
図表5 各種対応を求める人のうち、都市銀行がそれに対応してくれていると思う割合(複数選択可、%)
図5
(※6) 以下の質問文で聴取した結果を、都市銀行に相談したり説明・提案を受けたりした人のうち、各項目を求める人において集計。例えば「わかりやすい説明」の37.1%は、図表4における42.6%の人の中で都市銀行が対応してくれていると思う割合。
質問文:あなたがご利用の以下の金融機関について、営業担当者や窓口担当者が対応してくれていると思うものをすべてお選びください。
顧客本位の業務運営の実現に向けて
 以上の結果から、顧客のニーズに応えて高いロイヤルティーを獲得するためには、顧客ひとりひとりへの深い理解に基づいて、顧客に寄り添った対応をしていくことが必要と言えるでしょう。そのためには顧客との息の長い関係構築も重要となってきます。

 私たちは顧客の属性ごとのニーズとそのニーズへの対応状況を把握し、さらにNPSや総合満足度といった総合的な評価指標の推移を継続的に測定することが、各金融機関において顧客本位の業務運営を実現する上でお役に立つと考えております。
 顧客アンケートの実施や活用について、ご質問やお悩み・お困りのことがございましたら是非お問い合わせください。
(ソリューション本部ソリューション第1部 伊原)
調査のご相談や見積もりのご依頼がございましたら、お気軽にお問い合わせください
当サイトでは、利用者が当サイトを閲覧する際のサービス向上およびサイトの利用状況把握のため、クッキー(Cookie)を使用しています。当サイトでは閲覧を継続されることで、クッキーの使用に同意されたものとみなします。詳細については、「当社ウェブサイトにおける情報収集について」をご覧ください。