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医師・看護師・薬剤師連携強化に求められる情報提供 「医師だけを見る」から「チーム医療を支える」へ -80%の医師がスタッフの進言で処方変更-

2024年4月に開始された「医師の働き方改革」に伴い、時間外労働の上限規制が厳格化されました。外来診療、病棟管理、手術といった業務に追われる医師にとって、処方内容を熟考する時間や製薬企業の担当者(MR)と面会する時間を確保することは容易ではありません。


こうした背景から急速に進んでいるのが、看護師や薬剤師といった他職種と連携する「チーム医療」の推進です。今回、医療現場におけるチーム医療の実態と、看護師・薬剤師への情報提供の課題を明らかにするため、病院勤務の医師・看護師、および保険薬局(門前薬局)の薬剤師を対象とした独自調査を実施しました。


本コラムでは、調査結果から見えてきた現場のリアルな実態と、これからの医療・ヘルスケア業界に求められる情報提供のあり方を紐解きます。

【調査概要】

・調査方法: インターネット調査(日経メディカルオンラインのパネルを利用)

・調査期間: 2026年6月1日~6月5日

・調査対象: 病院勤務の医師394名、看護師100名、薬局勤務の薬剤師110名(計604名)

1. 現場で進むチーム医療の実態──医師の8割が他職種の進言で「処方変更」

まず、他職種からの処方提案や相談に対する意識について調査したところ、現場の医師が看護師や薬剤師からの能動的なアプローチを強く求めている実態が浮き彫りになりました。


医師の80.2%が他職種からの進言機会の増加を要望

「今後、看護師や薬剤師が処方内容の相談・進言をする機会が増えるべきか」という問いに対し、医師の80.2%が「増えるべき(非常にそう思う+ややそう思う)」と回答しました。

これは、当事者である看護師や薬剤師自身の意識よりも高い割合であり、多忙な医師が現場のサポートを切実に必要としていることが伺えます。

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また、実際の頻度として医師の26.6%(約4人に1人)が「毎日」、60.4%が「週2~3回以上」他職種からの処方に関する相談や進言を受けており、すでに日常的な業務として定着しています。

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医師の94%が進言を「歓迎」、8割弱が「実際の処方に反映」

医師側の受け止め方として、他職種からの処方に関する相談・進言を94%の医師が「歓迎」しており、92%が自身の臨床判断にとって「有用である」と回答しました。
さらに注目すべきは、実際の処方変更への影響力です。看護師や薬剤師から処方内容の相談・進言を受けた際、医師の78.6%(およそ8割)が「多くのケース」または「ほぼ全てのケース」で実際に処方変更を行っていると回答しました。なかでも「90%以上のケース(ほぼ全て)で変える」と答えた医師だけで29.9%に達しており、看護師や薬剤師の意見は実際の処方決定に対して大きな影響力を持っています。

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製薬企業による他職種支援に、医師の83%が「必要」と回答

こうした現状を踏まえ、製薬企業が看護師や薬剤師に対して情報提供やウェビナーなどの支援を行うことの必要性を尋ねたところ、医師の83%(「強く必要」34%を含む)が支援が必要であると回答しました。コメディカルの知識や提案の質が上がることが、結果としてチーム医療の質向上と医師自身の負荷軽減につながると期待されています。

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2. 看護師・薬剤師の進言を阻む「2つの壁」と情報提供のギャップ

医師側が歓迎・期待している一方で、当事者である看護師や薬剤師の間には、医師へ進言することに対して「ためらい」を感じる心理的な壁が存在しています。


壁①:主治医の「処方意図」が見えない

看護師・薬剤師に対して進言や相談をためらう理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「主治医の処方意図や治療経緯が十分に把握できていない」(46.7%)でした。
人間関係や上下関係といった問題以上に、「なぜこの患者にこの薬剤・剤形が出されているのか」という背景が見えないため、自分の提案が適切かどうか自信が持てないという“情報の壁”が最大のブレーキとなっています。

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壁②:医師が求めているのは「客観的な根拠・エビデンス」

一方で、医師側に対して「他職種からの進言を受け入れなかった理由」を聴取したところ、トップは「根拠・エビデンスが不足していた」(28.9%)、次いで「患者の病歴や合併症等を考慮し妥当ではないと判断した」(27.4%)となりました。
看護師や薬剤師が治療背景を読み解けないまま提案を行うことで、医師の頭にある全体方針と噛み合わず、エビデンス不足として却下されてしまうミスマッチが発生していることが分かります。

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製薬企業からの提供情報と活用のミスマッチ

現場の不全感を助長している要因として、製薬企業からの情報提供内容との乖離が挙げられます。

  • 患者向け説明資材: 提供率 74.8% に対し、進言での有効活用率は 31.4%

  • 情報提供を受けても「進言に活用できていない」: 全体の 24.8%(約4人に1人)

