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マクロ統計×トレンドで読み解く「今」

インバウンド戦略は『国籍別ペルソナ』で最適化! 〜公的統計から読み解く、ターゲット別の誘客アプローチ〜

インバウンド需要が定着し市場が成熟期を迎える中、「自社サイトの多言語対応はどの言語を優先すべきか」「ターゲットに向けて、どのような商品を開発し、どこに広告を打てばいいのか」と、集客・誘客戦略に頭を悩ませているマーケティング責任者や経営企画の方も多いのではないでしょうか。

 

「訪日外国人」という言葉は、まるで一つの巨大な集団があるかのような響きを持っています。しかし、統計を国籍別に見ていくと、そこにはまったく異なる旅行者像(ペルソナ)が並んでいることが分かります。何度も日本を訪れるのか、それとも一生に一度なのか。滞在日数はどれくらいか、そして日本のどこへ足を運ぶのか――。

 

今回は複数のマクロ統計を組み合わせ、国によってどれほど「旅のスタイル」が違うのかを確かめた上で、これからのインバウンド対策に必要な「ターゲット別の誘客アプローチ」のヒントを探ってみたいと思います。

今回使用する統計について

本コラムでは、以下の2つの統計データを使用しています。

・インバウンド消費動向調査(観光庁) 訪日外国人の消費額や旅行内容などを把握するための調査。本コラムでは「2026年4-6月期の1次速報」を使用しています。

・宿泊旅行統計調査(観光庁) 日本国内の宿泊施設における宿泊者数などを月次で調査。本コラムでは「2026年6月分(2次速報)」を使用しています。

※今回は時期を絞った分析となるため、通年で見ると結果が異なる可能性がある点に留意してください。

 

 

リピーターの国、一度きりの国

観光庁「インバウンド消費動向調査」によると、訪日回数が2回目以上の「リピーター」の割合は全国籍・地域平均で66.9%です。

 

しかし国籍別に見ると、香港(91.2%)、台湾(89.7%)など東アジア・近隣国は9割前後がリピーターで占められているのに対し、メキシコ(17.8%)、北欧地域(20.6%)など遠方からの旅行客は8割前後が「初めての日本」であり、大きな開きがあります。

 

コラム2026_vol8_1

*出所:観光庁「インバウンド消費動向調査」 

 

このような地域ごとのリピート率の差を踏まえ、
・リピーターの多い東アジア圏の旅行者は、すでに主要な観光地は網羅している可能性が高いため「ディープな日本体験(コト消費)」や知る人ぞ知る名店などを訴求する
・初来日の割合が高い欧米圏などの旅行者には、定番の「王道の観光名所」を確実に案内する導線設計や、初心者にも分かりやすい丁寧な情報提供を行う

といったように、国籍に応じたアプローチが考えられます。

サクッと旅と、じっくり旅

次に滞在日数を見ると、韓国の短さが際立ちます。3日以内が27.7%、4〜6日が64.8%と、実に9割以上が6日以内の滞在です。台湾も4〜6日が65.0%を占める「サクッと派」の代表格といえます。


対照的に英国(14〜20日 41.4%)、ドイツ(同42.1%)、フランス(同45.9%、さらに28〜90日も10.3%)は長期滞在が主流です。


一方、ベトナムは91日〜1年という超長期滞在が6.3%で全国籍・地域平均(0.5%)の12倍あり、観光ではなく留学・就労目的の滞在が相当数含まれることがうかがえます。

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*出所:観光庁「インバウンド消費動向調査」

 

滞在日数の長さは、求められるサービスに大きく影響します。韓国や台湾のような短期滞在層には、限られた時間で効率よく回れる「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識した周遊ルートの提案や、手軽に楽しめる短時間の体験メニューが喜ばれると考えられます。

 

一方、欧米の長期滞在層には、連泊を促す「長期滞在割引」の導入や「暮らすような旅」の提案、コインランドリーなど生活インフラの充実などが、満足度向上や選ばれる理由につながるのではないでしょうか。

