株式会社日経リサーチ

日本流からグローバル標準へ
「人財マネジメント戦略」を大転換

【連載】日経「スマートワーク経営」調査2018 分析と先進事例(6)
 企業の持続的発展には、最も重要な経営資源である従業員の能力を最大限に活用することが欠かせません。5回目は人材育成を目的とした企業研修のトレンドを人材開発大手、株式会社セルム(http://www.celm.co.jp/)の執行役員 安池智之氏に見解を伺うとともに、人材投資を積極的に行っている先進企業の事例を紹介いただきます。さらに、6~7回目では日経「スマートワーク経営」調査2018で実施した従業員調査にご協力いただいた企業が取り組む人材活用策の具体例をご紹介します。
smartwork経営 5つ星
日立製作所

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エンゲージメント
 デジタル技術によって新たな価値を創造する「社会イノベーション事業」のグローバル展開を加速する日立製作所。売上高に占める海外比率は2017年度には50%を突破。30万人を超えるグループ総従業員に占める海外人員の割合も50%に近づき、20年前の2.5倍に。この劇的な経営変革(トランスフォーメーション)を支える新しい人事・人財活用の仕組みとして構築中なのが、情報技術(IT)を活用した「グローバル人財マネジメント統合プラットフォーム」だ。事業部門、グループ会社、国・地域の垣根を越えた全グループ共通の人財データベースを整えて多様な能力・スキルを見える化。効率的で質の高いマネジメント体制を確立すると同時に、社員1人ひとりの能力を最大限に引き出し、最適な人財配置を実現することを目指している。

基本人事情報をデータベース化
 「当社は100年以上の歴史がありますが、直近の20年で事業のポートフォリオ、人のポートフォリオを大きく変えてきました。事業領域が国内中心から海外へ広がっただけでなく、ビジネスモデルも顧客の注文に従って製品を納めるプロダクトアウト型から、自律的に社会ニーズを探り、人工知能(AI)、ビッグデータといったデジタル技術を駆使して最適ソリューションを提案する形に転換しています。ところが、人事制度・施策は旧来の日本型人事の仕組みが温存されていました。このままではグローバル化や働き方改革など喫緊の課題に対応できない。そんな危機感から、この取り組みはスタートしたんです」
 人財統括本部グローバル人財戦略推進部の舘田清志部長代理は、新たな仕組みづくりの背景をこう説明する。これまでは日本人の男性社員を中心とする同質集団を前提に、グループ会社がそれぞれ独自の人事制度・施策を構築してきた。そのため、人事データの管理から評価の仕組み、教育・研修に至るまで、やり方は全くバラバラだったのだ。
 そこで2012年度、当時の中西宏明社長(現会長、経団連会長)の指揮下で本格的に動き出したのが「グローバル人財マネジメント」の仕組みづくりだ。最大の眼目は、“One Hitachi”の理念の下、「グループ、グローバル共通の人財プラットフォーム」を確立すること。いわば、ITを活用した“人の見える化”だ。
 最初に行ったのが「人財データベース」の構築。全世界約30万人以上いる社員の内、現場作業員などを除く約25万人について、氏名、所属、職種、ポジションといった基本情報をデータベース化した。それまでは各社各様の仕様・システムで管理され、なかにはまだ紙ベースで管理されていたものもあったという。これによって、ようやくグループ共通の“人財バンク”が機能するようになった。
25万人の人事情報を集約
2018年10月2日にシンガポールで開催したHitachi Women’s Summitの様子
 こうした基礎工事を踏まえて、2018年1月から本格稼働したのが、米国Workday社のクラウドサービスを利用した「グローバル人財マネジメント統合プラットフォーム」だ。先行して整備した基本人事情報に加えて、社員1人ひとりの職歴、実績、専門分野、スキル、資格、キャリア志向といったより詳細な情報を網羅する。日立では2019年度からの中期経営計画が完了する2021年度までに一部の現場作業員などを除く約25万人のデータベース化を完了する計画だ。
 集約した情報のうち、評価や報酬情報等については経営者、管理職、HRにアクセス権を制限しているが、職歴、スキルなど各社員の“タレント情報”については誰でも、いつでも、どこからでもPCやスマホから閲覧・検索できる。ユニークなのは、それらタレント情報に関して、本人が自由に記載できるようにしていること。例えば、社外で発表した研究論文なども、条件を満たせば直接リンクを張ることができるそうだ。
社員同士が人財情報を共有
 では、これをどのように活用するのか。グローバル規模での最適な人員配置、マネジャー・一般社員の教育・育成といったマネジメントツールとしての活用は第1ステップに過ぎない。日立が目指す最終ゴールは「従業員同士で人財情報を共有し、新しい価値の協創を加速する」ことにある。
 例えば、課題を抱えている社員が、当該分野で実績やスキルのある専門人財を探し出し、一度も会ったことのない相手にもダイレクトに相談したり、知恵を借りたりすることができるのだ。本格運用開始から日が浅いので、まだ華々しい成果は上がっていないが、舘田氏は全社員に向けて「もっと自由に、積極的に活用してほしい」と呼び掛けている。
会社概要 つまり、これは単なる人事管理用プラットフォームなのではなく、“日立版オープン・イノベーション・プラットフォーム”の機能を併せ持っているのである。グループ内限定とはいえ、全世界に連結対象子会社879社、約30万7000人を有する超巨大企業集団だ。まだまだ活用し切れていない知財、知見・ノウハウ、専門技能といった隠れた人財リソースがあるはず。これをいかに有機的、自律的に結びつけ、社会イノベーションの芽を数多く 育てることができるか。「グローバル人財マネジメント統合 デジタル技術によって新たな価値を創造する「社会イノベーション事業」のグローバル展開を加速する日立製作 プラットフォーム」の真価が問われるのはこれからだ。

 
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