株式会社日経リサーチ

世論観測① 世論観測に至るまで

今回から数回にかけて、自動音声応答通話(オートコール)の仕組みを使った「世論観測」について解説をしていく。
 ランダムサンプリングで調査対象を選ばない、サンプルに代表性がないような調査は2000年以降、急速にニーズが高まり、その特徴や活用に関する知見が整備された。背景にはWeb調査に対する需要の増加に加え、2006年の法改正で住民基本台帳が市場調査で使えなくなってしまったことがある。

 特にWeb調査では公募型のモニター調査が広がっていった。モニター登録者はインターネット活用のリテラシーがあることはもちろん、動機を持って主体的にモニターに登録しようという人たちであるから、その集団は消費者全体を母集団とするならば、そこから大きく偏っており、代表性のあるサンプルとはかけ離れてしまう。

 Web調査の活用方法やその評価は代表性のある調査との比較研究*において、あるいは調査会社の知見として蓄積された。比較研究では当初、モニター型のWeb調査が代表性のある調査と比べどのように偏っているのかを把握して、補正ができないか検証したが、うまくいかなかった。代表性のないサンプルではどのような手法を駆使して処理しても世論は捉えられないという、世論調査における先人たちの知見をそのまま証明しただけだった。

 ただ、それらの検討過程で、代表性のない調査であっても、世論の「傾向」は捉えていること、例えば、同一の条件で実施した調査の時系列の変化やクロス集計で捉えられる傾向は、代表性のある調査と比較してもあまり変わらないことが明らかになってきた。市場調査ではクロス集計を駆使した分析を行うことが多く、結果の値(%)が推計できなくても、傾向を分析できれば調査目的の大半は達成できる。

 しかし、世論調査の目的は「世論の推計」であり、結果の値(%)が何よりも重要だ。このため公募型モニターを対象としたWeb調査は世論調査に使えないというのが常識的な考えとして引き継がれた。そんな中、2010年に世論調査協会の研究大会で萩原雅之氏が提唱したのが「世論観測」**である。時系列の変化や傾向などの分析は、代表性のない調査でも可能であり、その特性を活かして世論を「観測」しようという概念だ。当時、萩原氏は公募型モニターを対象としたWeb調査を用いて世論観測を行った。実は、筆者もこの研究大会で公募型Web調査を活用するための基準を提示している***

 それから10年の時を経て、日経リサーチは先人たちの知見をもとに構築した、自動音声応答通話(オートコール)による「世論観測」の考えや特性を整理し、発表した。代表性のないサンプルに対する調査の知見は市場調査会社に蓄積されている。市場調査も世論調査も手掛けている当社だからこそ、新しい「世論観測」の特性や活用法を発信し、理解していただく必要があると考えている。リリース資料では伝えきれない背景や考え方について、また、なぜ今このタイミングで公表したのか、なぜ調査手法がWeb調査ではなくオートコールなのか、といった話は引き続きこのコラムでお伝えしたい。
(世論調査部長 佐藤寧)

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* 代表的なものとして、本多則惠・本川明 (2005) 『Web調査は社会調査に 利用できるか 実験調査による検証結果』 (労働政策研究報告書 No.17) 労働政策研究・研修機構. 

** 「オンラインサーベイによる「世論観測」の試み」 世論調査協会報「よろん」107号(2011年発行)

*** 佐藤寧 「WEB調査を活用するにあたって その特性と課題」 世論調査協会報「よろん」107号(2011年発行)

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