株式会社日経リサーチ

YouTubeは、なぜ多くの人に使われ続けているのか

~CrossMappingによる分析で見えた強みと弱み~
YouTubeの強みを探る
佐藤邦弘
 スマートフォンの普及とモバイル通信の高速化に伴い、ネット動画の視聴者数は年々拡大を続けています。d-TVや、Hulu、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ、Netflix等の様々な動画サービスが登場する中で、老舗ともいえるYouTubeの利用率は7割以上*1 あり、確固たるポジションを維持しています。
 YouTubeはなぜこれほど多くのユーザーに支持されているのでしょうか?YouTubeは特定のコンテンツ分野や利用シーンに縛られない極めて汎用的な動画サービスであり、何が多くの人々を惹きつけるのか分かりにくい面がありました。そこで、今回はYouTubeがどのような時に選ばれているのかを調査とデータマイニングを使って探ってみました。
 調査はインターネットで、日経リサーチが保有するアクセスパネルを対象に実施し、YouTubeを半年に1回以上利用した1552人から回答を得ました。

 まず、データマイニングでYouTubeを必要としている人の特徴を探りました。YouTube必要者を「YouTubeが世の中から無くなったらとても困る人」ととらえ、「YouTubeが無くなったら困る度合い」を7段階で聞きました。「困る」と回答する人は、YouTubeが他のサービスよりも何らかの点で優れている、と知覚していると考えられるので、この人たちの特徴を知ることで、何がYouTubeの強みとなっているのか把握できます。調査では上位3位までの35.8%の回答者をYouTube必要者としました。(図1)

図1.YouTubeがこの世から無くなった時の困り度(7段階)

