株式会社日経リサーチ

日経電子版にまつわる
データと組織の話(後編)

ビッグデータ分析で得られたもの、日経リサーチに感じること
「日経電子版」のデータ戦略にまつわるお話を日本経済新聞社の山内秀樹氏に聞く前後編のインタビュー企画。前編はデータドリブンな組織へと日経電子版が変貌を遂げていく経緯をうかがった。後編は日経リサーチのデータアナリストを交えて、データ分析で大事にしていることや日経リサーチの仕事をどう見ているかなどを率直に語ってもらった。

 
日経リサーチの立ち位置をどんな風に考えていますか。
山内:我々は『これは絶対こうなるはずだ』という思い優先になってしまうところがあるのですが、そこを第三者として冷静に、読者の気持ちを代弁した数字で語ってくれるデータ分析の専門家ですね。我々事業者側が主張したい数字の限界を提示して、客観的に評価してくれるのは、我々にとってすごく価値があります。
遠藤:レポートを作っていると、良い数字を報告したい感情がどうしても生まれるので、油断しているとそっちに行ってしまうのですが、当社の名前が付いた数字を出す時は責任を持って、少なくともこの根拠があるから良いという最低限の比較は必ず担保できるようにして出しています。
データ分析の際にはどんなことに注意していますか。
遠藤:集計した数字を並べるだけでは電子版の施策担当者に活用してもらえないので、数字には必ず意味やメッセージを持たせて、何を知るための数字なのか必ず説明できるようにしています。
佐藤:数字と仮説でストーリーを作って分析に取り組むことです。数字の上げ下げで一喜一憂するのでなく、想定通りだったとしても本当かを油断しないで見ていくし、想定と違う結果が出た時はどうしてなのか、仮説の何が違ったのかをブレークダウンしていきます。
山内:日経リサーチは分析の際に、調査から得た視点が入っているのではないでしょうか。
佐藤:ユーザー調査は長くやっているし、クラスター分析で自由回答も読み込んできたので、電子版の読者の気持ちを常に思い描きながら取り組んでいるところはありますね。
山内:さまざまなセグメントに対して知見がちゃんとあるということですね。
佐藤:その知見があるから、行動データと読者セグメントが結び付いて解釈できるんです。限られた行動データでは理由は見えてこないので、読者の気持ちになることで、データの中から、KPIになりそうなものやKPIと連動して動く指標を探してみたりします。
山内:調べてもデータに表れないこと、例えば、電子版に来ていない、来なくなった読者の理由を推測する材料を日経リサーチは持っていて、来ている層、来ていない層は全体のマーケットの中でどういう人たちかを可視化することが得意なんですね。これは我々だけでは絶対できないことで、そこに一緒にやる意義があります。日経リサーチは調査などの手法を考えた切り口で、いつもうまく仮説を立てているなと思います。
佐藤:場合によっては、推理小説のように、5個ぐらい仮説を持って分析に入るのですが、全部外れて、また一から考えることもあります。結構泥臭い作業です。ただ、仮説の検証は外れた時こそ面白い知見があるので、深掘りをして、推理しています。
山内:当たり外れ以外の新しい知見を生み出す、分析を通じてこんな人たちが浮かび上がってくる、というのが次の一手につながるんでしょう。その積み重ねがデータによる改善につながるわけですね。日経リサーチにはデータの集め方とか、調査で何を確認するとか、次に広がる提案をしてもらっています。
遠藤:データから分かる範囲だと、ここが限界だということも結構言います。この先はテストしないと分からないとか、このデータを取れないと分からないとか。
日経電子版のビッグデータの分析を通じて感じたことはありますか。
佐藤:この規模のビッグデータになると、必ず裏に法則が潜んでいるので、その構造を解き明かすことで、読者の行動をある程度数式に落とせるのは面白いですね。十人十色ですが、何百万人もの読者の動きを全体として見ると、きれいな法則が裏に潜んでいるんです。
山内:データはメチャクチャ面白いですよね。これだけのデータになると、分析で色々なことが分かるし、今まで想像でしか分からなかったことがちゃんと定量化できるんです。
佐藤:定量化したら、分かった情報を実際に使ってもらえる形に絞り込んで、優先順位をつけて提供する。それで共感してもらえて、施策につながる。そこはやりがいがあります。
遠藤:データで物が言えるのは楽しいですね。現状を正しく認識してもらうには、整理された数字を見せないといけないのですが、例えば、プロモーション活動についてデータを整理して伝え続けてきたことで、数字に基づいた正しい認識を持ってもらえるようになりましたし、プロモーションの投下時期のメリハリが社内に浸透してきました。日々の数字に対する知見が年間のマーケティング方針に反映されていくのを見ると、自分の仕事を有意義に感じます。
