47社が新規上場、TOKYO PRO Marketはなぜ選ばれる?
「上場」と聞くと、プライム市場やグロース市場を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし2025年、これまであまり知られていなかった「TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)」が、新規上場会社数で東証グロース市場を初めて上回りました。
TOKYO PRO Marketは、一般の投資家ではなく、知識や経験を持つ「プロ投資家」だけが売買できる株式市場です。制度が一般市場と大きく異なるため、名前を聞いてもピンとこない人も多いかもしれません。では、なぜいまTOKYO PRO Marketを選ぶ企業が増えているのでしょうか。
そもそもTOKYO PRO Marketとは?
TOKYO PRO Marketは、東京証券取引所が運営する市場のひとつです。プライム・スタンダード・グロースといった一般市場では、個人投資家を含む幅広い投資家が株式を売買できます。一方でTOKYO PRO Marketの取引相手は「プロ投資家(特定投資家)」に限られます。銀行や証券会社などの機関投資家のほか、一定の資産や取引経験を持つ法人・個人も対象になります。一般の個人投資家が自由に売買できる市場ではない、という点が大きな特徴です。
TOKYO PRO Marketに上場するには、一般市場のような株主数や流通株式などの形式的な数値基準を満たす必要がありません。代わりに、上場審査を担う「J-Adviser」が、企業の事業内容や内部管理体制などを確認し、上場適格性を審査します。企業ごとの状況を踏まえて上場の可否が判断される点が、一般市場との大きな違いです。
制度の見直しを経て、2025年に東証グロースを逆転
TOKYO PRO Marketの前身は、2009年に東京証券取引所とロンドン証券取引所が共同で開設した「TOKYO AIM」です。プロ投資家向けの柔軟な上場先を目指してスタートしたものの、2012年には現在の「TOKYO PRO Market」へと名称が変更され、制度も見直されました。
その後、新規上場会社数は着実に増加し、

※(出所)日本取引所グループ 「新規上場会社情報」および「新規上場会社情報(TOKYO PRO Market)」を基に、各年の新規上場会社数を集計して作成
2026年に入っても勢いは続いています。8月14日時点で、TOKYO PRO Marketの新規上場会社数は34社となり、東証グロース市場の17社を大きく上回りました。さらに、東証3市場(プライム、スタンダード、グロース)の新規上場会社数の合計34社と並ぶ水準となっています(REITを除く)。TOKYO PRO Marketは、上場先の新たな選択肢として存在感を高めています。
なぜ選ばれる?――株主構成を維持しやすい柔軟な制度
では、なぜTOKYO PRO Marketを選ぶ企業が増えているのでしょうか。その背景には、一般市場とは異なる柔軟な上場制度があります。なかでも企業にとって大きなメリットのひとつが、株主構成を大きく変えずに上場しやすい点です。
一般市場では、上場時に一定の株主数や流通株式などの基準を満たす必要があります。一方、TOKYO PRO Marketでは、こうした数値基準が設けられていません。では、両者の上場制度には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

東証グロース市場では、株主数150人以上、流通株式比率25%以上などの形式基準があります¹ 。一方、TOKYO PRO Marketには、株主数や流通株式などの数値基準がありません。オーナー経営者が株式を保有し続けながら、引き続き経営の主導権を維持しやすくなっています。
上場前の監査期間は最近1年間で、内部統制報告書や四半期開示(決算短信)は任意とされているなど、一般市場と比べて開示・監査に関する要件が柔軟になっています² 。上場による信用力の向上と、上場後の経営負担とのバランスを取りやすくなっています。こうした柔軟な制度を背景に、TOKYO PRO Marketを選ぶ企業は増えています。
全国に広がる「プロ向け市場」
こうしたプロ投資家向け市場の広がりは、東京だけにとどまりません。2024年12月には福岡証券取引所が「Fukuoka PRO Market」を、2026年6月30日には札幌証券取引所も「Sapporo PRO Frontier Market」を開設しました。同日、組み込みコンピュータメーカーの「アットマークテクノ」(札幌市)が「Sapporo PRO Frontier Market」第1号として上場し、開示資料では企業価値向上を上場の狙いに掲げています。7月13日には「元気な介護」が、8月28日には同じく札幌市に本社を置く「インターパーク」が上場し、今後、地方に根ざした企業が育つ場として期待されます。

まとめ:選択肢が広がる今、自社に合った市場とは何かを考える
TOKYO PRO Marketは、一般市場とは違う物差しを持つプロ投資家向けの市場です。伸び悩んだ時期を経て、株主構成を維持しやすい柔軟な制度と、企業ごとの状況を踏まえた上場審査によって、着実に存在感を高めてきました。
2025年に新規上場会社数で東証グロースを逆転したことは、企業の上場先としてTOKYO PRO Marketの存在感が高まっていることを示しています。企業ごとに成長段階も経営方針も異なることを踏まえれば、選べる市場が増えるのは自然な流れなのかもしれません。今後、企業の上場目的や成長段階に応じて、TOKYO PRO Marketをはじめとする多様な市場を選択する動きがさらに広がるかが注目されます。
¹ 日本取引所グループ「上場審査基準概要(グロース市場)」
² 日本取引所グループ「TOKYO PRO Market 概要」
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この記事を書いた人
- 中島 泰暉
デジタルキュレーション本部DC第1部兼技術サービス開発部所属。
WEB調査部門、デジタルマーケティング部門を経て現職。
上場企業の大株主情報を中心に、独自調査や開示情報に基づくデータ収集・校正業務の効率化を一貫して推進。好きなことは映画鑑賞。アクションやヒーロー作品をはじめ、SF、サスペンス、ミステリー、ヒューマンドラマまで幅広く楽しむ。
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