株式会社日経リサーチ

ミレニアル世代でも利用率は30%
QR決済サービス普及のカギをCrossMappingで探る

福本博之 セブン&アイ・ホールディングスの大失態というネガティブなニュースがきっかけではありましたが、ここへきてキャッシュレス決済への注目が一気に高まった感があります。当社も7~8月にかけて、「自主調査レポート キャッシュレス決済は日本に浸透するのか?」と題するコラムと、金融総合定点調査「金融RADAR」特別調査2019のリリースに関連した電子マネー決済に関するレポートを、ホームページに相次いで掲載しました。
 そこで、今回はこれまでとは別の角度から、キャッシュレス決済をより深く分析してみます。分析には日経リサーチ独自の手法CrossMappingを用いました。今回調査対象としたのは、デジタルネイティブでキャッシュレス化と相性が良いと思われる20~39歳のいわゆるミレニアル世代です。そして、キャッシュレス決済の中でも、「7pay」問題で関心を集め、今後の普及が期待されるQRコード*1を利用した決済サービス*2(以下、QR決済サービス)にフォーカスし、ミレニアル世代の利用状況と利用者らの傾向を分析し、普及のカギを探ります。

 調査は日経リサーチが保有するアクセスパネルを対象にインターネットで実施し、回答を寄せた7,884人の中から、ミレニアル世代1,372人の回答を抽出し、分析しました。
ミレニアル世代のQR決済利用者は30%程度
 まず、ミレニアル世代のQR決済サービス利用の現状を見てみましょう。 本調査で聴取した国内の代表的なQR決済サービスのうち、いずれか1つでも「1. 週に1回以上使っている」~「3. 年に数回程度使っている」と回答した人をQR決済サービスの「(いずれか)利用者」、いずれのQR決済サービスも「4. 年に1回未満しか使っていない」~「6. 登録・所有していない」と回答した人を「(いずれも)非利用者」と定義してまとめたところ、日常的にQR決済サービスを利用している人は、ミレニアル世代といえどもいまだ30%程度しかいないことが分かりました。(図1)。
図1. QR決済利用者・非利用者の構成(N=1,372)
QR決済利用者・非利用者の構成
※有回答者絞り
3大Payの保有率は20%超
 続いて、個別のサービスごとの利用頻度を見てみましょう(表1)。
表1. キャッシュレス決済サービスの利用頻度(N=1,372)
キャッシュレス決済サービスの利用頻度
※有回答者絞り ※登録・保有数で降順にソート
 赤枠で囲った「LINE Pay」「楽天Pay」「PayPay」の“3大Pay”はいずれも登録・所有者が20%程度、年に数回以上の利用者が13~14%程度にとどまっています。さらに、その他のQR決済サービスの利用者は1割以下がほとんどで、多くの利用者の獲得には至っていない現状がうかがえます。
 これらの結果を踏まえ、QR決済サービスの利用者と非利用者、それぞれの特徴を深掘りしていきます。
QR決済サービス利用者の特徴
 まず、QR決済サービスを利用している人(以下、QR決済利用者)の特徴から見てみましょう。
 QR決済利用者の回答を、それ以外の人と比較して、その傾向をランキングにしました(表2)。
表2. QR決済サービス利用者の特徴ランキング(上位10項目)

※QR決済サービス利用者の自由回答において登場した単語
 「ポイント」や「還元」、「キャンペーン」といった、サービス提供会社が前面に押し出しているメリットに惹かれている様子が見て取れます。また、「Google Home」や「ビットコイン」、「Eight(名刺DBサービス)」といった、先端的なサービスやツールを率先して取り入れているユーザーが多いことも分かります。

 次に、上位30位までに含まれた特徴を、CrossMappingで分析してみます。CrossMappingを使えば、類似した特徴を持つ項目を、自由記述も含めて同一方向にまとめることによって、QR決済利用者がどのような軸を持っているのかを明らかにすることができます(図2)。
図2. QR決済利用者の特徴マップ
 末尾にアスタリスク(*)がついている項目は、QR決済利用者の自由回答に登場した単語を示しています。図2から、QR決済利用者は6つの軸に分けることができます。それぞれの軸がどのような集まりなのか、左上の「バーチャル先端」から時計回りに見ていきましょう。
 
