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「御社の技術は申し分ない。でも…」 ─ 2200名が語るAIベンダーが見落とす2つの盲点

生成AIブームの追い風を受け、AIベンダーの商機は広がり続けている。だが、「商談が進まない、コンペで負ける、導入後にリピートされない」-そんな壁にぶつかっていないだろうか。

 

その原因は、技術力でもコストでもなく、「顧客解像度」の低さかもしれない。

 

本コラムでは、日本経済新聞の各種サービスを利用するために必要な「日経ID」を保有しているビジネスパーソンを対象に、経営者・役員から一般社員まで2,206名に勤務先でのAI導入にまつわる調査を実施した。本調査から、AIベンダーが見落としていると言える2つの盲点を明らかにする。

 

 

 

 

 盲点①:「情報システム部門」だけに営業していないか? 

意思決定のリアル ー "二頭体制"で動く企業のAI投資

AI導入・投資の意思決定に関与する部門を尋ねたところ、最も多かったのは「情報システム部門」だった。ここまでは多くのAIベンダーが想定している通りだろう。

 

しかし、見逃せないのは「経営企画部門」の存在である。

 

「最も主導権を持つ部門」を見ると、情報システム部門が44.0%、経営企画部門が36.9%であった。つまり企業のAI投資は、情シスと経企の"二頭体制"で動いている。

 

売上5,000億円以上の大企業の部長職以上(n=140)に限ると、情報システム部門の関与率は81.4%に上がるが、経営企画部門も52.9%が関与している。大企業ほど「情シスだけで決まる」ことはないといえる。 

 Q10.お勤め先で、生成AIをはじめとする全社的なAI導入・投資の意思決定において、関与する部門はどこですか。(いくつでも)(N=2066)


 Q11.お勤め先で、生成AIをはじめとする全社的なAI導入・投資の意思決定において、最も主導権・影響力を持つ部門はどこですか。(ひとつだけ)(N=2066)

  意思決定に関与(Q10) 最も主導権を持つ(Q11)
情報システム部門 62.9% 44.0%
経営企画部門 48.8% 36.9%
各事業部(営業・製造など現場) 23.7% 10.2%
研究開発部門 11.8% 2.5%
わからない 12.5% 6.4%

 

なぜ経営企画が絡むのか 

AI投資は単なるIT費用ではなく、経営戦略そのものとして扱われ始めているからだ。投資判断で重視される効果を見ると、その理由が浮かび上がる。

 

「働き方改革」「経営判断の迅速化」「人手不足の解消」──これらは情シスのシステム評価軸ではなく、経営企画が担う中期経営計画や人的資本経営の文脈だ。

AIが「業務ツール」から「経営インフラ」に格上げされた結果、経営企画の関与が必然になっている。

Q12.お勤め先で、全社的なAI導入・投資を決めるときに重視するのはどのような効果ですか。(いくつでも)(AI投資関与者 n=1008)

重視する効果(上位5項目) 選択率
業務のスピードアップと時間短縮 79.0%
社員の負担軽減や働き方改革 69.9%
コスト削減 60.6%
データを活用した経営判断の迅速化 55.2%
人手不足の解消 54.8%

 

ベンダーに突きつけられる問い

情報システム部門だけに営業していて、その案件は獲れるだろうか?

 

提案資料に「セキュリティ要件」「API仕様」「SLA」は書いてあっても、「この投資が中期経営計画のどこに効くのか」「人的資本経営の文脈でどう位置づくのか」が語れなければ、経営企画の稟議の俎上に載ることはない。

 

 盲点②:顧客は「技術」ではなく「理解」を望んでいる 

ベンダーへの不満 ─ 大企業が突きつける「わかっていない」

現在取引中や過去取引した経験のあるAIベンダーに対し「もっと強化してほしい」と感じる点を尋ねた結果が、ベンダーにとって痛い現実を突きつける。

 

全体では上位項目が横並びだが、売上5,000億円以上の大企業の部長職以上に限ると「業界・業務理解の不足」が40.3%で突出している。技術力やコスト以上に、「うちのビジネスをわかっていない」という不満が最も大きい。

Q14.過去または現在関わっているAIを扱うベンダー(外部パートナー)からの提案・支援において、不十分である(もっと強化してほしい)と感じた要素をすべてお選びください。(いくつでも)(全体 n=1008)(大企業部長以上 n=77) 

