Case

管理部門のモヤモヤを解消するコンプライアンス経営診断プログラム活用の価値

松田産業株式会社

地球資源を「活かす」貴金属事業と、地球環境を「守る」環境事業を統合した貴金属関連事業と、食資源を地球規模で「提供する」食品関連事業を国内外で展開する松田産業。同社は3年ほど前にコンプライアンス課を新設し、以来、グループ内のコンプライアンス強化に取り組んでいます。2025年には、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用し、グループ全体約1,700人のうち、国内1,000人超の社員を対象にコンプライアンスに対する意識を把握する調査を実施。今回は、同社 法務部 コンプライアンス課の掃部修平課長と本田卓也課長代理 に、調査実施の狙いや、そこから得られた示唆について伺いました。

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松田産業株式会社

法務部 法務課 兼 コンプライアンス課 課長

掃部 修平さん


法務部 コンプライアンス課 課長代理 

本田 卓也さん

 

 

1.コンプライアンス施策の成果をどう可視化するか

 

―――コンプライアンス課の成り立ちとミッションについて教えてください。

 本田卓也氏(以下、本田)|当社のコンプライアンス課は、同じ法務部の法務課から独立する形で3年ほど前に発足しました。以前は法務課が契約審査や法令対応などとあわせて、コンプライアンス推進に関する業務も担当していましたが、それだけでは全社的な浸透に限界があると判断したことが専任組織立ち上げの背景です。具体的には、コンプライアンス研修の実行や規程の整備など、グループ全社におけるコンプライアンス意識の向上と定着に向けた取り組みを行っています。

 

 

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―――どのような体制の下で、コンプライアンスを推進しているのでしょうか。

 

本田|当社では、法務部を管掌する役員が「コンプライアンス統括責任者」を務め、その指揮・監督のもと、コンプライアンス課が実働部隊として各種施策を推進しています。

また、グループ全社員が遵守すべき指針として「グローバル行動規範」を定めています。この規範は、「コンプライアンス」「社会貢献」「事業活動」「会社資産・情報の保全」「人権の尊重」「環境保全」の6つの分野について、具体的な行動基準を示したものです。

 

事業のグローバル化が進み、従業員数が10年前と比較して2倍以上に増加する中、多様な地域・組織においても共通の価値観に基づいてコンプライアンスを実践できるよう、日常業務で求められる行動を明確化しているのです。

私たちコンプライアンス課のミッションは、個人情報保護や贈収賄防止といった法務主管規程をグループ全体に浸透させ、社員一人ひとりが自律的にコンプライアンスを実践する体制を醸成することです。その最上位となるのが「グローバル行動規範」であり、まずはこの規範をしっかりと定着させたうえで、個別の法務主管規程の実践へと段階的に展開しております。

 

掃部修平氏(以下、掃部)|グループ会社は、国内外で約20社あり、社員はグループ全体で約1,700人。「グローバル行動規範」の浸透という点では、法制度や文化的背景が異なる海外拠点への浸透に特に難しさを感じています。

 

 

―――そのような環境の中、2025年8月には日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用し、グループ内のコンプライアンス意識を調査されています。調査を実施した理由、背景を教えてください。

本田|グループ内のコンプライアンス意識を把握するための本格的な調査は、それまで実施していませんでした。しかし、コンプライアンス課の設立以降、さまざまな施策を推進してきたことから、それらの成果を客観的に検証する必要性を感じていました。

調査を実施した大きな目的は、これまで取り組んできた施策が適切な方向性で進められているかを確認することです。言い換えれば、自分たちの活動がグループ内のコンプライアンス意識の向上につながっているのかを確かめたかったのです。

 

掃部|これまでの取り組みが、組織内のコンプライアンス意識の向上にどの程度貢献できているのかが把握できなければ、次に講じるべき施策について適切な判断を下すことはできません。

 

コンプライアンス施策は実施すること自体が目的ではなく、その効果を検証しながら継続的に改善していくことが重要です。取り組みのPDCAサイクルを回していくためにも、客観的な評価は必要不可欠でした。

 

 

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2.ベンチマーク比較と伴走支援が決め手に

 

――日経リサーチに初めてお声がけいただいたのは2024年の末頃でした。調査を委託するパートナーを選定する際、どのような点を重視されましたか。

本田|調査に関するノウハウも、人的なリソースも限られているため、調査の企画・設計から実施、集計、分析まで一気通貫で任せられる調査会社であることを重視しました。検討にあたっては、Webでの情報収集に加え、社内の他部署にもヒアリングしながら、候補を絞り込んだうえで、直接話を聞いたのは2社ほどだったと記憶しています。