日経リサーチは電子版に携わってどんなことを得ましたか。
佐藤:行動ログと、読者の行動をリアルタイムで担当者にフィードバックする価値についての知見が得られたことが大きいです。調査で聞かれても答えられない読者の無意識の行動などが行動ログから分かるので、この2つをうまく融合してより深く読者を知ることができるようになりました。
遠藤:日経新聞社の色々な部門の人に分析結果を説明する中で、相手の業務範囲や立場の文脈に沿った形で伝わり方を考えるようになりました。どうすれば自分の伝えたいことが理解を得られるかを考えるようになったのが、電子版を通じた一番大きな経験です。
山内:一緒にやっていく中でストーリーの重要性に気づいて、それが共通のキーワードになりましたね。ストーリーがないと伝わらないので、お互いにストーリーを意識しようと常に言っていました。
佐藤:ダッシュボードなどを作る時に、数字やグラフの配置をすごく考えるようになりました。数字を見る順番がストーリーに沿っていないと、利用者はどこを見ていいかわからなくなってしまいますから。
山内:分かる形にしてストーリーを組み立てて、だから何をすればいいのか自然と想像がつくようにすることが大事なんです。
佐藤:差が出る変数があっても、ビジネスのヒントになりそうなものはごく一部なので、当たればいいではなく、ビジネスに使える知見にまで落とし込むことが大切ですね。
山内:データを扱うエンジニアやアナリストがいればそれでできてしまうと思いがちですが、そこは人間が考えて態度変容を迫るというのがデータ分析をする人間の一番の大事なポイントですよね。納得感のある説明があって、それで次に何をしてみようかちゃんと浮かぶかどうか。
遠藤:『よく分からないけど当たる』ではダメ。使ってもらえません。
山内さんは日経リサーチをパートナーとしてどう評価しますか。
山内:最初の段階ではパートナーとして他社事例などの知見を入れてくれ、社内の説得も手伝ってくれ、具体的な指針も示してくれ、立ち上げをサポートしてくれたのが大きかったです。拡大期も専門家を配して、ストーリー立てを一緒にやってくれたので、展開しやすかった。また、日経リサーチが社内に向けて言ってくれたことが、第三者から客観的に見てもこうだ、という説得材料として生きた場面が多々あったのもありがたかったです。
データドリブンな組織が花開いてきましたが、率直な今の思いは。
山内:データを使えばビジネスや事業は必ず改善するはずだという気持ちがあったので、年数はあまり意識しませんでした。今やっと花開いてきましたが、そうでなくてもやり続けていたと思います。日経新聞社は膨大なデータを抱える情報商社だし、データで経済を支えるインフラでもありますので、我々がデータの価値を当然、証明していく必要があります。色々な情報を発信しながら、データ活用にも取り組んでいくというのは今後も止まらない流れだと感じています。全然進まない、苦しい時期もありましたが、その期間の試行錯誤が蓄積され、良い流れになってきました。日経リサーチには感謝しています。
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【略歴】
山内秀樹(やまうちひでき)
日本経済新聞社 編集局総合編集センター 部次長 兼 デジタル事業 デジタル編成ユニット部次長
2000年日本経済新聞社入社。主にデジタル分野でのメディア立ち上げや運営に従事し、2010年の電子版創刊からはデータマーケティングの中心人物として、日経電子版の会員基盤である「日経ID」の企画・開発に携わるとともに、顧客データの分析やデータドリブンの普及活動を推進。
メディアにおけるデータ活用やオーディエンスエンゲージメントの向上に取り組んでいる。今年4月より現職。

佐藤邦弘(さとうくにひろ)
日経リサーチ ソリューション本部 データサイエンス部 兼 デジタルマーケティング部 
チーフ・データサイエンティスト
1999年日経リサーチ入社。インターネット調査システムの開発後、ブログ分析サービス「blogVizセンサー」を企画・開発するなど新規事業に関わる。2010年に日本経済新聞社に出向し日経電子版の顧客データ分析に関与。
2012年に日経リサーチ復帰後は、構造データと非構造データを統合した分析で、マーケティングインサイト発見支援に取り組む。2018年1月より現職。

遠藤剛(えんどうつよし)
日経リサーチ ソリューション本部データサイエンス部 兼 デジタルマーケティング部
2014年日経リサーチ入社。主に日経電子版や金融系クライアントの顧客データ分析業務に従事。顧客データ拡張支援分析サービス「ミルフィーユ」の開発に関与し、調査データと顧客データを統合した分析支援の推進に取り組んでいる。2019年2月より現職。

 
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