株式会社日経リサーチ

テクノロジーの活用で業務の効率化と残業時間削減を実現

【連載】日経「スマートワーク経営」調査2018 分析と先進事例(1)
 日経「スマートワーク経営」調査2018では、生産性向上や在宅勤務など柔軟な働き方の実現に不可欠となっているテクノロジーに着目。1~4回目は人材活用におけるテクノロジーの導入状況を中心に、調査データの分析結果、特徴的な取り組みをしている企業の事例などを紹介します。
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 人材活用において、テクノロジーの導入は様々な効果が期待できる。2018年調査では、半数以上の企業が「業務の効率化」を目的にあげた。テクノロジーの導入による業務効率化の代理指標として年間平均総実労働時間の増減を置き、導入したテクノロジーとの関係を見ると、第1段階でインフラ整備、第2段階で社内のワークスタイル変革や定型業務の効率化および人事データの活用、第3段階で場所の柔軟な働き方やホワイトカラーの業務効率化、という順でテクノロジーの導入が労働時間の減少に寄与していることがわかった。
1.テクノロジーの導入状況
1.1 人材活用に関するテクノロジーの導入・活用

従業員や組織のパフォーマンス向上のために導入しているテクノロジー
従業員や組織のパフォーマンス向上のために導入しているテクノロジー

 導入率の高いテクノロジーの上位3つは、「テレビ会議システム」(76.2%)、「eラーニング」(70.3%)、「社内無線LAN」(68.0%)。「テレビ会議システム」「社内無線LAN」はインフラとしての整備が進んでいる。従業員教育での「eラーニング」活用も7割を超えた。
 「AI(深層学習中心)」(9.2%)、「AI(機械学習中心)」(17.3%)も比率は低いながら人材活用に取り入れ始められている。
1.2 業種別テクノロジーの導入状況
従業員や組織のパフォーマンス向上のために導入しているテクノロジー
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 テクノロジーの導入は製造業の方が非製造業よりも全体的に進んでいる。導入率の高い「テレビ会議システム」「eラーニング」「社内無線LAN」のほか、人事情報に関する「従業員意識調査ツール」「タレントマネジメントシステム」で非製造業の導入率を10ポイント以上上回った。製造業では1拠点あたりの従業員数が多いため「テレビ会議システム」などのインフラ投資の効果が高い。また、正社員が多く勤続年数も長いため、人事情報の活用にテクノロジーの導入が効果的である。
 非製造業では「AI」「チャットボット等による自動対応」などの導入率が製造業より高い。調査の回答でも、コールセンターなど消費者との接点で業務の自動化とサービス向上の両立に活用している例が多く挙がった。
 製造業では、電気・精密・機械、食品、化学・石油でテクノロジーの導入が進んでいる。非製造業は全般的に導入率が低いが、金融は調査で聞いた26のうち22のテクノロジーで全業種平均を上回っている。
1.3 最も先端的なテクノロジーの活用と、最も効果が出ているテクノロジーの活用
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 調査では最も先端的なテクノロジーの活用と、最も効果が出ているテクノロジーについて、それぞれ導入の目的と導入したテクノロジーを聞いた。
 導入目的のトップはいずれも「業務の効率化」で50%前後、「場所によらない柔軟な働き方の実現」が20%前後で続く。差がついた項目をみると、先端的なテクノロジーの導入目的として高かったのは「業務の付加価値向上」(17.0%)で、テクノロジーを事業価値の向上にも役立てたいという期待が浮かび上がる。一方、「拠点間等の遠隔コミュニケーションの円滑化」は出張・移動時間の削減など効果を測定しやすいこともあり、効果の出た事例としてとらえられているようだ。
 先端的なテクノロジーの活用では、「RPAによる定型業務の自動化」(14.9%)が最も多く、「タブレット端末」(12.8%)が続いた。RPAは主に事務職向け、タブレット端末は主に外勤職向けと、導入シーンは異なるが、それぞれ近年導入が急速に進んでいる。導入の有無では相対的に比率が低かった「AI(深層学習中心)」や「AI(機械学習中心)」も先進事例として多く挙がった。
 効果が出ているテクノロジーとして最も多く挙げられたのは、「テレビ会議システム」(20.7%)で、「タブレット端末」(13.1%)、「ビジネスチャットツール」(11.5%)が続いた。これらが従業員のコミュニケーションの円滑化や高度化に役立ち、組織のパフォーマンス向上につながっていることがわかる。
1.4 導入目的×導入テクノロジー
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 上表は調査回答企業がテクノロジーを導入した目的を上欄に、具体的なシステム・手法を左欄に置いたクロス集計表である。「業務の効率化」や「業務の付加価値向上」という目的では、「タブレット端末」や「テレビ会議システム」が多く挙がったほか、「RPA」や「AI(機械学習中心)」といったICTツールの導入比率も高かった。これらのツールがコミュニケーションだけでなく、業務の質の向上にもつながっていることが分かる。
 「ビジネスチャットツール」は「従業員間コミュニケーションの円滑化」だけでなく、「場所の柔軟な働き方の実現」「遠隔コミュニケーションの円滑化」を目的にした導入率が高い。コミュニケーション手段の多様化が、働く場所の制約の解消にも役立っているようだ。
 「人材の最適な配置」のために導入したテクノロジーとしては「RPA」(38.6%)が多く挙がった。具体的には「定型業務を自動化することによって省力化できた人材を非定型業務に再配置する」といった回答が多かった。
2.テクノロジーの導入と労働時間
2.1 年間平均総実労働時間の増減
 テクノロジーの導入による業務効率化の代理指標として、「2017年度における年間平均総実労働時間の減少時間」を以下の様に定義した。
年間平均総実労働時間の減少時間の様に定義
 2017年度の労働時間が、2015年度と2016年度の2年間の平均時間から、何時間減少したかというものである。この指標(時間)がマイナスの場合は、2017年に労働時間は増加したということになる。平均では11時間の減少であった。

