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営業や顧客への情報提供、デジタル化すべきはココだ!―「技術力」だけでは生き残れない!いま求められる顧客視点でのBtoBマーケティング【第3回】

BtoBビジネスの取引現場では意外なところで顧客の期待外れが起きており(第1回コラム)、その大半について取引先が我慢をしている(不満が顕在化していない)実態(第2回コラム)を、当社の自主調査(調査仕様は文末参照)を基に紹介してきた。
最終回の本稿では、どのように「顧客との接点」を持てば顧客の意識や行動を的確に理解できるのかを考えてみたい。

コロナ禍に対応した情報提供の改善には一定の評価

日経リサーチが2021年9月に実施した「BtoB企業の購買活動、営業活動調査」(調査仕様は文末参照)に、顧客との接点が変化したことによる効果を聞いたデータがある。

購買や情報収集のしやすさをコロナ以前と比べて聞いたところ、「やりやすくなった」「やりにくくなった」が25%前後でほほ同水準となった。コロナ感染が拡大して、経験したことのない混沌としたビジネス環境だった初期から、企業による対応の良し悪しの差が現れている。 図1は、購買や情報収集がやりやすくなったと回答した顧客側企業の取引担当者に、コロナ拡大初期と比べ、やりやすくなった最大の理由を聞いた結果である。

 

図1.BtoB取引で購買活動・情報収集がやりやすくなった最大の理由(回答は1つだけ)

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購買活動がやりやすくなった理由として、デジタルの有効活用など売り手側の改善努力を挙げる回答が上位に並んだ。最も高かったのが「売り手(発信側)の営業担当者がオンライン商談、打合せに習熟した」(28%)、次いで「売り手がホームページ(HP)などで豊富なデジタルコンテンツを提供」(26%)である。これに、展示会のオンライン開催も含めれば、4分の3に達する。「自社や自身がオンラインでの情報収集に習熟」という買う側(受け手)の努力を挙げた回答も4分の1程度あるが、大半は売り手側の環境変化に応じた柔軟な努力を高く評価していた。

デジタルツールを利用した「オンデマンド」型の情報提供が望まれている

次に、典型的なBtoB業種である「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」のそれぞれについて、ビジネスの現場で現在よく利用されている情報提供手段や商談等の接点と、取引先に今後強化してほしいと考えている手段・接点と(図2、図3)を比較してみていく。

 

図2.BtoB取引における取引先からの情報提供、商談手段、利用する各種サポートチャネル
<素材・原材料・電子部品>

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図3.BtoB取引における取引先からの情報提供、商談手段、利用する各種サポートチャネル
<生産工程機器>

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顧客が取引先に強化してほしいものは、「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」共に「オンライン商談」が30%超で最も高い。一方、現在よく利用されている「メール」「電話」を求める声は少なくなっている。また、「素材・原材料・電子部品」では5%の利用に留まっていた「HPでの情報、事例提供、Q&A」が両業種ともに26%とニーズが高いことがわかった。オンラインによる商談、HPやアプリなどを駆使した商品情報や事例紹介など、受け手が自身のほしい時にほしい情報を入手できるデジタルツールの活用を望む声が見受けられる。

「最終商談はリアルで、普段の情報収集はオンラインで」が顧客側の大勢

取引先との接点として強化を求めるものでは、2割前後の回答者が「訪問」を挙げている。「メール」「電話」の重要度が低下しているのに対して、「訪問」は一定水準の要望を維持していることがわかった。オンラインを含めた接点の多様化が進む中でも、BtoB取引では営業担当者とのダイレクトな対話(オフライン)も大切だと捉えられている。
では、オンラインとオフラインがそれぞれ取引のどのプロセスで望まれているのか。顧客である情報の受け手と売り手である情報発信側の両方に聞き、比較した結果を図4に示した。

 

図4.BtoB取引営業活動のプロセスでの希望する接点<顧客と売り手比較>

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※得点は、オンライン/デジタルコンテンツ望ましい1点・オフライン望ましい-1点、どちらともいえない0点で平均値を算出

 

オンラインとオフラインのどちらが望ましいかを3段階で聞き、得点化した。発信側・受け手ともに「最終商談」「展示会」ではオフラインが望ましいと共通認識であった。これに対し、「普段の情報提供/収集」では、受け手は圧倒的にオンライン/デジタルコンテンツを望んでいるのに対して、発信側はある程度オフラインの提供も望ましいと考えているとみられ、両者の姿勢には開きがあった。また、総じて受け手のオンライン/デジタルコンテンツ志向に比べ、発信側はオフライン(アナログ接点)志向が高くギャップが生じている。
売り手からの一方通行の情報提供や接触ではなく、顧客(買い手)が能動的にアクセスし、いつでもほしい時にほしい情報が入手できる接点を用意することも大切である。

顧客視点でのマーケティングがより確かな「技術力」につながる

今後デジタルネイティブ世代が、取引の主役を担う時代になると、HPやアプリにあるデジタルコンテンツから取引条件を検索し、情報収集することが当たり前になる。営業担当者が突然訪問したり、業務に割込む電話をかけたりすることは顧客離れにつながりかねなくなるだろう。
ただし、最終的な判断を求められる際には、信頼できる営業担当者とのオフラインでの商談が重要となることは変わらない。

3回シリーズのコラムで共通して伝えたかったことは、BtoBビジネスの基盤は、提供する製品やサービスのイノベーションであることは揺るぎのない事実ではあるが、それが顧客の課題解決に有効なものだと認めてもらえなければ、顧客から選ばれないということだ。付加価値の高い製品・サービスの提供に加え、組織や従業員の意識改革によって「顧客視点」を起点にしたマーケティングを強化し、さらに製品・サービスを磨いていくことが欠かせない。

 

調査概要【BtoB企業CX調査】
実施日 2022年5月25日(水)~6月8日(水)
対象者 民間企業に勤務し、取引先種別の選定・購買・利用やその後のサポートを受ける顧客側企業の関与者
対象商材

A.自社製品の製造や設計・開発をするための素材・原材料・電子部品

B.自社製品の製造や設計・開発をするための産業用装置、計測・計量機器、工作機械、制御機器など

C.自社の基幹システム、業務システム(CRM、ECサイト、データベース、アプリなど)

D.融資を受ける金融機関

回答者数 2,532人
調査手法 日経IDリサーチサービスを利用、上記条件に合致した方を対象にしたインターネット調査

調査概要【BtoB企業の購買活動、営業活動調査】
実施日 2021年 9月16日(木)~9月21日(火)
対象者 購買活動、営業活動の主たるクライアントが企業である
買い手:自社の購買活動に関与している
売り手:自社の営業・マーケティングに関与している
回答者数 買い手:2,393人
売り手:1,074人
調査手法 日経IDリサーチサービスを利用、上記条件に合致した方を対象にしたインターネット調査

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