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「共感」もたらす4要素(1)日経リサーチが独自ランキング

日経リサーチは独自のブランド力測定フレームワークである「ブランド戦略サーベイ」を使い、「共感」をもたらす4つの要素を抽出し、それぞれについて企業ランキングを作成した。SDGsへの関心が高まるなか、企業は自社の存在意義をさまざまなステークホルダーに理解してもらう必要がある。「共感」は企業への理解を深めるうえでカギを握る。SDGs活動認知と共感の関係が強いことが明らかになっている(図1)。

図1 SDGs活動認知と共感の関係(ブランド戦略サーベイ2021 コンシューマー編より)

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「ブランド戦略サーベイ」では『それぞれの企業の姿勢・活動・考え方に「共感」しますか』という質問の仕方でこのスコアをとらえている。2021年のコンシューマー編のデータから共感の強い上位企業を見ていく。(表1)

表1 共感度ランキング(ブランド戦略サーベイ2021 コンシューマー編データ)

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上位の顔ぶれを見ると、生活に身近な企業を中心としたランキングになっていることがわかる。ただし、1位の明治、2位の日清食品と3位のヤマト運輸、4位のトヨタ自動車の共感は同質のものだろうかという疑問がわく。ここで問われるのは「個社らしさ」という点であり、それぞれ各社の特徴にあった共感が生まれてきているのではないかと考えた。
そのため、前出したブランド戦略サーベイのデータにある「経験価値」というイメージデータを用いて、共感との一致度(ジャッカード係数=共感とその項目に同時にチェックした割合の高さを係数化したもの)を使い、因子分析を行った。その結果、共感をもたらす4つの要素を抽出することができた。(表2)

表2 共感と経験価値とのジャッカード係数による因子分析結果

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【Factor1】 幸福感:「楽しい気持ちになれる」、「家族や友人・知人と会話がはずむ」、「気持ちが豊かになる」など、幸せな生活をコンシューマーに提供することで共感を創出している要素。ナラティブな要素を持っている
【Factor2】 先進性:「時代の先端性やトレンドが感じられる」、「豊かな想像力を感じる」、「企業のポリシーやメッセージが感じられる」というまさに先進性が共感を生んでいるという要素。
【Factor3】 高品質:「安全で間違いのない品質を得られる」、「商品サービスのよさを実感できる」など品質の高さが共感を生んでいる要素。
【Factor4】 贅沢感(おもてなし):「顧客として大切にしてもらえる」、「贅沢な気分が味わえる」などおもてなしの精神が共感を生んでいる要素。

この4要素はすべての企業が少なからず持っているが、どの要素が共感に強く結びついているかでその企業の共感力を向上させる武器になっている。それぞれの要素別に、強い企業群はどのような顔ぶれになっているのだろうか。

表3 共感に結び付く4要素の上位20社

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(1)因子1 幸福感

「楽しい気持ちになれる」、「家族や友人・知人と会話がはずむ」、「気持ちが豊かになる」など、コンシューマーに「幸せ」という価値を提供している企業群である。上位にはオリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)、ユー・エス・ジェイ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)などテーマパークが並ぶ。さらに、大ヒットを飛ばした「集まれ動物の森」などNintendo Switchを提供した任天堂、NetFlixなどコロナ禍の人々の心に楽しさを提供した会社が続く。劇団四季は2020年の公演が大幅に休演を余儀なくされたにもかかわらず、クラウドファンディングで目標額の倍近くを集めるなど、ファン層の厚さが事業を支えた。これも劇団四季の与える幸福感に共感した人々の支援の結果であると考えられる。

(2)因子2 先進性

「時代の先端性やトレンドが感じられる」、「豊かな想像力を感じる」、「企業のポリシーやメッセージが感じられる」など、先進性が共感を生んでいる企業群である。iPhoneやアップルウォッチなど新たな技術が生活を変えるアップルジャパンや水素自動車MIRAIや新たなEVの開発のみならず、スマートシティの実証実験を行うなど「自動車」という枠を超えて新たな生活スタイルに対して技術を提供し続けるトヨタ自動車が上位を占める。幸福感で1位となったオリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)は幸福感の醸成にアトラクションやサービスに新たな技術で応えていることがコンシューマーの共感につながっていると考えられる。
ソニーグループ各社も上位に顔をそろえる。エンターテインメント、金融など事業領域は常に変化しているが、「先進性」という核の魅力がソニーに対する共感を創造しているといえそうだ。

(3)因子3 高品質

「安全で間違いのない品質を得られる」、「商品サービスのよさを実感できる」など品質の高さが共感を生んでいる企業群である。上位の因子得点が他の因子に比べ低いのは、どの企業でも訴求しうる価値であるため、団子状態になっていることを表している。
その中でも1位となったのがTOTO。さらにセイコー、ハーゲンダッツ ジャパンと続く。TOTOはウォシュレットだけでなく、コロナ禍でタッチレス商品である自動水栓の売り上げが好調で、身近で品質をわかりやすく訴求し続けていることが共感を生んでいると想定される。セイコーはグランドセイコーなど高品質なものから、GPS搭載のアストロン、プロ向けのアウトドアウォッチであるプロスペックス、プレサージュ、5スポーツなど幅広い層に向け品質を訴求できたことが共感につながったようだ。

(4)因子4 贅沢感(おもてなし)

「顧客として大切にしてもらえる」、「贅沢な気分が味わえる」などおもてなしの精神がコンシューマーへの共感を生んでいる企業群である。1位の帝国ホテル、2位のニュー・オータニ、4位のオークラ ホテル&リゾーツ、5位の星野リゾートなど日本を代表するホテルがランキング上位に入っている。その中でも帝国ホテルと星野リゾートは共感を生む構造が異なっている。(図2)

図2 帝国ホテルと星野リゾートの共感4因子の構造の違い

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帝国ホテルは「贅沢感(おもてなし)」に「高品質」であることが共感を生む構造となっているのに対し、星野リゾートは「先進性」に共感を覚えるところが強みとなっている。また「幸福感」については星野リゾートが一歩リードしている。
上位にはオリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)やユー・エス・ジェイなどテーマパークが入っている。この2社は幸福感の上位2強であり、オリエンタルランドはさらに「先進性」が加わり強固な共感を生む構造となっている。

先進性が共感を生む建設業界

表3のランキングを見てほしい。先進性のランキングの14位に大林組、15位に鹿島建設、19位に竹中工務店が入っている。この3社は共感のスコアが大林組17.3%(403位)、鹿島建設15.4%(451位)、竹中工務店15.9%(439位)と他社に比べると決して高いとはいえない。ただし、先進性に関連する項目を選んだ人が共感に結び付けている割合が高い結果といえる。建設業界は環境対応のスマートシティやインテリジェントビルなどに取り組んでおり、「先進性」をわかりやすく伝えられているようだ。

存在意義の伝え方と新たな価値提供の必要性

企業の存在意義の強さを表すものとしての共感とそれを生み出す構造についてこれまで触れてきた。現在様々なサスティナビリティ活動を含む様々なコミュニケーション活動を展開しているが、これまでのブランディング活動で培われた資産を十分に活用できないと共感は得られにくいものとなると考えられる。
とはいえ、それでは従来の延長線上にとどまってしまうと、もともと十分に理解されているとはいいがたい企業、さらに昔のイメージで理解がとどまっている企業では、「存在意義」を十分に市場に認識させるのは難しい。未来に向けて新たな活動を伝えることは、十分に価値のあることであり、それがさらなる企業の存在意義を市場に理解・浸透させることになるものと考える。

次回はさまざまな角度から共感を生みだす構造の違いを見ていく。

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