 

従来の「患者向け解説パンフレット」や「基礎的な製品情報」は、製品理解には役立つものの、「医師の処方意図に踏込んで変更根拠を組み立てるための情報」としては機能していないのが実状です。

 

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さらに職種別で見ると、「製薬企業からの情報提供を受けていない」と答えた看護師は23.0%(薬剤師は3.6%)に上り、情報提供の機会自体に偏りがあることも判明しました。日常的に患者のベッドサイドで変化を察知する看護師への情報提供不足は、大きな機会損失となっていると言えそうです。

 

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3. これからの情報提供戦略──職種別のニーズと提供フォーマットの最適化

今後、チーム医療を支える情報提供活動を進めるうえで、製薬企業およびヘルスケア関連企業はどのようなアプローチを取るべきでしょうか。ポイントは「職種別の役割に合わせたコンテンツの最適化」と「働き方に合わせた提供フォーマットの変更」です。

職種によって医師が期待する領域は異なる

医師が他職種に期待し、信頼を寄せている領域は明確に分かれています。

 

職種 医師が信頼・期待している領域 主な数値
看護師

診察室では見えない患者のリアルな状況(本音、生活変化)

患者の本音(65.0%)

日常生活レベルの変化(64.7%)

薬剤師

薬学的専門性に基づいた客観的チェックと選択

相互作用・禁忌チェック(69.3%)

患者に合わせた適切な選択(59.1%)

 

現場が真に求めている不足コンテンツ

看護師・薬剤師が「現在不足している」と感じている情報として、以下の項目が上位に挙がりました。

  1. 他剤との具体的な使い分け・切り替えの判断基準(薬剤師の69.1%が回答)
  2. 副作用の具体的対処フロー
  3. 患者のQOLが向上した具体的事例(看護師からのニーズが特に高傾向)


これらの情報は、前述した「処方意図の把握」と「変更根拠(エビデンス)の補強」に直結する要素であり、これらを網羅した資材設計が求められます。

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高い評価を得ている製薬企業の特徴

情報提供やウェビナーにおいて現場から高い満足度を得ている企業の共通点を探ると、現場の課題に直接応える姿勢が見えてきます。

  • 第一三共: 分かりやすいエビデンス提示とタイムリーな情報提供、幅広い領域の網羅性
  • 大塚製薬: 短時間で臨床的に役立つデータ提供、保険算定上の注意点や栄養面などの独自アプローチ
  • ファイザー: 副作用情報の安定感、専門領域に対する手厚いレスポンスと高い供給力
  • 中外製薬: 他社製品も含めた客観的な比較・使い分け情報の提供
  • 日本イーライリリー / ヴィアトリス: 医師への説明に使いやすい資材設計、短時間で要点を集約したコンテンツ

 

いずれも「単なる自社製品のPR」にとどまらず、「現場でそのまま医師への進言に使える根拠や実務情報」をタイムリーに届けている企業が強い信頼を獲得しています。

 

ウェビナー・講演会は「短尺化・オンデマンド化」へ

看護師や薬剤師に向けた講演会・ウェビナーにおける最大の不満・ハードルは「開催時間が業務時間と重なる」(過半数)、次いで「1回あたりの時間が長すぎる」(29.0%)でした。

夜勤やシフト制で動く現場のワークスタイルに合わせ、今後の情報発信は「業務の隙間で見られる10分程度の短尺動画」や「時間と場所を選ばないオンデマンド配信」へとシフトすることが重要です。

 

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まとめ:現場の「ためらい」を「確信」に変える支援を

今回の調査を通じて、チーム医療の現場では「医師の8割が他職種からの進言を待っており、実際に処方を変えている」一方で、「看護師・薬剤師は情報不足から処方意図が見えず、進言をためらっている」という構造的なギャップが明らかになりました。
これからの医療・ヘルスケア市場における情報提供戦略の核となるのは、以下の3点です。

  1. 「ためらい」を消すエビデンス環境の整備
     看護師・薬剤師が自信を持って医師へ提案できるよう、変更の客観的根拠となるデータや使い分け基準を届ける。
  2. 職種別の役割・期待に即したコンテンツの差別化
     薬剤師には「薬学的・客観的な切り替え基準」、看護師には「QOL向上事例や生活基盤に根ざした情報」を提供する。
  3. 隙間時間を活用できるスタイルへの最適化
     10分程度の短尺コンテンツやオンデマンド配信を活用し、忙しい日常業務の中で必要な時にアクセスできる環境を作る。

 

「医師だけを見る」スタイルから一歩踏み出し、チーム医療全体を支える情報提供活動へと転換すること。これこそが、医療現場の真のニーズに応え、より良い医療の実現に貢献するための決定的な鍵となります。

 

 

 

 

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