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プロマックス回転

因子分析における斜交回転法のひとつ。近年では斜交回転が一般的に利用されており、プロマックス回転(promax rotation)は代表的な斜交回転法といえる。回転の目的は因子の解釈を容易にすることだが、斜交回転は直交回転よりも解釈しやすい結果を与えることが多いほか、いくつかの理由で斜交回転が推奨されている。
因子分析における分析結果の重要なoutputは因子負荷行列であるが、因子分析モデルが制約条件の強い統計モデルであることから、以下の計算手順を踏む。

 1.まず計算上の都合から初期解を求める。第1因子の分散が最大になるように解を求めるため、
   ほとんどの変数の因子負荷量が高い値をもつことが多い。
 2.次に解釈の有益性から回転解を求めるが、斜交回転の前に直行回転を実行する。
   多くの場合にバリマックス回転が利用される
 3.バリマックス回転の結果の因子負荷行列を(共通性の平方根で規準化したうえで)累乗して、
   目標行列(仮説行列)を作成する。累乗には3乗や4乗が一般的に使われる。
 4.目標行列に近づくようにプロクラステス回転をする。ここで因子間に相関が生じることを
   許容する(直交の制約をしない)。これが斜交という意味である。
 5.この手続きをプロマックス回転という。プロクラステス回転を実行するに当たり、
   バリマックス回転の結果を利用するので、プロマックス回転という名前がついている。

<なぜ斜交回転するのか>
解釈は直交回転解よりも容易になることが多い。斜交回転によって単純構造に向かって因子負荷行列のコントラストが一層強化される。つまり「解釈しやすい=単純構造」の状態を求めていることになる。

 1.因子間が直交(無相関)である、という仮定は現実的ではない場合が多い。数理的に無理やり
   直交させるのではなく、斜交しているか否かを確認する必要がある
 2.直交しているか斜交しているかは、直交回転をするだけでは分からないが、斜交回転すれば、
   その前段階でかならず直交回転をするので、両方を確認できるから斜交回転だけをすればよい。
 3.もしデータが直交モデルにふさわしければ、その段階で直交モデルを採用する判断を下せばよい。
   直交回転だけしか実行しないと、その判断の機会を失ってしまう。斜交回転しても直交回転の結果
   とほとんど変化しないデータもある。そのデータは本質的に直交モデルが適しているのである。
 4.因子間に相関がある場合、その相関の大きさに関する情報を得ることができ、
   より発展したモデル構築の役に立つ。
 5.つまり直交回転で得られる知見は、斜交回転ですべて得られ、さらにより多くの知見が
   追加されるので、斜交回転をしない積極的理由はない。

<プロマックス回転の概念図>
まず、初期解(因子負荷行列)を求める。ここでは縦軸に6変数がすべて関係している。縦軸は6変数の平均的な性質だと解釈することになるが、横軸の解釈は難しい。
pro1.png

次にバリマックス回転(直交回転)をする。3変数が縦軸と横軸に分かれて関係性を変化させている。これで縦軸と横軸は、それぞれと関係の深い3変数に着目して解釈できる。これが単純構造である。
pro2.png
 
さらにバリマックス回転の結果を使って、プロマックス回転(斜交回転)をすると、軸(因子)と変数の関係がもっと明確になる。単純構造のコントラストが強化される。
pro3.png

<「ブランド戦略サーベイ」の分析例>
ブランド戦略サーベイの企業イメージ25変数の因子分析である。最尤推定による初期解、直交回転解(バリマックス回転)、斜交回転解(プロマックス回転)の比較。因子の解釈が容易になっていく様子が分かる。

(1)初期解
v1.png
 
(2)バリマックス回転解
 
v2.png
 
(3)プロマックス回転解
v2_2.png
 
なお、参考までに、プロマックス回転のための目標行列(バリマックス回転解の3乗)は下表の通りで、これに合わせるようにプロクラステス回転をした結果が、プロマックス回転解である。
pro_v.png
 
<プロマックス回転とギリシャ神話>
西欧人は自分が提案した分析手法に名前をつけて、独創性を示し他者の模倣を避けるにあたり、自分の名前をつけるだけでなく、比喩を使うことがある。体操競技(鉄棒)でも「ツカハラ」と命名しても良いが、「ムーンサルト」というほうが賛同を得やすいこともあるだろう。古典(聖書や神話)に典拠を求めることも多い。そのほうが味わい深く文学的である。
バリマックスは「variance + max」(分散の最大化)という命名なので、「後方二回宙返り一回ひねり」のようなものであるが、プロマックス回転で使われているプロクラステス回転はギリシャ神話から来ている。
アテナイの王であるテーセウスが退治した盗賊のプロクルーステース(プロクラステス)は、旅人を宿泊させた際に、そのベッドから身体がはみ出せば切り落としてしまい、足りなければ身体を無理やり引っ張って殺していた。
このギリシャ神話が西欧人には長く広く浸透しており、無理やり型にはめることの比喩として使われてきた。プロクラステス回転も、目標行列に近づくように数理的に回転させる方法であり、いかにも「無理やり目標に当てはめる」印象を抱いたのである。最小二乗法のような数理的な計算方法を表現した名前とは無縁の文学的な名前であった。

その他のリサーチ用語

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