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「低体温の日本」浮き彫りに~グローバルビジネスパーソン調査

C6935_nishiyama 働き方改革が経営課題となるなど、「働くこと」への関心が日本でかつてなく高まっている。世界の中で日本のビジネスパーソンの意識はどう位置づけられるのか、海外のビジネスパーソンは働くことをどうとらえているのか――。日経リサーチは日本を含めたアジア、欧米の計13カ国に住む20~59歳のフルタイム勤務の男女を対象に、働く意識を問うインターネット調査を実施した。浮き彫りになったのは、リーダー志向の弱さなど日本のビジネスパーソンの「体温」の低さだった。

 対象国は日本、中国、フィリピン、インド、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ、米国、英国、ドイツ、フランス、メキシコの13カ国。各国約1000サンプルを回収。2018年10月に実施した。

働き方改革に一定の成果

 日経リサーチは今回の調査に先立ち、2016年に日本のビジネスパーソンを対象に意識調査を実施した。今回の調査と比べると、「職場では残業することが当たり前の風土がある」と答えた人は10ポイント以上減少した。残業という側面だけを見ると、働き方改革には一定の成果が見られるとも読める。

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 今回の調査では、「働きがい」について各国ビジネスパーソンに聞いた。日経リサーチが考える「働きがい」とは、働く人が積極的に組織にかかわり、仕事を通じて達成感や成長感を得られ、社会に役立っているという意識を持てる状態を意味する。働きがいを感じることで、人は職場や会社により深くかかわり、組織の生産性や創造的な活動にも積極的な態度をとるようになると考えている。
 今回の調査で、「現在の勤務先は自分にとって働きがいのある会社である」との質問に、「そう思う」と答えた人の割合を国別に見てみる(図2)。

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 「働きがいがある」と答えた人は、9割を超えるメキシコ、タイを筆頭にアジア諸国は8割程度、欧米諸国は7割程度に達した。一方、日本は44%と、他国に比べると低水準にとどまっている。これには上下関係を重視する日本の企業文化や若者の職業意識の変化など、さまざまな要因が考えられる。この割合は2年前と比べると7ポイント上昇し、特に30代や非管理職層では10ポイント以上も高まっているが、それでも他国に比べて依然低い。組織の活性化は引き続き日本企業にとって大きな課題だ。

上司とのコミュニケーション不足が課題

 上司との関係は働きがいに大きな影響を与える。図3は「上司とのコミュニケーションが良好である」と思うと答えた人の割合を示した。日本は他国に比べて、上司とのコミュニケーションに課題をもつ職場が多いことがわかる。

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 一方、日本が抜きん出て高かったのが「職場で、セクハラやパワハラが行われているのを見た・聞いた」(図4)と答えた人の割合だ。これらの結果を見ると、コミュニケーション不足がハラスメントの温床になっている面があるかもしれない。

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リーダー志向弱い日本のビジネスパーソン

 社員の働きがいを高め、ハラスメントが起きにくい職場環境をつくる――。そのためには、部下を束ね、常に環境の変化に対応しながら組織を引っ張るリーダーシップが欠かせない。しかし残念ながら、図5のとおり、諸外国と比べて日本はリーダー志向がひときわ弱い。「組織のリーダーを目指している」と答えた人はアジア諸国で6~7割、欧米では最も低いフランスでも3割を超えるのに、日本は2割弱にとどまっている。日本人は消極的回答や曖昧な態度を見せがちだと言われるが、そうした国民性を考慮したとしても低いと言わざるを得ない。このような状態で、日本企業は士気の高い将来のリーダー候補を豊富に抱える外国企業と戦っていかなければならないのである。

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 では、企業の将来を担う20代はどのような仕事や働き方を理想としているのか(図6)。日本は「自分にあった仕事内容」「休日の多さ」「職場の雰囲気」がトップ3に挙がった。一方、米国や英国で上位に挙がる「技術が身につく」や「昇給・昇格の早さ」「上司との関係性」などのスコアは低い。同じ20代でも、リーダーを志向しているとの回答者に絞ってみると、「昇給・昇格の早さ」や「成長できる仕事」「上司との関係性」の重視度が高まる。ただ、ここでも「休日の多さ」を希望する回答は米英を上回っており、リーダー志向の有無に関わらず、日本の20代に共通する価値観と言えるだろう

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 日本は女性のリーダー志向がきわめて低いのも特徴だ。今回の調査でも、「組織のリーダーを目指している」と答えた女性は1割にも満たなかった(図7)。米国でも男女差が大きいが、それでも5割に上った。日本政府は2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする目標を掲げているが、達成は難しそうだ。

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 今回の調査を通じて、日本のビジネスパーソンの仕事に対する「熱の低さ」が浮き彫りになった。企業の経営層やミドル層は現実を踏まえたうえで、組織の活力を高めていくような知恵が発揮できるかが問われることになる。
 経済のグローバル化は避けて通れず、労働力不足から外国人に頼らざるを得ない場面も増えてくるだろう。日本企業は今まで以上に、グローバルを意識した働き方が求められる。日本人自身だけでなく、様々な国のビジネスパーソンの意識を知る重要性は高まっている。(国際調査本部 西山知見)

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