株式会社日経リサーチ

因子分析

因子分析( factor analysis )はマーケティング調査では、多数の調査項目の相関関係を分析して、いくつかの因子に集約することで、調査結果を簡潔に理解しようとする場面でよく利用される。
日経リサーチの「ブランド戦略サーベイ」では企業イメージに関して25項目を調査しているが、個別に分析するだけでなく25項目を、より少ない因子で説明することで、全体的な傾向を把握することができる。25項目を個別に観察してもよいが、そうすると散漫になって要約しにくい場合もある。相互に関連するイメージ項目もあるので、それらをグループ化して整理すれば、イメージのグループ(因子)に関して解釈をすればよくなり、効率的でもある。
 
<企業イメージの因子分析の例>
「ブランド戦略サーベイ」における企業イメージは以下の25項目である。
 
1nn1.png
 
調査対象者が「そう思う」と回答した割合(%)が、それぞれの企業に関して集計される。因子分析が対象とする分析データは「数百社の企業×イメージ25項目」のデータ行列である。
このデータを分析した結果として、もっとも重要なoutputは「因子負荷行列」と呼ばれる表である。因子分析を自身で実行せずに、結果を利用するだけの立場の人も因子負荷行列だけは見方を知っていて、結果の解釈をしながらレポートを作成するのである。「因子パターン」ということも多い。
因子負荷行列は、元の25変数と、新しく作成した因子による行列(表)になっており、因子が変数に与える影響力(負荷)の大きさを示している。負荷(loading)という用語は歴史的に心理学の分野で使われてきたが、統計学的な用語で言い換えると回帰係数のことである。回帰係数は相関係数と完全には同じではないが、因子が1個の場合など同値になる場合もあるので、おおよそ相関係数のように「±1の近いと関係が強く、0に近いほど無関係」と解釈してよい(厳密な議論や数理は省略)。下の表では係数を100倍して見やすくしてある。また係数が相対的に大きい部分に色をつけた。
 
inn2.png
 
この因子負荷行列から因子を解釈するのだが、この解釈に関しては数学的な基準はない。むしろ文学的でもあり、マーケティング的であり、主観的でもある。
色のついた変数が同じグループだが、その意味を考えて、グループに共通するような抽象的な概念を考案するのである。たとえば、

 因子1:のれん
 因子2:活性力
 因子3:大衆性
 因子4:尖鋭性

 
この言葉選びは難しい場合もあるし、センスを問われることもある。因子1は「一流・高品質・安定・信頼・誠実」などのキーワードをにらんで「のれん」としてみたが、もちろん別の言葉を考える余地はある。因子2は「活気・変化・明るい・将来」などのキーワードだが、やや難しい。「活性力」という日常語にはない名前にした。因子1と似ているようだが、因子1は静的で、因子2は動的なイメージを表現できるとよいだろう。因子3は親近感や安さに着目して「大衆性」。因子4は個性と革新から「尖鋭性」としてみた。因子の解釈は必ずしも短い単語にする必要はない。もっと説明的であってもかまわない。因子1なら「歴史的に培った老舗の落ち着いた安定イメージ」とすれば誤解や“一人歩き”を避けることができる。因子2でも「未来に向かって切り開いていく躍動するパワー」などでもよい。
 
<どのように結果を利用するのか>
因子分析の結果、以下のような形のデータを得られている。元の25変数の隣に4因子のスコア(因子得点という)が算出されている。
 
inn3.png
 
典型的な利用方法は、因子によるマップを作ることで、企業イメージのポジショニング、あるいはセグメンテーションをする。もうひとつは企業ごとに4因子のレーダーチャートを描いて、イメージの診断をすることである。
下図は因子1「のれん」と因子2「活性力」の二次元マップで、各企業の分布や分類が可能になる。トヨタは「のれん」も「活性力」をトップクラス。オリエンタルランドは「活性力」ではアップルよりも上位にある。ドン・キホーテのイメージはトヨタと「のれん」では対極にあるが「活性力」ではかなり上位にある。東京電力は老舗・安定のイメージが強い企業であったが、2013年調査では「のれん」も「活性力」もともに第3象限(マイナス領域)に落ち込んでいる。 
 
  201701311746_1-300x0.png
 
 
個別の企業については4因子の強弱を、レーダーチャートなどで確認することができる。
トヨタは「のれん」と「活性力」の両方で強いが、オリエンタルランドは「活性力」が特徴的に強い。
 
inn5.png 
 
アップルは「尖鋭性」のイメージが強く、「活性力」もあるが、「のれん」は弱い。「大衆性」も低いが、価格面のイメージであって大衆化していないというイメージがあるわけではないだろう。因子に名前をつける場合、各企業にスコアを確認することも役に立つ。
東芝は「のれん」イメージが特徴的である。

(注)日経リサーチ「ブランド戦略サーベイ」(ビジネスパーソン)の2013年調査データから、過去10年間継続して測定対象となった332社を分析した。
 
 
 

その他のリサーチ用語

当サイトでは、利用者が当サイトを閲覧する際のサービス向上およびサイトの利用状況把握のため、クッキー(Cookie)を使用しています。当サイトでは閲覧を継続されることで、クッキーの使用に同意されたものとみなします。詳細については、「当社ウェブサイトにおける情報収集について」をご覧ください。