不満点(全体上位6項目) 全体 大企業部長以上
自社ビジネスや業界特有の課題への理解 26.9% 40.3%
AIモデルの精度や技術力 24.6% 33.8%
費用対効果(ROI)の明確な提示 26.6% 33.8%
初期費用や月額コストの妥当性 27.3% 31.2%
セキュリティ・著作権のリスク対策 29.0% 28.6%
現場定着の支援やマニュアル 26.5% 23.4%

 

ベンダーに期待すること ─ 「技術力」<「課題理解力」

今後AIベンダーに求めることを尋ねると、さらに明確になる。

 

「自社の課題を深く理解した提案力」が売上5,000億円以上の大企業の部長職以上では過半数を占め、多くが「課題理解力」を求めている。

 

技術力やスピードが下位にあるのは、それらが不要だからではない。技術はもはや前提条件であり、差別化要因ではなくなっているからだ。勝負を分けるのは「顧客の業務を、顧客と同じ解像度で理解しているか」──つまり、勝負を分けるのは、顧客と同じ目線で業務を理解し、その理解を顧客の現場で使える形に落とし込めるか─顧客解像度を上げられるかどうかである。

 

Q15.今後、自社のAI投資を成功させるために、AIを扱うベンダーに対して「期待する(重視する)」要素は何ですか。(いくつでも)(全体 n=1008)(大企業部長以上 n=77)

期待する要素   全体   大企業部長以上 
自社の課題を深く理解した提案力   45.0%   50.6% 
安全に使えるセキュリティと法律への適合   47.3%   49.4% 
費用対効果(成果)へのコミットメント   36.7%   41.6% 
現場が使いこなせるまでの継続的な伴走サポート   39.7%   39.0% 
システムの安定性と手厚い保守体制   29.6%   32.5% 
導入コストの安さやリーズナブルさ   35.5%   31.2% 
社員への教育や内製化(自社で扱えるようにする)への支援   35.5%   27.3% 
失敗のリスクが低い、確かなAI技術力   21.4%   24.7% 
開発から納品までのスピード   15.6%   16.9% 
特になし   8.6%   1.3% 
その他   1.2%   0.0% 

 

 

「顧客解像度」が低いままでは何が起きるか

 調査データが示す「顧客解像度の低いベンダー」が陥るシナリオを整理する。

 シナリオ1:提案が情シスで止まる 

経営企画が何を重視しているか─中期経営計画との整合性、人的資本経営への貢献、データドリブン経営の推進─を理解していなければ、情シスの技術評価は通過しても、経営企画の「投資対効果」の稟議で落ちる。

 

現に、約3割の回答者がAI投資のハードルとして「ROIが見えにくく会社に説明できない」と回答している。ベンダーがROIを"顧客の経営文脈"で言語化できなければ、顧客側の担当者も社内稟議を通せない。

Q13.お勤め先のAI投資の稟議・決裁において、現在「最大の壁(ハードル)」となっているものは何ですか。(いくつでも)(n=1008) 

最大の壁(ハードル)(上位5項目)   選択率 

セキュリティや個人情報保護など社内ルールのクリアが難しい

 36.4% 
著作権や法的なリスク、AIの誤答に対する懸念が強い   36.1% 
社内データの未整備や既存システムとの連携の難しさ   31.7% 
費用対効果(ROI)が見えにくく会社に説明できない   30.4% 

社内にAIプロジェクトを主導・運用できる人材がいない

 26.4 

 

 シナリオ2:コンペで「業界特化型」に負ける 

顧客企業が「AIを業務のどこに使って効率化したいか」のニーズは極めて具体的だ。

 

82.7%が「事務手続き・書類処理」を挙げているが、「事務手続き」の中身は業界・業種・企業規模で全く異なる。金融の「事務手続き」と製造業の「事務手続き」は別物だ。汎用的な効率化提案ではなく、その企業固有の業務プロセスに踏み込んだ提案ができるかどうかが、コンペの明暗を分ける。

Q17.お勤め先のAI活用において、AIを使ってより効率化、高度化したいテーマはありますか。(それぞれいくつでも)(N=2206) 

AIで効率化したいテーマ(上位5項目)   選択率 
 事務手続き・書類処理   82.7% 
 資料作成   77.7% 
 データ分析   58.7% 
 社内ノウハウ・知識の共有   55.6% 
 社内教育・研修   41.2 

 

シナリオ3:導入後に「使われない」で打ち切られる

AI活用の最大の課題は「社員のスキル不足」だ。ツールを導入しても現場が使いこなせなければ成果は出ず、次年度の予算は削られる。

 

