株式会社日経リサーチ

人材活用に関するKPIの活用と労働生産性

【連載】日経「スマートワーク経営」調査2018 分析と先進事例(8)
 日経「スマートワーク経営」調査の回答企業は、人材活用に関する施策導入の成否を測る指標として、どんなKPIを活用しているのか。また、KPIの活用をどのように生産性の向上につなげているのか。KPIと生産性に関する調査結果と、独自の指数で人材活用に取り組む企業の事例を紹介します。
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 働き方改革が浸透・定着してきたが、その推進には自社の事業や組織風土とマッチしたKPIの設定・活用が重要だ。日経「スマートワーク経営」調査(以下、SW調査)2017に回答した人事担当者からの「何をKPIにすべきか悩んでいる」という声を受け、SW調査2018では人材活用に関するKPIについて詳しく質問した。最も多くの企業がKPIに設定しているのは「女性の登用」に関してだった。更に、労働生産性と合わせて分析したところ、「女性の登用」に関するKPIの設定の有無で、労働生産性に大きな違いがあることがわかった。
人材活用に関するKPIの設定状況
人材活用に関するKPIの設定状況
 人材活用に関するKPIの設定状況を見ると、「女性の登用」に関してが唯一6割を超え、「休暇取得」「労働時間や残業時間」に関するKPIも半数前後の企業が設定している。一方、「社内のコミュニケーション」「社員のモチベーション」をKPIにしている企業は2割に満たない。
 政府は2020年に女性管理職比率を30%まで高める目標を掲げているが、SW調査で2017年度末の課長相当職以上(ライン職)の女性比率の平均は5.7%にとどまり、30%以上という回答は1.4%にすぎない。また、4月に施行された働き方改革法では、年次有給休暇の最低5日の取得や残業時間の年720時間、月100時間の上限規制が適用された。もはや企業にとって避けて通れない状況だ。
 SW調査の総合評価★4.5(偏差値65)以上の44社では、「女性の登用」は93.2%、最も少ない「社内のコミュニケーション」でも47.7%と、多面的にKPIを設定している。全体と比べて最も差が大きいのは「社員のモチベーション」で、★4.5以上の企業は全体を42.2ポイント上回る59.1%が設定している。
人材活用に関するKPIの具体的内容
人材活用に関するKPIの具体的内容
 KPIの具体的な内容を見ると、前述した政府方針や新法への対応もあってか、「女性の登用」では女性管理職、「休暇取得」では有給休暇取得、「労働時間や残業時間」では残業・時間外時間に回答が集まったが、女性管理職を継続的に増やすには、その手前の階層から増やさなければならなず、係長や管理職候補者という単語を含む回答も一定数含むなど、それぞれ特徴的な回答もみられる。
 以下、回答がばらけた項目について、特徴を簡単に紹介する。

【多様な人材の活用】
 障がい者雇用に関するKPIを設定している企業が最も多かった。障がい者の法定雇用率は2.2%だが、SW調査では実績がこれを上回ると回答した企業が4割あった。KPIとして挙げた60社では、2.2~2.3%を目標値とする企業が多いが、2.5%以上も14社あった。女性活躍では22社が新卒採用者数を挙げたが、そもそも女性を多く採用している企業はKPIとして設定しないためか、50%以上を目標値とするのは5社に留まり、30~40%程度を目標値とする企業が多かった。
【人材の育成】
 研修・教育では受講者数をKPIとする企業が多いが、1人あたりの時間や研修費をKPIとする企業もあった。業務に必要となるスキルの特定資格・社内認定、英語のスキルなどを持ったグローバル人材という回答も各20社弱ずつあった。
【社員のモチベーション】
 ほとんどの企業が従業員意識調査による働きがい・エンゲージメントなどをKPIとしていると回答した。SW調査では従業員意識調査は63.5%が実施していると回答。年1回以上定期的に実施している企業も37.8%あった。
【社内のコミュニケーション】
 定番となっているKPIはないようだ。従業員意識調査によるコミュニケーションに関する項目、イベントの実施回数やイベント・サークルへの参加率、社内SNSの投稿数や0utlookの顔認証登録率などITツールの利用、経営層との対話、上司との面談、従業員同士のコミュニケーションの場の提供など、各社様々なKPIを設定している。
人材活用に関するKPIの設定と労働生産性
人材活用に関するKPIの設定と労働生産性
 このような人材活用に関するKPIの設定は、労働生産性と関係があるのだろうか。

 まず、以下の定義に基づき1時間あたりの労働生産性を算出した。
労働生産性=付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働時間

 データが揃った453社の労働生産性は平均7,416円/人時。人材活用に関する8項目のうち6項目で、KPIを設定している企業の労働生産性が設定していない企業を上回った。中でも、「社員のモチベーション」と「多様な人材の活用」は設定している企業の労働生産性が8,000円を超えた。
 KPI設定企業と非設定企業の差は「女性の登用」が最も大きく、1,889円だった。設定していない企業の平均金額が低いことが要因だ。「女性の登用」をKPIに設定している企業の労働生産性は7,858円で、8項目中4位だが、非設定企業の労働生産性は8項目中最低の5,969円だった。KPI設定企業の労働生産性が高い「社員のモチベーション」と「多様な人材の活用」でも1,000円以上差が開いた。
 もちろん、何でもKPIを設定すればいいわけではない。自社の事業や組織風土にあったKPIの設定と運用が大切である。まずは他社に差をつけられないよう、「女性の登用」「休暇取得」「労働時間や残業時間」など基本的な項目でKPIを設定・運用したうえで、「社員のモチベーション」「多様な人材の活用」などのKPIで高い労働生産性を目指すのが良いだろう。
労働時間と1人当たり営業利益
労働時間と一人当たり営業利益 ここで、半数以上の企業がKPIとして設定している労働時間を例に、実績(労働時間の増減)と成果(1人当たり営業利益)の関係を見てみよう。上の図は2015年度の数値と比較した2017年度の実績をプラスとマイナスで4つに分類したものだ。労働時間を減らしながら1人当たり営業利益を増やすという、働き方改革の目指す労働生産性の向上を実現したといえる層(右上)が最も多かった。これはただ残業時間を減らすだけでなく、従業員の能力を最大限に活用するためのテクノロジーなども同時に導入し、KPIを活用しつつ、PDCAを回す施策の運用が効果を生んだ結果と考えて良いだろう。

 
Smart Workと労働生産性
労働生産性(1時間当たり) これまで、人材活用に関する施策と労働生産性の関係を見てきたが、最後に、生産性など組織のパフォーマンスを最大化させることを目指す経営戦略として日経グループが提案している「Smart Work」のコンセプトが実際に機能しているか、SW調査の総合評価と労働生産性の関係で確認した。★4.5(偏差値65以上)以上の企業の労働生産性は8,679円で、★4(偏差値65未満)以下の企業を1,369円上回る。1日8時間労働とすると、1万円を超える差となった。人材活用、イノベーション、市場開拓を循環させるスマートワーク経営を通じた生産性の向上に期待したい。
 
(スマートワークプロジェクト 佐俣桂子)
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