自動音声応答通話(オートコール)を使った
「世論観測」サービスを開始

~世間の声はどう変動したか 新型コロナ緊急事態宣言の期間中に測定~
 株式会社日経リサーチ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:福本敏彦)はこれまで蓄積してきた世論調査と市場調査のノウハウに、自動音声応答通話(オートコール)システムを組み合わせ、従来の世論調査とは異なる手法で世論の動きを捉える新しいサービス「世論観測」の提供を開始します。

 現在の日経電話世論調査はオートコールではなく、調査員による通話方式で実施しています。これは①対象となる電話番号を日本で発行しているすべての電話番号(固定電話および携帯電話)から無作為に抽出する(RDD法)②調査員がその番号に電話し、通話したうえで、電話口で調査対象者をその世帯のメンバーの中から無作為に抽出する③対象者が不在の場合は電話をかけ直して対象者を追跡するなど、回答が偏らないようにしつつ回収率を高める――という手順で実施します。この調査は、サンプルが統計学的に日本の有権者の縮図となるように設計されており、代表性があります。結果は調査対象の母集団である世論を推計したものであり、回答結果の数値(回答割合の%)は「世論調査の結果」として報道されています。

日経電話世論調査の手法については、こちらをご覧ください。
https://www.nikkei-r.co.jp/pollsurvey/method.html
 これに対してオートコールを使った調査は、電話番号の抽出はRDD法を使うものの、電話口での無作為抽出や対象者の追跡を行わないため、回答サンプルは電話口に出やすい人や調査に協力的な人に偏る特性があり、有権者の縮図とはなりません。また、回答率(電話がつながった対象のうち、実際に回答を得られる割合)は10%前後に留まります。このため、回答サンプルには代表性が認められず、世論調査としては活用できません。
 しかし、自動音声により、すべての調査対象に対して均一の声質や抑揚で調査票を読み上げて回答が得られることや、コールセンターでオペレーターが密な状態をつくることなく運用できることなどから、安定的に調査を実施するには優れた手法と言えます。

 日経リサーチは企業から受託している市場調査で、モニターを対象としたWeb調査など、サンプルに代表性がない調査の手法を幅広く活用しており、そうした調査に適した調査票の設計や分析方法に関するノウハウを有しています。当社はこれを基に、オートコール調査用の調査票設計や分析方法、ならびに調査結果を公表する際のフレームを整理しました。

 さらに、新たなオートコール調査を使って、3月27日から5月30日までの毎週末、検証調査を実施しました。この期間は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令前から解除後までにあたり、この間の世論の変動が測定できました。

 調査の結果、内閣支持率は全世帯へのマスク配布や条件付きでの世帯あたり30万円の現金給付が報道された4月上旬のタイミングと、検察庁法改正案を巡る野党の反発やSNSでの抗議の声が強まった5月中旬のタイミングで大きく下落したことがわかりました。

 また、政策の評価を聞いたところ、臨時給付金については国民1人あたり一律10万円と発表された4月中旬のタイミングで大きく評価をあげたものの、その後は低下傾向が続いていること、今後半年の暮らし向きの見通しは4月下旬頃からゆるやかに上向き傾向があることなども明らかになりました。

調査結果の詳細はこちらをご覧ください。
 代表性がないサンプルを対象にした調査手法でも、定点観測的に多頻度で調査を実施すれば世論の変動を測る観測装置となるという概念は、萩原雅之氏*1が「世論観測」という名称で提唱しました。今回のオートコールを使った調査は、これに該当する手法です。「世論調査」と「世論観測」にはそれぞれの特性があり、それにあわせて活用する必要があります。日経リサーチはこれらふたつの異なる手法についてこれからも研究を重ね、世論に関する報道に貢献していきます。それだけでなく、「世論観測」は学術調査や市場調査での活用も期待できます。今回実施した検証調査で得られた知見やデータ特性などについては、今後も弊社ホームページで公開している日経リサーチレポートを通じて引き続きお伝えしていきます。

日経リサーチレポート 世論調査のルール(1)「無作為抽出」
世論調査と世論観測の特性
世論調査
  • 回答サンプルに代表性があり、調査の回答結果(回答割合の%)は世論調査の結果として取り扱うことができます。
世論観測
  • 回答サンプルに代表性がなく、補正も困難で調査対象者の偏りが避けられないため、回答結果(%)をそのまま世論として処理・分析することはできず、世論調査との比較もできません。
  • ただし、代表性のない偏ったデータであることを踏まえた上で、同一の設問や同じ基準で設定された質問を調査のたびに繰り返すことで、回答データを時系列で見た世論の大まかな変動や各設問の回答傾向の変遷などの比較・分析に活用できます。
 
*1 萩原雅之「オンラインサーベイによる「世論観測」の試み」世論調査協会報「よろん」107号(2011年発行)
ニュースリリース
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