だが、「どんな研修を」「誰に」「どの順序で」行えばよいかは、顧客企業の組織構造・業務フロー・社員のリテラシーレベルを深く理解しなければ設計できない。定着支援すらも、顧客解像度がなければ機能しないのだ。 

Q16.お勤め先のAI活用における課題として当てはまるものをお選びください。(いくつでも)(N=2206) 

 AI活用における課題(上位5項目)   選択率 
 社員のAIを使いこなすスキルが不足している   51.4% 
 セキュリティや機密情報漏えいへの対策が難しい   39.8% 
 どの業務にどう活用すれば効果が出るのかわからない   31.6% 
 AIを主導できる専門の人材が社内にいない   31.2% 
 社内の利用ルールやガイドラインの策定が追いついていない   29.0% 

 

「顧客解像度」を高めるために

 本調査からわかるのは、AIベンダーに求められているのは「すごい技術」ではなく「深い理解」だということだ。 

 

 - 情シスだけでなく、経営企画が何を重視しているかを知る

 - 顧客の業界構造・業務プロセス・組織の意思決定フローを把握する 

 - 「事務処理の効率化」の具体的な中身を業種×職種×企業規模で解像度高く捉える 

 - 顧客が社内で稟議を通すためのROIの語り方を、顧客の言葉で構築する 

 

これらはすべて、顧客を知ること、つまり顧客に直接問うリサーチによって手に入る。

 

日経IDリサーチサービスが提供できる価値

日経IDリサーチサービスは、日経ID会員という良質なビジネスパーソン会員基盤を活用し、AIベンダーの「顧客解像度」を飛躍的に高めるリサーチサービスだ。

 

本調査でも明らかになった課題に対し、以下のようなアプローチが可能:

 

課題  日経IDリサーチでできること 
提案先が情シスに偏っている  経営企画・事業部の意思決定者の価値観・判断基準を調査し、部門別の提案シナリオを設計 
界理解が浅いと言われる  ターゲット業界の業務課題・AI活用ニーズを定量的に把握。業界別の「刺さるメッセージ」を特定 
ROIの語り方がわからない  顧客企業が実際に稟議で使う評価軸・優先順位を調査し、「通る提案書」のフレームを構築 
導入後の定着に苦労する  現場社員のスキルレベル・抵抗感・期待値を事前に把握し、定着支援プログラムを最適化 

 

経営層から現場社員まで、日経IDの幅広いビジネスパーソンネットワークを通じて、「提案先企業の中で、誰が、何を考え、何に困っているか」を明確にする。 

 

おわりに

AI技術の進化は日進月歩だ。

今回の調査が示すのは、技術の進化だけでは選ばれない時代に入ったという事実である。

 

 - 営業先を情シスだけに絞っていないか?

 - 顧客の業界・業務を「顧客以上に」理解しようとしているか?

 - 提案は顧客の経営文脈に接続されているか?

 

これらの問いに「Yes」と答えられるベンダーこそ、次の大型案件を獲得するだろう。そして、その確信を支えるのがエビデンスに基づく顧客理解=リサーチである。

 

「顧客解像度」を上げる第一歩を、日経IDリサーチサービスとともに。 

 

調査概要

項目  内容 
調査名  お勤め先の生成AI利用・導入に関するアンケート 
調査対象  経営者・役員、正社員・職員(全国) 
有効回答数  2,206 
回答者属性  課長以上 59.7%、従業員1,000名以上企業 53.4%、売上1兆円以上企業 20.7% 
調査方法  インターネット調査(日経IDリサーチサービスを利用) 

 

※日経IDリサーチサービスは、ビジネスリーダー層をはじめとした質の高いビジネスパーソンを対象に深い洞察を得られる調査サービスを提供しています。

 

この記事を書いた人

江川さん写真
ソリューション本部 デジタルマーケティング部 日経IDビジネス推進グループ
江川 玄

キャリア初期よりBtoB領域の戦略リサーチに従事し、ブランド毀損リスクから競争優位性構築まで、多角的なリサーチソリューションを数多く主導。日経リサーチの新規事業となるダイレクトインタビュープラットフォーム『日経IDダイレクトインタビュー』では、事業責任者を務める。初期フェーズにおいて自身でユーザーインタビューを重ね、事業アイデアの創発からサービスの立ち上げ、その後の事業成長を一貫して担当している。

 

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