株式会社日経リサーチ
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金融機関の利用客が担当者に望むことは?

~金融リテラシーの高低によるニーズの違い~
Naomi_Onishi_C6833.jpg  日経リサーチが実施した金融機関顧客評価調査「金融METER」2018年版の分析結果をご紹介するコラムの第2弾です。今回は金融リテラシーを取り上げます。
 金融リテラシーとは、お金やお金の流れに関する知識や判断力のことです。家計金融資産における「貯蓄から資産形成へ」の実現のためには、消費者の金融リテラシーを向上させることが欠かせなくなっています。
  金融庁も今年9月26日に公表した「変革期における金融サービスの向上にむけて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)」の中で、「金融経済教育・投資教育を通じた金融リテラシーの向上」を今後の方針として掲げ、次のように述べています。

 『現代社会において国民一人一人が安定的な資産形成を実現し、自立した生活を営むためには、金融リテラシーを高めることが重要である。また、デジタライゼーションの進展に伴い、新たな金融サービス等についてのリテラシーを高めることも求められている。加えて、少子高齢化の進展や成年年齢の引下げを踏まえれば、若年期から金融リテラシーを身に付けていく必要性が高まっている』
金融リテラシーの高い人・低い人
 では、金融リテラシーの高い人・低い人にはどのような特徴があるのでしょうか。「金融METER」2018年版では、金融リテラシーに関連した10項目の質問を設定しています。それぞれの質問に対する正答率は表1のようになりました。この正答率を得点化し、様々な属性ごとに金融リテラシーの平均点を算出しました。以下、この数値を比べてみます。
表1 金融リテラシーに関する10項目
調査項目 正答率
円相場と物価に関する項目 56.1
マイナス金利に関する項目 51.2
分散投資に関する項目 51.1
変動金利に関する項目 33.6
NISAに関する項目 21.9
積立投資に関する項目 44.9
利息に関する項目 42.0
投資信託の手数料に関する項目 26.6
平均株価に関する項目 35.5
長期金利と債券価格に関する項目 23.7
 ※上記の10項目について、正しいか、正しくないかを聴取。

 まず、金融リテラシーの違いを性年代別でみると、性別では各年代とも女性より男性の平均点が高く、年代では20代・30代の若年層に比べ、50代以上で平均点が高い結果となりました。女性は50代以上で、男性の若年層の平均点の水準に近づいています。(表2)
表2 性年代別の金融リテラシー
性年代 平均(点) 性年代 平均(点)
男性_20代 5.4 女性_20代 3.5
男性_30代 6.2 女性_30代 3.9
男性_40代 6.6 女性_40代 4.3
男性_50代 7.1 女性_50代 5.1
男性_60代 8.0 女性_60代 6.0
男性_70代以上 7.9 女性_70代以上 5.7
 次に、利用している金融機関の数によって金融リテラシーに差があるかみてみます。銀行では、利用している銀行が多ければ多いほどリテラシーが高くなる傾向にあります。一方、証券会社の場合は、利用していない人(0社)と、1社以上利用している人では平均点が倍以上違いますが、2社以上の複数の証券会社を利用者している人の間では、あまり差はありませんでした。(表3)
表3 利用金融機関の数と金融リテラシー
利用金融機関の数と金融リテラシー
※銀行は都市銀行、信託銀行、その他の銀行(地方銀行は除く)のうち、主に利用している銀行を7つまで、証券会社は主に利用している会社を4つまで聴取。
 では、保有・利用している金融商品と金融リテラシーの高低には何か関係があるのでしょうか。平均点の分布から全体を高・中・低層に分けて、傾向を探りました。
 「株式」「投資信託、ETF」や「不動産投資信託(REIT)」「MMF(外貨建て含む)・MRF・中期国債ファンド」はリテラシーが高い層ほど保有・利用しているのに対し、「個人向け国債」はリテラシーが低い層の保有・利用率が若干高めになっています。(表4)
図表4 リテラシー別にみた金融商品・サービスの保有・利用率(複数選択可、%)
リテラシー別にみた金融商品・サービスの保有・利用率
※銀行・証券・信託銀行のいずれかで保有・利用している投資運用関連の商品やサービスをいくつでも聴取。

 金融リテラシーが高いから、証券会社や運用に関連した商品を保有・利用しているのか、それとも証券会社の利用や運用関連商品の保有・利用によって金融リテラシーが向上したのか、どちらなのかは特定できませんが、金融リテラシーを向上させるには、まずは運用経験を積むことがカギと言えそうです。
リテラシーの高低と金融機関の担当者に求めるもの
 前回(2018年10月31日)のコラム『金融機関の取り組みと顧客ニーズのギャップとは?』でご紹介したように、金融機関の利用客は営業や窓口の担当者に「わかりやすい説明」「プロとしての専門知識」「あなたに合った商品の提案」などを求めていることが分かりました。

 では、利用客の金融リテラシーの高低によってニーズに違いがあるのでしょうか。表5をみると、全体でトップだった「わかりやすい説明」はどの層でも上位に入っていますが、特に、リテラシーの低い層は43.7%が「わかりやすい説明」を求めています。低リテラシー層のニーズの2位、3位は「気軽に相談しやすいこと」「あなたに合った商品の提案」でしたが、いずれも3割弱に留まり、トップとはかなり差がつきました。
 一方、金融リテラシーの高い層が最も求めているのは「プロとしての専門知識」(43.5%)で、「わかりやすい説明」(39.6%)、「あなたに合った商品の提案」(37.9%)がこれに続きました。「プロとしての専門知識」は低リテラシー層では24.9%で、リテラシーの高低によってニーズにかなりの差が出ました。この他、「商品やサービスの購入・契約後のアフターフォロー」も低リテラシー層では19.3%だったのに対し、中・高層ではいずれも25%台でニーズに差がありました。
 表5 都市銀行に相談したり説明や提案を受けたりした人が、営業・窓口担当者に求めること。
 (複数選択可、%)
都市銀行に相談したり説明や提案を受けたりした人が、営業・窓口担当者に求めること。
 ※次の質問の回答結果を、都銀に相談したり説明・提案を受けたりした人だけで集計。
『あなたは、金融機関の営業担当者や窓口担当者に、どのようなことを求めますか。あてはまるものを3つまでお選びください』
 金融リテラシーの低い層は「専門知識」より、「わかりやすい説明」や「気軽に相談しやすいこと」など、親身な対応を求めていることがわかります。こうした層にはまずは気軽に相談できる環境をつくり、丁寧なわかりやすい説明をすることが必要となりそうです。
 一方、金融リテラシーの高い層に対しては、金融機関の担当者はプロとしての専門知識を生かして個々に合った商品を提案し、購入後もしっかりアフターフォローをすることが良好な関係を続けていくためには不可欠だと言えるでしょう。

 このように、利用客は金融リテラシーの高低によって、運用の経験値や金融機関に求めるニーズに違いがあることがわかりました。 顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)を実現するために、金融機関は対面営業の場面において、金融リテラシーを含めた利用客の状況を理解したうえで、個々のニーズに合わせ、一人一人に応じたレベルで商品・サービスの提案や説明をすることが重要なのではないでしょうか。
(ソリューション本部ソリューション第1部 大西 直美)
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