株式会社日経リサーチ

よりよい顧客体験(CX)のために
すべきことは?

~CESで改善点を探る~
C6851_Oohinata.jpg 日経リサーチが実施した金融機関顧客評価調査「金融METER」2018年版の分析結果をご紹介するコラムの第3弾です。今回はCES(顧客努力指標)という指標を取り上げます。
 顧客ロイヤルティーを測るには満足度やNPS®など様々な指標がありますが、最近注目されているのがCESです。
    ※Net Promoter®およびNPS®はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
CES(顧客努力指標)とは?
 CESはCustomer Effort Scoreの略で、顧客努力指標とも呼ばれています。
企業とのやり取りや製品・サービスの利用時に、お客様がどの程度努力を強いられたかを聞き、お客様のロイヤルティーが下がるような状態になっていないかを測定します。
 金融機関のようなお客様と長期的な関係を築いていくべき業態においては、お客様に使い続けてもらうためにも、努力を強いられたと感じるようなことをなるべく減らし、よりよい顧客体験(CX)を提供することが求められています。

  「金融METER」2018年版では以下のように、「負担感」ということばを使ってCESを測定しました。負担感の有無を7段階で回答してもらい、「まったく負担感はない」「負担感はない」とした割合(TOP2)から、「やや負担感がある」「負担感がある」「非常に負担感がある」とした割合(BOTTOM3)を引いた数値をCESのスコアとしています。
利用金融機関別のCESスコア
 では、CESのスコアは金融機関によって差があるのでしょうか。図表1は都市銀行、証券会社、生命保険会社の各社のCESのスコアを比較したものです。
 まず、業態別に見ると、都銀に比べ、証券や生保のCESが低い傾向にあることが分かります。
   次に、業態内で比べると、都銀は比較的各行のスコアが近かったのに対し、証券は会社による差が大きく、最高と最低で5ポイント以上の差がありました。
 図表1. 金融機関別CES
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負担感の正体とは?
 このように負担感のレベルはスコア化できますが、それではお客様は何に負担を感じているのでしょうか。
 
次の表2は負担を感じた理由を自由回答で聴取し、その中からキーワードを抽出したものです。「手数料」という物理的な“負担”もありますが、「手続き」に「かかる」「時間」や「窓口」「店舗」、「書類」「多い」「面倒」などの理由が見えてきました。「ネット」というチャネルも登場しています。
 表2. 負担感の理由キーワード上位30(順位は件数順)
Q.あなたは金融機関での取引・手続等において、どのようなときに負担感がありますか。
1 手数料 11 書類 21 長い
2 時間 12 多い 22 ネット
3 手続き 13 面倒 23 利用
4 かかる 14 負担 24 銀行
5 窓口 15 待ち時間 25 担当
6 ATM 16 近く 26 少ない
7 高い 17 取引 27 対応
8 店舗 18 必要 28 する
9 行く 19 感じる 29 わかる
10 できる 20 保険 30 営業
 次に、年代別に負担感の理由を探りました。表3は年代別に特徴的なキーワードをそれぞれ上位20位まで並べたものです。
 20~40代はATMやネットという非対面チャネルに関連するキーワードが上位を占めているのに対し、50代以上は対面チャネルに関連するキーワードや商品に関連することばが多く挙がっています。
 
 表3. 年代別負担感の理由キーワード上位20
(順位は各キーワードがその年代においてどの程度特徴的であるかを数値化した特徴量の多い順)
       
  20代 30代 40代 50代 60代 70代以上
1 かかる かかる 時間 本人 商品 預金
2 手数料 手数料 手数料 振込 顧客 勧誘
3 時間 ATM ログイン 担当 解約 掛け金
4 お金 窓口 パスワード 確認 投資
5 ATM 平日 ATM 入金 信託 うるさい
6 土日 時間 営業 振り込み 金利 しつこい
7 コンビニ 仕事 行く 保険 金融 投資
8 使える 待ち時間 窓口 掛け金 質問 対応
9 めんどくさい 土日 取る 不足 しつこい 勧める
10 限る 長い 平日 しつこい 用語 商品
11 行ける 近く ネット いろいろ 勧める 強引
12 短い 短い 合わせる 待たす 聞く 説明
13 近く 行く 入力 更新 掛け金 連絡
14 引き出す コンビニ できる 電話 勧める 取引
15 場所 店舗 インターネット
バンキング
わかる 出かける 遅い
16 地方銀行 できる 手続き 定期 煩雑
17 やる 感じる 店舗 低い 回答 言葉
18 少ない 行ける 近所 解約 機関 損失
19 平日 とる 変更 説明 手続き 年金
20 おろす 少ない 並ぶ 処理 自分 送金
 このうち、20~30代の「時間」というキーワードの自由回答を見ると、時間がかかることのほか、時間帯に制限があること、利用の際に時間などを調べる必要があること、などに負担感を抱いていることが分かります。