  1. バーチャル先端
    -先端的なツールやサービスの中でも、バーチャルな体験を好む
    -e.g.) AmazonEcho、NewsPicks、クラウドファンディング
  2. リアル先端
    -先端的なツールやサービスの中でも、リアルな体験を伴うものを利用する
    -利便性の向上を重視する
    -e.g.) Airbnb、JapanTaxi、Eight
  3. 日用品ネット購入
    -ネットで日用品を購入する
    -e.g.) 【楽天市場】日用品、【メルカリ】日用品、【Yahoo!ショッピング】日用品
  4. 娯楽品ネット購入
    -キャンペーンを利用して、ネットで娯楽品を購入する
    -e.g.) 【メルカリ】本・雑誌・DVD・BD・ゲーム、【Yahoo!ショッピング】ダウンロードコンテンツ
  5. 現金代替
    -ネットではなく、実店舗でQR決済サービスを利用する
    -ポイント還元や、現金・小銭を使わなくて済むことにメリットを感じている
    -利用可能な店舗が増えることを期待している
    -e.g.) 【利用・非利用理由】ポイント、還元、【期待点】増える
  6. メルカリ利用
    -先端的なサービスの中でも、敷居の低いメルカリをよく利用する
    -e.g.) メルカリ(購入)、メルカリ(出品)
 上記の結果から、QR決済サービスの利用者が享受しているメリットや感じている魅力が浮き彫りになりました。先端的なツールやサービスの利用を好む人にとっては、QR決済サービスも同様に魅力的なツールとして捉えられていることが分かります。また、インターネット上のショッピングを好むユーザーは、キャッシュバックやキャンペーンといったイベントによって利用が誘引されていることが見て取れます。一方、ネット上ではなく実店舗でQR決済サービスを利用している人は、ポイントの還元や現金を持ち歩かずに済むことに魅力を感じており、利用可能な店舗の拡大を求めている様子がうかがえました。
QR決済サービス非利用者の特徴
 一方、ミレニアム層の中でもいまだ多数を占めているQR決済サービスを普段使用していない人は、どのような障壁や問題点を感じているのでしょうか。まずは先ほどと同様に、非利用者の特徴的な回答を見ていきましょう(表3)。
表3. QR決済サービス非利用者の特徴ランキング(上位10項目)
QR決済サービス非利用者の特徴ランキング
※QR決済サービス非利用者の自由回答において登場した単語
 上位には「情報」「セキュリティー」「心配」といった、個人情報などのセキュリティー面に対する強い不安が見て取れます。また、携帯電話やスマートフォンを持っていない、働いていないなど、そもそもQR決済サービスの利用が難しい環境にある人も多いようです。

 続いて、QR決済非利用者を目的変数として、その特徴をどういった軸で分類できるのか、CrossMappingで分析しました(図3)。
図3. QR決済非利用者の特徴マップ
QR決済非利用者の特徴マップ
 ここでは5つの軸が見つかりました。左上の「安全性希求」の軸から、時計回りに見ていきましょう。
  1. 安全性希求
    -サービスの安全性が担保されているのかどうかに関心がある
    -e.g.) 【利用・非利用理由】悪用、安全
  2. プロセスが面倒
    -サービスの登録自体が面倒である
    -いちいちスマートフォンを取り出して店員に伝えることも面倒である
    -e.g.) 【利用・非利用理由】面倒
  3. セキュリティー不安
    -利用にあたってのセキュリティーや個人情報の取り扱いに不安を感じている
    -e.g.) 【利用・非利用理由】セキュリティー、情報、不安
  4. 利用困難
    -そもそもの環境的に、QR決済サービスの利用が難しい
    -e.g.) 【職業】無職、【家計管理者】自分以外
  5. ワンストップ化不安
    -携帯電話やスマートフォンを保有しておらず、スマホを利用したサービスそのものに対して不安がある
    -スマホのみを利用し、依存してしまうことに不安を抱いている
    -e.g.) 【利用・非利用理由】漏洩、流出
 この結果はQR決済非利用者を、モチベーションの観点からも分類できるかもしれません。まず、そもそも利用したいという意識が希薄な「プロセスが面倒」、興味関心はあるが不安がそれを上回っている「セキュリティー不安」や「安全性希求」「ワンストップ化不安」、そしてそもそも利用できる環境にない「利用困難」です。
QR決済サービスに求められているものとは?
 ここまで見てきた分析結果から、QR決済サービスをより浸透させていくには、利用環境と利用のモチベーション双方の底上げが不可欠であると言えそうです。例えば、「セキュリティー不安」や「安全性希求」の軸に該当する人は、2段階認証などのセキュリティーの確保や不正利用時の保証体制の整備などが進めば、サービスの利用に対する抵抗感はグッと少なくなるでしょう。QR決済利用者を対象とした分析でも、サービスに対応した店舗の拡充を求める回答が多く寄せられていました。いまだ発展途上にある日本のQR決済サービス業界では、いかにストレスなく安全にサービスを利用できる環境を整え、発信していくかが、喫緊の課題となるでしょう。
 一方、モチベーションが低い人に利用を促すことは、非常に困難です。日本では治安の良さや紙幣・硬貨の質の高さなどの要因から、キャッシュレス決済への移行に対するモチベーションが低い傾向にあります。「PayPay」や「メルペイ」など、大規模なキャンペーンを実施するサービスもありますが、継続的な利用に結び付くかはもうしばらく注視する必要があります。お隣の韓国では、クレジットカード利用者に対する所得控除や宝くじへの参加権付与によって、大幅にキャッシュレス化が進みました(経済産業省、2018 *3)。このように、モチベーションの底上げには個々のサービス提供会社だけでなく、国を挙げての取り組みが必要となりそうです。
CrossMappingについて
 今回はQR決済サービスの利用者・非利用者それぞれの特徴について、日経リサーチが独自に開発したCrossMappingという手法を用いて分析しました。自社のサービスや製品がどのような人に、どのような目的で使われているのか、多くの企業が興味をお持ちだと思います。CrossMappingは知りたい人の特徴を、自由回答も含めた様々な回答結果から自動で抽出し、マッピングすることによって、深い顧客理解を可能とします。
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*1 QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です
*2 スマートフォン等でQRコードを店頭で提示したり、店頭のQRコードを読み取ったりすることで支払いを行うサービス
*3 経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 (2018).
   https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf
(ソリューション本部デジタル・マーケティング部 福本博之)
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