東京と京都、それぞれの「磁力」

次に、地域別×国籍別の偏りを見るため、観光庁「宿泊旅行統計調査」をもとに、「各都道府県に、どの国籍の旅行者が集中して宿泊しているか」を指数化しました。すべての国籍の平均的な宿泊割合を100としたとき、国籍ごとにどの程度の偏り(集中)があるかを表した数値です。


例として東京・京都を比較すると、東京は中東地域(159.3)、メキシコ(156.1)、米国(140.2)など長距離・欧米マーケットへの吸引力が強い一方、韓国(59.8)、台湾(57.7)は全国籍・地域平均の6割にも満たない水準です。一方で京都はスペイン(260.6)、イタリア(253.3)が全国籍・地域平均の2.5倍超という突出ぶりを見せ、フランス(163.6)、中東地域(178.8)も高くなっています。


東京は“長距離ゲートウェイ”、京都は“欧州・イベリア圏の聖地”という、まったく異なる磁力を持っていることが分かります。 

 

コラム2026_vol8_3

*出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」

 

多言語対応や集客戦略を考える際、すべての言語や決済システムに対応するのは現実的ではありませんが、こういったデータを活用することで、リソースを投下する優先順位を検討することができます。例えば京都の施設なら、英語に加えてフランス語やスペイン語の案内表示を優先整備する、といったことが考えられます。

 

ただし、実際の施策立案においては、「集中度」に加えて「単純な来訪者数(ボリューム)」も忘れてはなりません。例えば東アジアからの旅行者は、集中度こそ低いものの、そもそもの訪日客数が圧倒的に多いため、実際の来客数としては大きな割合を占めます。

 

「自地域に特異的に惹きつけられている国」で差別化を図りつつ、「ベースとなる来訪者数が多い国」も確実に取り込む。この両軸からターゲットの優先順位をつけることが、データに基づく最適なインバウンド戦略と言えます。

まとめ:「一つの訪日外国人」という発想を手放す

訪日外国人像は少なくとも二つの型に分かれます。近隣アジアからは「頻繁に・短く・地域を絞って」訪れ、欧米・中南米・中東からは「まれに・長く・東京や京都の有名観光地を軸に」訪れます。この違いは、国籍別のマーケティングや、各地域が誘客したいターゲットを考えるうえで欠かせない視点です。


性質の異なる3つの統計を重ね合わせることで「国籍別ペルソナ」の輪郭が浮かび上がります。企業や地域が誘客戦略を考えるうえでも、こうした「国籍別の統計を継続的にデータベース化し、時系列・地域別に定点観測できる形」に整えておくことが、次の分析や施策の土台になるでしょう。

このコラムの続きは、企業情報データサービスチームnoteで公開中!

▼マクロ統計×トレンドで読み解く「今」
~インバウンド戦略は『国籍別ペルソナ』で最適化!【後編】
https://note.com/nikkei_r_bizdata/n/n15a998623c3d/

 


めまぐるしく変化する経済環境の中、競合他社や協業先の動きを素早く把握することが、精度の高いマーケティングや営業戦略を行う上でのカギとなります。

 

日経リサーチでは、ビジネスの羅針盤となる企業情報データベースをはじめ、データベースに関する様々な知見を有しています。各種データのタイムリーな収集・活用に関して課題を感じている方はぜひお問い合わせください。

 

この記事を書いた人

安食 貴博
デジタルキュレーション本部 DC第2部
安食 貴博

法人情報調査等の企業を経て、現在はマクロ経済統計部門のチーム長およびサービス開発を兼務。データ収集業務の仕組み化・高度化を牽引し、チーム全体のオペレーション負荷を大幅に軽減させる改善実績を持つ。現在は「独自の価値創出」をテーマに、新規サービスの企画・モック開発に注力。趣味は弓道、特技はフランス語。

 

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