C6903_1.png
YouTube必要者の5つの特徴
 次に、この調査全体でYouTube必要者が、そうで無い人と比べて、特に頻繁に回答する傾向のある語句・内容をYouTube必要者を特徴づけるものとしてランキングにしてみました。(図2)これを見ると、「視聴回数が多い」、「Twitterの利用者である」、「就寝時に視聴」、「未婚者」、「ゲームコンテンツの視聴者」などが特徴として浮かび上がってきました。
図2.YouTube必要者の特徴ランキング
rank 質問 回答 回答の出現率 回答者のうち、YouTube
必要者の出現率
出現率は何倍まで増えたか? 特徴量
1 視聴頻度 1日に
5-6回以上
8% 75% ×2.1 49.0
2 視聴頻度 1日に
2-3回程度
11% 65% ×1.8 35.7
3 利用SNS Twitter 40% 47% ×1.3 31.3
4 1回あたりの
視聴時間
1時間から
2時間程度
8% 64% ×1.8 24.2
5 視聴タイミング 就寝時 16% 54% ×1.5 23.8
6 未既婚 未婚 38% 45% ×1.3 22.4
7 視聴ジャンル ゲーム 10% 59% ×1.6 21.4
8 1回あたりの
視聴時間
30分から
1時間程度
19% 51% ×1.4 21.1
9 視聴ジャンル お笑い・
バラエティ
21% 50% ×1.4 20.3
10 視聴ジャンル 映画 10% 58% ×1.6 19.9
11 1回あたりの
視聴時間
2時間以上 4% 72% ×2.0 18.9
12 YouTubeが
無かった時の代替サービス
[動画]※単語 8% 58% ×1.6 17.1
13 代替サービスを
選んだ理由
[動画]※単語 3% 70% ×2.0 15.9
14 同居人 父母
(義理を含む)
26% 46% ×1.3 15.8
15 視聴タイミング 夕食の前後 14% 50% ×1.4 14.3
16 利用SNS Instagram 22% 47% ×1.3 14.1
17 視聴ジャンル ファッション 3% 72% ×2.0 12.7
18 視聴ジャンル 歴史・
ドキュメンタリ
9% 53% ×1.5 12.7
19 視聴ジャンル 人気YouTuberの配信動画 13% 50% ×1.4 12.6
20 視聴ジャンル アニメ 11% 51% ×1.4 12.6
多様なYouTubeの利用シーン
 30位までに入った特徴を、CrossMappingという日経リサーチが独自に開発した手法で分析してみます。CrossMappingでランキングに入った項目をマッピングすると、類似した特徴はほぼ同じ方向にまとめることができます。これにより、「YouTube必要者」の特徴にはどのような軸が存在するのか、思い込み無しに確認することが出来ます。(図3)
図3. YouTube必要者の特徴マップ(CrossMapping)
c6903_CrossMapping_03.png
 ご覧の通り、利用シーンが非常に多様であることが見てとれます。中心から見て同じ方向に並んでいる項目は、YouTube必要者のある程度類似した特徴を表しているので、解釈ごとに色分けしてみました。なお、括弧([ ])内はYouTube必要者が質問の自由回答欄に、全体と比べて特に多く書く傾向がある単語を示しています。この結果、大きく5つの軸が見つかりました。右上の第1象限から時計回りに見ていきます。
  1. がっつりコンテンツの視聴
    YouTubeでは、ドラマ、映画、歴史・ドキュメンタリー、アニメなど比較的長いコンテンツを視聴する
  2. お笑い・バラエティーの視聴
    YouTubeでは、お笑いやバラエティーを視聴する。がっつりコンテンツ視聴に近いが、ややライトな視聴形態の可能性
  3. 自宅で夕食前後や就寝前に視聴
    夕食前後や就寝前などの隙間時間にYouTubeを視聴する。利用シーンは[自宅]での視聴が多く、父母と同居しているケースもあるため、同居家族がいる中での個人的なメディアとしてYouTubeを活用している可能性
  4. ゲーム実況の視聴
    ゲームの実況をYouTubeで視聴する。YouTubeの利用シーンに関する質問の自由回答欄には「実況」(ほぼ「ゲーム実況」のこと)という単語が多くみられる。[動画]とはYouTubeの代替となる他の動画サービスのことで、ニコニコ動画を指すことが多い
  5. 料理・ファッションなどのHow Toものの視聴
    料理やファッションなど動画で説明しやすいHowToものをYouTubeで視聴する
 今回の軸には入れませんでしたが、人気YouTuberの動画視聴が「HowToもの」と「がっつりコンテンツ」の間に位置しています。これは人気YouTuberの「やってみた」のようなコンテンツが両方の要素を持つものとして受け入れられているからかもしれません。
YouTubeの強みは「豊富」「無料」「気軽」
 YouTubeが多くの人に使われているのは、このように様々な用途に応えられることが理由だと考えられます。では、それぞれの用途でなぜYouTube が選ばれるのでしょうか。調査ではYouTubeが優れている点を自由回答で聞きました。(表1)
表1.他サービスと比べたYouTubeの優れている点。特徴単語ランキング
順位 単語
1 豊富
2 コンテンツ
3 無料
4 動画
5 知る
6 再生
7
8 気軽
9 選べる
10 放送
ここで浮かび上がるのは、
  • 豊富なコンテンツ
  • 無料
  • 動画であること
  • 気軽さ
といった強みであり、これが多くの人がYouTubeを様々な用途で選び続けている理由となっていることが伺えます。
YouTubeの弱みは?
 では、YouTubeに弱みはあるのでしょうか?YouTubeを利用してはいるが、必要とはあまり感じていない(そもそもニーズが弱い、もしくは他のサービスでも構わない)回答者は動画サービスの視聴シーンやコンテンツ、属性などにどのような特徴があるのか、同じようにCrossMappingで分析してみましょう。(図4)
図4.YouTubeあまり必要でない人の特徴マップ(CrossMapping)
c6903_CrossMapping_04.png
こちらも大きく5つの軸が見つかりました。右上から時計回りに見ていきます。
  1. 話題の動画、曲、アーティストの視聴
    ネットで話題になっている動画や曲、アーティストのパフォーマンスなどを視聴する。また、見たいものは(見つからなければ)調べて視聴する
  2. 子供との視聴
    子供がせがんだ時に視聴する。視聴するコンテンツはアニメ、音楽、お笑い、踊っている動画、電車、人気YouTuberなど幅広い
  3. 45歳以上
    45歳以上はYouTubeの必要性が低下する
  4. Notスマホ派や既婚女性
    ガラケーユーザーや既婚女性はYouTubeの必要性がやや低い。テレビが代替となっている可能性が高い
  5. 好きな音楽を聴く
    好きな音楽を視聴する。YouTubeがなければ、検索で他の動画サービスを探して聴いたり、CDやラジオなどを聴いたりしている
 こう見ると、YouTubeの“弱点”は5)の「音楽視聴」や2)の「子供との視聴」あたりにありそうです。昨年11月14日に国内で始まったYouTubeの音楽サービス「YouTube Music *2」は、この「音楽視聴」に対応したサービスと言えそうです。
CrossMappingについて
 今回はYouTubeの必要者と非必要者を分けられそうな軸を、CrossMappingという日経リサーチ独自のデータ&テキストマイニング手法で可視化し、分析してみました。企業のマーケッターはマーケティングに際し、顧客や潜在顧客をどのような軸で考えれば良いか悩むことは多いと思います。性別や年代、地域、職業等、個人のデモグラフィック属性で考えるのが一般的ですが、実際には、利用シーンや得られるベネフィット、その人が置かれている環境、その人の価値観、得ている情報の違い、スキルセットなど、様々な要因によって購買行動や利用行動は変わってきます。CrossMappingは知りたい人の特徴を、自由回答を含む全ての回答結果の中から自動で抽出し、マッピングします。そのため「何が競争の軸となりうるのか」を先入観無しに探ることができ、顧客や潜在顧客の理解にお役立ていただけます。


*1 「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」より
*2 https://japan.googleblog.com/2018/11/youtube-music.html
(ソリューション本部データサイエンス部 チーフ・データサイエンティスト 佐藤邦弘)
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