20~30代自由回答例
  • 待ち時間も手続きも時間がかかる
  • 何か困った時に問い合わせする時間が限られている
  • 窓口が平日で、短い時間帯しかあいていない
  • 手数料がかかる時間帯を調べたり、ATMの場所を調べたりしないといけない
 40代では「ネット」というキーワードが上位に登場します。年代が上がるにつれ金融機関での保有商品や利用サービスが増えていく中で、インターネット上で手続きや取り引きをする機会が増え、その分負担を感じる場面も多くなるのでしょう。ネットでできること・できないこと、困ったときの問い合わせ先などを、分かりやすく提示しておくことが求められます。

40代自由回答例
  • 各種手続きがネットで完結できず、店舗への訪問や書類の提出が必要になった
  • ネットで出来ない事、わからない事について情報を得たい時の連絡方法が分からない/手間がかかる
  • ネット利用の申し込みの仕方が面倒、住所変更・マイナンバー登録などが面倒、説明が文字ベースでわかりにくい
 50代では「不足」というキーワードが上位に挙がります。金融機関の担当者の知識・説明不足が負担感につながるケースのほか、自分の知識不足で理解できないことが不安を生み、負担感を醸成しているケースもありました。必要な情報をきちんとわかりやすく説明するのはもちろん、相手のリテラシーに合わせて説明し、理解状況を確認しながら手続きを進める姿勢も必要でしょう。

50代自由回答例
  • 担当者の知識不足
  • 説明不足で手続きの仕方が良くわからない
  • 自分の知識不足、理解力不足が元々の原因と思うが、しっかり理解できないまま金銭手続きをするときに、不安がつきまとう
 50代以上で特徴的なキーワードが「しつこい」です。更に、60代以上になると「勧める」が、70代では「強引」がここに加わります。しつこい強引な勧誘がお客様の負担感につながるのはもちろんですが、仕組みのわかり難い商品を勧められて理解が追い付かないことも負担になるようです。複雑な内容の商品を勧める際は特に留意すべきです。

60代以上自由回答例
  • 営業担当者が自分の都合だけで顧客の利益にならない(フィーが高い、保険料が割高など)商品をしつこく勧めてくる
  • 高額な金融商品や意に反する金融商品を強く勧められる。特に外貨預金等で多い
  • 金融商品の勧め方に強引さがある
  • 仕組みのわかり難い商品を勧められる
 このように年代によって負担の感じ方に違いがあることが分かりました。保有資産額や保有商品、金融リテラシーなどによっても違いがあるかもしれません。大切なのは、そうしたお客様の様々な特性を踏まえて、一人ひとりに合わせたサービスを提供し、負担感を減らしていくことです。
顧客体験(CX)を損なわず関係を築いていくために
 チャネルが広がることでお客様の利便性が高まる一方、非対面チャネルの増加で対面接点は減り、お客様の姿が見えにくくなってきてもいます。そうした状況の下、長期的な関係を築いていくためには、顧客体験を損なわない対応が重要です。カスタマージャーニーの中で、あらゆる接点でお客様とつながり、サービスを提供していく。その1つ1つの積み重ねがロイヤルティーを醸成し、長期的な関係構築につながります。CESの測定と負担感の理由聴取の結果は、優先的な改善ポイントおよび改善ポイントにおける課題の発見に活用できます。
 「金融METER」2018年版では取引全般について負担感とその理由を聴取していますが、実際に各金融機関でCES測定などの調査を実施する際は、接点ごとに聴取することをおすすめします。お客様の負担感が大きい個所を把握し、現場での改善活動に活用しやすくするためです。
 どこで負担を感じているのか、何に負担を感じているのか、現状をまず明らかにすることが大切です。よりよい顧客体験のためにまず何をやるべきか、その取り組みの1つとしてCESを有効に活用してはいかがでしょうか。
(ソリューション本部デジタルマーケティング部 大日向)
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