株式会社日経リサーチ

アジア7カ国緊急調査
コロナが変える消費行動

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済は大混乱に陥っている。日本企業とつながりの深いアジア各国も感染者数は欧米諸国に比べて少ないものの、厳しい封じ込め策をとったため経済への打撃は大きい。日経リサーチは東南アジア6カ国にインドを加えた7カ国の消費者2000人を対象に緊急調査を実施し、コロナ禍による生活や意識の変化を探った(詳細は『東南アジア 消費者のおカネ・お財布 リポート』に収録。下記リンクから抜粋版をダウンロードできます)。

 国際通貨基金(IMF)は4月にまとめた2020年の世界経済見通しの中で、東南アジア5カ国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポール)の経済成長率が前年比マイナス0.6%に落ち込むと予測した。国別ではタイ(6.7%減)、シンガポール(3.5%減)、マレーシア(1.7%減)が前年比マイナスになり、フィリピン(0.6%増)、インドネシア(0.5%増)は横ばいにとどまる。各国とも1998年のアジア通貨危機以来か、それ以上の落ち込み幅となる見通しだ。
早くも収入減に見舞われる
 緊急調査はこれら5カ国にベトナムとインドを加えた7カ国で4月17~21日に実施した。感染拡大で日常がどう変わったかを聞いたところ、7カ国全体の平均では「友人・知人と会う機会が減った」「外食の機会が減った」「収入が減った」の順で回答が多かった。人との接触や外食の機会が減ったとの答えが多いのは当然だが、目を引くのは「収入が減った」が上位にあがったことだ。各国の経済成長は今後、停滞が避けられないが、個人の収入は早々に影響が出た。特にタイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアでは半数以上の人が収入が減ったと答えた。各国で感染が急速に広がりだしたのは3~4月。短期間で収入減に見舞われたのは、東南アジア経済が貿易や観光への依存度が高く、一足先に経済が悪化した欧米の影響を大きく受けたことも一因とみられる。
収入が減った人の割合
観光旅行ブームに水
 上位3項目に次いで多い回答が「旅行をキャンセルした」だった。タイ、インドネシア、インドでは3位内に入った。東南アジアはサプライチェーンの発達に伴いモノの移動が活発になり、これと並行して人の移動が盛んになった。特にここ10年ほどは格安航空会社(LCC)の台頭により、国境を越えた人の移動がかつてないほど容易になった。モノと人の移動の増加が経済成長の原動力となり、東南アジアはグローバル化の恩恵を最も多く受けた地域のひとつとなった。
人影がまばらなバンコク中心部のフードコート
人影がまばらなバンコク中心部のフードコート
(5月7日撮影)



バンコクの地下鉄は一席おきに座るよう黄色い目印がつけられている
バンコクの地下鉄は一席おきに座るよう
黄色い目印がつけられている(5月7日撮影)
 それが一転、コロナ問題をきっかけにモノと人の移動は滞り、グローバル化に急ブレーキがかかった。 その影響がとりわけ深刻なのが観光産業だ。観光産業が盛んな東南アジアで、中心に位置するのがタイだ。早くから振興に努め、世界的な観光大国の地位を築いた。国連世界観光機関(UNWTO)によると、タイは2018年の外国人旅行者受け入れ数が世界9位、国際観光収入は世界4位と、前者はアジアで中国に次いで2位、後者はアジア1の座にある。
 出国者数も右肩上がりで増え、日本や周辺国への観光旅行が一大ブームになっていた。昨年11~12月に東南アジア5カ国を対象に実施した「消費者のおカネ・お財布調査」でも、「2カ月分の収入を自由に使えるとしたら何に使いたいか」を自由記述形式で聞いたところ、「旅行」「貯蓄・投資」「ビジネスを始める」などの回答が上位に並んだが、「旅行」と答えた人は特にタイやマレーシアで多かった。そのタイで旅行のキャンセルが相次いでいることが、今回の緊急調査の結果から明らかになった。
 3月26日に政府が非常事態宣言を発令したタイでは、大半の商業施設が閉鎖された。5月3日に一部店舗の再開が許され、街には徐々に人々も戻ってきたが、以前の賑わいにはほど遠い。コロナ問題の完全収束の見通しは立たず、人々が自由に行動できるようになるのには時間がかかる。新型コロナウイルスは消費者の意識や行動を大きく変えてしまったのかもしれない。
********************************************************************************************************
 東南アジア各国では新型コロナウイルスの感染拡大に一定の歯止めがかかり、経済活動も徐々に再開し始めました。とはいえ、早くも今秋以降の感染拡大第2波を警戒する声もあがっています。経済への影響も十分に読み切れません。日経リサーチは日本企業にとって関係の深い東南アジア各国の消費者行動・意識の変化を今後も追っていきます。
 

(取締役国際調査本部担当 橘高聡)

リポートの抜粋版をダウンロードするには、お名前、Emailのご登録が必要になります。
お手数ですが、下のボタンをクリックして、ダウンロード申込フォームにお進みください。
調査のご相談や見積もりのご依頼がございましたら、お気軽にお問い合わせください
当サイトでは、利用者が当サイトを閲覧する際のサービス向上およびサイトの利用状況把握のため、クッキー(Cookie)を使用しています。当サイトでは閲覧を継続されることで、クッキーの使用に同意されたものとみなします。詳細については、「当社ウェブサイトにおける情報収集について」をご覧ください。