株式会社日経リサーチ

インターネット調査

日本におけるインターネット調査は1990年代後半以降に、新しい調査方法・測定方法としてマーケティング調査の分野を中心に普及した。文字通り、インターネットを介した調査手段を指すが、WEB調査、オンライン調査という場合もある。
WEB調査という用語に関しては、インターネット回線を通じて、調査票が紙ではなくて画面上のWEBブラウザであるため、WEB調査と呼ばれる。しかし、WEB画面はインターネット回線を利用せずに、オフラインによる調査も可能である。最近ではスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末が普及したので、調査員調査においても、紙の代替としてWEBブラウザを利用した調査票を利用することがある。CAPI(Computer Assisted Personal Interviewing)やCASI(Computer Assisted Self-Interviewing)もこれに含まれる。選挙予測の出口調査や、OECDの国際成人力調査(日本調査)などで実用化されている手法である。
オンライン調査に関しても、インターネット回線を利用しないオンライン調査も可能である。かつてはFAX回線を使ったFAX調査が実施されていた時期もある。電話回線を使った電話調査もオンライン調査といえる。また電子メールを使ってWEB画面ではなく、テキストベースで質問することも可能であるので、これは郵便配達員による郵送調査が、オンラインによる電子郵便調査に代替されたとみなすこともできる。
現在、インターネット調査という場合は、インターネット回線を利用して質問と回答データを送受信し、回答者はWEBブラウザを利用して調査票を見ながら回答する方法を指している。変法として電子メールに電子調査票(HTMLファイル、EXCELファイル、PDFファイル等)を添付して送信し、回答者がPCを使ってオフラインで回答を記入したあと、電子メールに添付して返送する、あるいは電子調査票を調査サイトからダウンロードし、回答結果を記入したら調査サイトにアップロードする方法も可能である。
基本的に回答者はパソコンを利用していることを前提としているが、最近ではパソコンからモバイル端末にデバイスの利用環境が変化しており、モバイル端末用の各種アプリケーションを利用した画面で調査することも増えつつある。
調査方法を調査員介在の観点から分類すると、インターネット調査は非介在型であり、その点では郵送調査との共通点が多い。
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<インターネット調査の特徴>
調査票は紙媒体ではなくて電子媒体(HTML、EXCEL、PDFなど)である。これにより「紙とペン」では実現できなかったプログラムを調査票に組み込みことができる点に大きな特徴がある。
  • 質問間の論理的なエラーを回答直後に実行して回答者に修正等を促すメッセージを出すことができる。
  • ラジオボタン等を使えば単数回答(SA)の質問で複数回答することは完全に回避され、エラーの生じる余地はない。
  • 多数の複数回答(MA)の順序効果を消去するために表示を個人別にランダマイズする。回答結果によって分岐する次の質問を自動的に個人別に判定して表示できる。
  • 画像や動画や音声の機能を使った動的な、あるいは美しい調査票を作る。
  • 調査票が複数あり、回答者群によって異なる調査票を配分する場合、紙の場合よりも多くの分類に細分化でき、また容易に実現できる。
  • 自由回答の記入に関して分量制限はほぼない(自由回答を設定する適否は別として可能である)
  • 回答結果はそのまま電子データとして収集されるので、データ入力という作業プロセスも省略されることで効率化となる。
  • インターネット回線による通信の安全性確保のために、SSL(Secure Sockets Layer)等による暗号化などの手段が用意されている。
  • 回答者が回答に要した時間を計測・記録することができる。
これらは紙では実現困難か不可能であった。また、プログラミングは不要だが、回答者は調査票の文字のサイズを自由に変更できる(変更できないようにすること可能だが)。ユーザーインターフェースを中心に利点が多い。
 
調査者と回答者とのやりとりはオンライン(インターネット回線)である。この恩恵はスピードという点に特徴がある。調査員調査より郵送調査が迅速で、郵送調査より電話調査が迅速で、電話調査よりインターネット調査が迅速であり、現在の調査方法の中では最速である。調査員調査のように回答者に時間的制約を課すことはなく、回答者が回答したい時間に回答できる(これは郵送調査でも同じだが)。
<インターネット調査における標本抽出>
インターネット調査とは、調査方法の分類であって、標本抽出法ではない。ここを区別することが重要である。「誰に調査するか」と「どの方法で測定するか」は別であるが、しばしば関連するので、混在して議論されることがある。つまり、住民基本台帳を使って無作為抽出した標本に対して、電話調査をすることもあるように、インターネットで回答してもらうことも可能である。
インターネット調査が登場すると、さまざまな試行錯誤が実行された。無作為抽出標本を準備してから、インターネット調査を実施することも考えられた。特に企業対象の調査では実現可能であった。インターネット利用者が多く集まるポータルサイトにバナー広告などを出して、調査協力者を募る方法も適用された。大きく分類すると、オープン型とパネル型がある。
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日本では2000年にインターネット専業の調査会社が登場し、パネル型のインターネット調査が定着した。現在、調査会社は数百万人規模の調査モニターを登録・維持しており、インターネット調査は、その調査モニターに対して実施される場合が多い。
このタイプのインターネット調査は、あくまでもパネル調査であるということである。数百万人の調査モニターは日本全体から無作為抽出された集団ではなく、積極的に応募してきた集団である。日本人全体を代表していないので、インターネット調査の結果から日本全体に統計的推測をすることはできない。インターネットの利用者は増加しており、正確な統計はないが、9000万人に達するとの報告もあるので、ほぼ完全に普及したともいえる。しかし普及率100%の社会が到来しても、インターネット調査はインターネット利用者さえも代表していない。
インターネット調査モニターからの標本構成は割当法を使うことが多く、しばしば性別、年代別、地域別の分布を国勢調査と同じ分布になるように回答データを作成する。しかし、割当によって国勢調査(日本人全体)を代表する調査データになるわけではない。割当標本は確率標本ではない。調査モニターから無作為抽出した場合でも、その枠母集団はその調査モニター集団であり、日本人全体ではない。
インターネット調査がマーケティング調査において普及した理由、あるいは世論調査や社会調査では利用されていない理由はここにある。マーケティング調査では、ある商品の日本全体の普及率を統計的に推定するような調査目的は少ない。新製品購入者や、あるサービスの利用者など、特定の条件に合致する消費者に調査したいことが多い。むしろ調査したい対象者を短時間に探し出すという点では、今のところインターネット調査に勝る手法は存在しない。その結果が偏っていても利用者の責任で解釈し、意思決定に利用できれば十分に利用価値がある。むしろ迅速性と低価格であることのメリットが重視された。
日本と海外ではインターネット調査の状況は異なっているが、2000年以降に日本の調査市場で定着したことは、インターネット調査は「安い・早い」という特徴の強調であった。実際には、数百万人もの調査モニターの募集・維持には多額の投資が必要であるし、複雑な調査画面の正確な設計には準備時間もかかる。調査の頻度を増加させることで投資の回収をし、調査票を定型化することで準備時間を短縮してトレードオフに対応することになる。
2000年に日本に登場したインターネット調査は、2005年の段階で調査市場の売上構成比で訪問調査を抜いてトップになった(JMRA:日本マーケティング・リサーチ協会)。
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