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BtoB企業の購買プロセス調査 コロナで変わる情報収集、高まるHPの重要性

 新型コロナウイルスの感染拡大で事業環境が大きく変わるなか、消費者向けのBtoC企業だけでなく、法人向けのBtoB企業も新たな対応を求められている。日経リサーチは企業間取引の購買、選定、決裁などを担当しているビジネスパーソン(以下、購買関与者)2,132人に各フェーズで重視している要素やコロナによる購買・情報収集の変化などについて聞いた。分析結果を踏まえ、新常態(ニューノーマル)下のBtoB企業の情報収集の変化とブランドの重要性についてリポートする。(2020年5月調査実施)

 購買関与者はどこから新しい取引先や技術の情報を収集しているか。情報収集はコロナ前に比べて変化したのか。まず、購買関与者に日ごろの情報収集チャネルについてたずねた。全体では「その会社のHP」が40%。次いで「展示会やイベント」が35%だった。役職別にみると「その会社のHP」が経営者・役員クラスで44%、管理職クラスで41%と高いスコアとなった。

図1 業務上で取引先や商品・サービスを選定する過程で、何から情報を収集していますか。

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 全体で2番目に高い「展示会やイベント」は、コロナにより開催しにくくなった。続く「営業担当者からの情報提供」も減少している。別の設問で、コロナ以前の情報収集と比較して「やりにくくなった」と回答した人の半数が、「ベンダー(取引先など)からの情報提供やコンタクトが減少」したと答えた。

図2 あなたの仕事で新型コロナウイルスが流行する以前の平時を比較して、購買に当たっての「情報収集活動」はどう変化しましたか。

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 展示会の自粛や取引先からの情報提供が減少しているため、購買関与者は能動的に情報を収集しなくてはならない。web検索が有効な手段となるが、どのような検索ワードを入力し、その会社のHPにたどり着いているか。記述式のコメントボックスを検索窓に見立て、新しい技術(AIや5Gなど)を持ったメーカーを数社ピックアップするケースを例示し、実際に入力する検索ワードを記入してもらった。

<実際の設問文>
Q_仮にあなたが、新しい取引先会社をインターネットで数社リストアップし関与者に展開する担当になった場合、どのように検索をしますか。次の例示ケースの場合、「検索ワード」をどのように組み合わせて入力するかをGoogleやYahooなどの検索エンジンの検索ボックスと想定してご記入ください。

 上記の設問に対しての有効回答1,435の単語を下記のカテゴリーに分類し、件数の多いものから並べると、AIや8K、5Gなど特定の技術や製品の名称が66%、使用場所や利用するシーンなどが57%、省力化や自動化などその技術の提供価値に関する単語が27%、導入事例や評判など実績が15%だった。導入事例や実績は経営者役員クラスでは22%と他の役職よりも多い傾向が見られた。その他(特定の企業名)などは9%となった。


図3:検索ワードカテゴリ別件数

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 購買関与者は特定の技術を利用するシーンや場所などを想定したうえで、その技術がもたらす価値についての情報を求めていることがわかる。これらの情報を既存顧客の成功体験から吸い上げ、うまく発信できれば、それがブランドの向上につながる。人と人との直接の接触が限られるニューノーマルの時代を迎え、情報発信の重要性は一段と高まっている。

 

 購買関与者は取引先や製品・サービスを選ぶ際、どんな要素を重視するか。図1にあるように、「品質・性能」がすべてのプロセスで最も高かった。次が「価格」、3番目が「アフターサービス」で、直接的で客観的な判断基準が重視されることがわかる。「知名度・ブランド力」は8項目のうち4番目で、中ぐらいの重要度と言える。

 

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購買プロセスの初期段階で重視される「知名度・ブランド力」


 平均値としてみるとそれほど重視されていない「知名度・ブランド力」だが、購買プロセスごとにみると、異なる側面が見える。購買プロセスの初期の段階では、「知名度・ブランド力」が重視されている。「営業担当者と会うか決めるとき」は「品質・性能」に次いで2番目、「採用候補の情報収集をするとき」は「品質・性能」「価格」に次いで3番目だった。購買プロセスが進むにつれ、「知名度・ブランド力」を重視する割合は低下していく。

 本調査は5種類の製品・サービスを扱う購買関与者ごとに聞いた。「8kディスプレイ」「AI技術」といった最新技術を扱う関与者ほど「知名度・ブランド力」を重視している。「8kディスプレイ」の関与者は「営業担当者と会うか決めるとき」には「知名度・ブランド力」を最も重視していた(図2-A)。「採用候補の情報を収集するとき」も同様だ(図2-B)。他方、「電子部品」「生産工程機器」などコモディティー化した製品・サービスの購買関与者は「品質・性能」「価格」を強く意識し、「知名度・ブランド力」をそれほど重視していない。最新技術にかかわる購買では、製品情報だけでは購入先を評価しにくい。信頼性に裏付けられた購入先企業のブランド力によって、製品情報を補完したい意識の表れと考えられる。

 

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「知名度」なければ門前払い
 「知名度」が最もモノを言うのが、新規取引先を選ぶ場面である。過去に新規取引先を社内申請し、上司や審査部門から却下された経験のある購買関与者にその理由を聞いた(図3)。その結果、「会社の知名度」が「価格の妥当性」とともに最も高かった。また、これまで取引のなかった会社と初めて会うことになった場合には、「その会社の概要(どんな会社か)」をあらかじめ調べておきたいと思う関与者が、「品質・性能」「価格帯」を調べておきたい人を抑えてトップになった(図4)。製品・サービスを供給するBtoB企業側からみれば、新市場に切り込み、開拓する際の切り札が「知名度・ブランド力」になる。

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 では、購買関与者は取引先であるBtoB企業にどのようなブランド力を求めているのか(図5)。上位には、「製品・サービスの品質が高い」「優れた技術・ノウハウがある」「価格に見合った製品・サービスを提供している」といった製品・サービスの品質や技術など機能性評価に裏付けられた項目が並んだ。「将来性」「成長力」「親しみ」など感覚的な項目を重視する回答は少なかった。
 購買関与者が、実際に調達する製品やサービスを直接評価する「品質・性能」「価格」を絶対条件として意識するのは当然だ。取引先企業に対するブランドも、製品・サービスの質に起因としたイメージが重視される結果となった。

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 今回の結果から、ブランドは取引先として候補にあげてもらったり、新規顧客として知覚してもらったりする際に大きな役割を果たすことがわかった。さらに、実際に利用された製品・サービスの「品質・性能」や「価格」の評価がブランドとして定着すれば、次の購買機会につながる。このサイクルをうまく回すためには、ノンユーザーの認知・評価とユーザー評価(CS)を併せて管理することが重要だといえる。

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