 労働時間減少指標に対するテクノロジーの導入の影響を確認するために、分析可能な436社を減少時間の大小順で109社ずつ均等に4グループに分類。第1群は時間が増加した企業群で、平均47.8時間増加した。第2群は増加した企業と減少した企業が混在し、平均0.7時間減少。第4群がもっとも減少した企業群である。
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2.2 導入しているテクノロジーと労働時間の増減
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 「労働時間減少」の大小で分類した企業群の分離に寄与しているテクノロジーを明らかにするため、4グループの企業群に対して、導入しているテクノロジー(26種)を説明変数とする正準判別分析を適用した。この分析モデルは、複数のグループの違いを、いくつかの変数を合成して判別する変量(これを正準判別変量という)を算出する方法で、グループがどの程度の精度で判別できるかを予測できる。また判別(差別化)に影響を与えている要因(ここではテクノロジー)を明らかにする分析に有効である。分析結果で得た最初の2つの正準判別変量を縦軸と横軸とし、各群の重心をプロットした。これにより平面上で4グループの位置関係も可視化することができる。
 横軸は第1正準判別変量で、各群がもっとも遠くに離れるように基準を決めてはじき出した数値である。この値で位置づけると、各群の違い(判別)が最大化されることを示している。値の大きい右象限から左に向かう順に、第4群→第1群が配置されている。原点を中心に横軸でみると、「第4群」と「その他の3群」に大きく分かれた。
 縦軸は第2正準変量で、第1正準変量とは無相関であるという前提条件を制約したうえで、つまり第1正準変量とは異なる情報をもとに、各群がもっとも遠く離れるような基準を決めてはじき出した数値である。上方(プラス)に第2と第3群、下方(マイナス)に第1群を分離する軸になっている。労働時間が増加した第1群と、労働時間はほぼ横ばいか小幅減となった第2・第3群とを大きく分ける軸である。
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 正準判別変量が個々のテクノロジーとどのような関係にあるかをみることで、より具体的な解釈ができる。表中の数字は正準判別変量とテクノロジーとの相関係数(の百倍した値)で、絶対値が大きいほど正準判別変量との関係が強い。この関係を総合して縦軸と横軸の解釈をする。
 第1正準判別変量に強く関係しているのは「チャットボット等による自動対応」「ビジネスチャットツール」などコミュニケーションに関する先端的テクノロジー。「AI(深層学習中心)(機械学習中心)」の活用も高い。調査でも、「社員からの問い合せに自ら答えを探し出し自動対応するAIを活用したチャットボットを導入し、問い合せを行う社員、問い合せへの対応を行うシステム部門担当者双方の業務効率化につながっている」などの回答が見られた。
 「シンクライアント・リモートデスクトップ」「クラウドでのファイル共有」など、テレワークや外出先での作業など柔軟な働き方をサポートするテクノロジーとの関係も強い。「テレビ会議システム」「タブレット端末」は柔軟な働き方に効果的であると認識されているテクノロジーであるが、多くの企業が導入しているために、差異を示すテクノロジーとしては挙がっていない。
 第2正準変量は、労働時間がほぼ横ばいか小幅減となった企業群と、増加させた企業群との差異である。人事関連のテクノロジーと多く関連している。「人事データの詳細分類化、一元化」「タレントマネジメントシステム」のほか、「人事データ分析結果の可視化」「人事データ分析の高度化」とも関係が強い。また、「フリーアドレス」「ペーパーレス化」など、社内での柔軟な働き方、新しい働き方を実現するテクノロジーも労働時間削減に寄与していることが分かった。
(取締役 鈴木督久、編集企画部 原直輝)
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