株式会社日経リサーチ

中南米第2の大国 メキシコ経済は今(上)

有望な消費市場、日本企業に好機
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 ブラジルに次ぐ中南米第2の大国メキシコ。近年、中南米諸国の中では最も経済が安定し、中間層も着実に厚みを増している。2050年にはGDPが日本を抜くとも言われている。輸出拠点としての優位性と消費市場としての将来性に期待し、外資系企業の進出も続く。2010年に約400社だった日系企業は17年には約1200社に増え、日本経済新聞も16年にメキシコシティに支局を開設している。私は今回、メキシコ外務省が主催する「日墨戦略的パートナーシッププログラム」に参加し、2週間にわたって現地でメキシコの将来性を探ってきた。
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相次ぐ直行便の開設
 8月末、成田空港からメキシコシティ国際空港行きのアエロメヒコ航空の直行便で入国した。日墨間の交流の高まりを受け、アエロメヒコの直行便は16年1月に、さらに17年2月には全日空便が開設された。ただ、同空港は各国からの旅客増に追いつけていないようで、実際、着陸してから入国するまでに2時間かかった。施設的にも手狭なため、市郊外に新空港を建設していたが、12月に就任する次期大統領のロペスオブラドール氏は「予算の無駄遣い」として、18年10月末、建設続行可否の国民投票の結果を受けて、建設中止を表明した。今後しばらくは混乱が続くかも知れない。

c6832_DSC07146.jpg  メキシコシティの標高は約2250m。空気は薄い。日本とは14時間(夏季)の時差もあり、私も到着してから2日間ほどは倦怠感や食欲不振など軽度の高山病の症状に見舞われた。メキシコシティの都市圏人口は2000万人を超え、ブラジルのサンパウロやリオデジャネイロと並ぶ大都市だ。スペイン統治時代の歴史的な建造物と近代的なビルが混在し、広場を中心に大通りが広がる。

 目抜き通りのレフォルマ通りは銀座通りほどの距離で、パリのシャンゼリゼ通りを模したと言われる。初めて訪れた街は「欧州のそれとほとんど変わらない」という印象だ。落ちているゴミは少なく、物乞いもほとんど見かけなかった。オブジェやカラフルな壁画も多く、欧州の主要都市より清潔で華やかな感じだ。
厚み増す中間層
c6832_DSC07954.jpg 小売店で目立ったのは米国資本だ。セブンイレブンは1ブロックに1つはあり、地元資本のコンビニチェーンOXXO(オクソ)と競い合っている。スターバックスコーヒーもよく見かけた。レフォルマ通りには10店ほどあった。

 メキシコと言えば低賃金を武器に、自動車を中心とする製造業の国というイメージが強かった。ただ、訪れてみると、国民生活は思いのほか豊かそうで、レジャーを楽しむゆとりもあるように見えた。中心部からやや離れたポランコ地区にある水族館は家族連れで大行列、近くにある現代美術館も同様だった。海外からと思しき観光客より、地元の人らしいカップルやファミリーが目立った。
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 実際、メキシコの経済は安定的に推移しており、2010年以降、国内総生産(GDP)は年2~3%程度増加している。現地でインタビューしたメキシコの貿易推進機関プロメヒコのゴンサレス氏は「メキシコペソは中南米通貨の中では圧倒的に安定している」と、マクロ経済運営に自信をみせる。さらにメキシコ経済で特筆すべきは中間層が厚みを増してきていることだ。プロメヒコの定義では現在、国民の70%が中間層に属するという。中間層の拡大が消費を押し上げ、世銀の調査では16年のGDPに占める個人消費の割合は66%と、ブラジルやインド、中国より高い。
影薄い中国
 メキシコの人口は毎年1%増えており、現在の1億2400万人余りが50年には1億5000万人を超えるとされる。国連の推計によると、メキシコの生産人口は15年から35年に25%増え、インドやブラジルなど主要新興国の中では最も高い伸びとなる。コンサルティング会社のPwCの予測では、50年までにはメキシコのGDPは日本を抜いて世界7位になるという。

 街を歩いていて意外に思ったのがアジア人、特に中国人を見かけなかったことだ。欧米の主要都市のどこに行っても中国人観光客を見かけるのが常だが、メキシコでの存在感は薄く、メキシコシティにある中華街は通り一本だけの寂しいエリアだった。新興国でよく見かける中国の日用品も目にする機会がなかった。
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 経済統計を見ると、中国の存在感は薄い。1999~2017年の累計のメキシコへの直接投資額をみると、中国は上位10カ国にも入っていない。一方で日本は米国、スペイン、カナダに次いで4位。アジアでメキシコと2国間の自由貿易協定(FTA)があるのは05年に締結した日本だけだ。今年は1888年に日墨修好通商航海条約を結んでから130年の節目にあたる。メキシコ経済省のアジア太平洋担当のフラド氏は「日本はメキシコ経済にとって重要なパートナーだ」と力説する。


 政府系金融機関バノブラスのカマレナIR担当マネジャーは「メキシコの消費市場はきわめて有望だ」と語る。日本企業には大きなチャンスがあるのではないかと感じた。(下に続く)
(国際調査本部 横原グリッツナー一輝)
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