 

 

――日経リサーチをパートナーに選んだ決め手について教えてください。

 

掃部|今回の調査の最大の狙いは、いわば「現在地を知る」こと。ここでいう“現在地”には、2つの意味があります。1つは、コンプライアンス強化に向けたロードマップの中で、これまでの取り組みが想定通りに進んでいるかを把握すること。もう1つは、コンプライアンスに関する自社の取り組みや意識レベルが、社会全体の中でどの位置にあるのかを客観的に知ることです。

 

そのため、「コンプライアンス経営診断プログラム」で得られた調査結果をベンチマークと比較し、自社の立ち位置を客観的に評価できる点が大きな決め手になりました。ベンチマークについては、従業員規模やプライム市場への上場有無といった企業属性に加え、役職、性別、年齢などさまざまな切り口で比較できる点にも魅力を感じました。

 

本田|調査設計から分析まで伴走していただける点も高く評価しました。例えば、コンサルティング会社によっては、質問項目を自社で用意するよう求められるケースもあります。その点、日経リサーチは調査設計の段階から支援してくれるため、限られた人的リソースでも無理なく調査を進めることができます。

こうした手厚いサポート体制に加え、ベンチマーク比較による客観的な分析まで実現できることも選定の決め手の1つになったと思います。

 

3.丁寧な事前説明と緻密な調査設計で高回答率を実現

 

―――今回の調査は、1,000名を超える国内のグループの企業の社員の皆さんを対象に2025年8月に実施しました。少し前のお話になりますが、調査の設計段階で苦労した点などあれば教えてください。

 

本田|振り返ってみると、大きな苦労はなかった印象です。ただ、調査を実施するにあたっては、回答率が低下しないよう、設問数や内容の設計には気を配りました。例えば、どの程度の質問数であれば従業員の負担にならないか、また、どのような粒度で質問を設定すれば必要な情報を過不足なく収集できるかといった点です。

 

最終的には50問程度の設問数に落ち着きましたが、設問の構成や粒度については日経リサーチから丁寧なアドバイスをいただけたため、スムーズに設計を進めることができました。また、調査の検討段階から実施に至るまで、定期的にWebミーティングの機会を設けてもらいました。疑問点や不安な点があればすぐに相談できる体制が整っていたため、心強かったですね。

 

 

――実際に調査を実施してみて、回答率はいかがでしたか。

 

本田|対象者のほぼ全員から回答を得ることができました。正直なところ、想像を上回る回答率でした。設問数を適切な範囲に抑えられたことに加え、回答しやすい設問設計だったことが功を奏したと考えています。

掃部|加えて、当社には厳格な許認可のもとでの運営が求められる環境事業に携わる上場企業として、長年にわたりコンプライアンスを重視してきた歴史があります。そうした企業風土が根付いていたことも、高い回答率につながった要因の1つかもしれません。

 

 

――社内に向けた、このような調査を初めて行う際には、社内調整に苦労される企業が少なくありません。貴社においてはそのようなご苦労はありませんでしたか。

 

本田|私自身はそこまで苦労を感じませんでした。先ほどお話した「コンプライアンス統括責任者」である法務部管掌役員が、調査実施の意義などを事前に経営層に説明していたこともあって、プロジェクトはスムーズに進められたと思います。

 

 

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4.調査で見えた部署・職種間ギャップと次の打ち手

 

――調査実施から2か月後には分析結果がまとまりました。結果をご覧になって、どのような感想をもたれましたか。

 

本田|全体的な結果については、概ね想定通りという印象でした。ベンチマークと比較しても高い水準にある項目が多く、これまで進めてきた取り組みの方向性が間違っていなかったことを確認できたのは大きな収穫でした。

一方で、部署や職種によって結果にばらつきがあることが明らかになりました。こうした結果から、部署や職種の特性に応じてアプローチを変えていく必要があること、また、グループ全体への浸透をさらに進めるための工夫が求められていることに気づかされました。

とはいえ、工数やリソースには限りがあり、すべての施策を同時に実施することは現実的ではありません。そのため、優先順位をつけながら取り組みを進めていく必要があります。今回の調査結果は、どの課題から優先的に対応すべきかを判断するうえでも有効な指針になっていることは言うまでもありません。

 

 

――「コンプライアンス経営診断プログラム」は、現場の疲弊感など、コンプライアンス意識の低下につながりかねない組織風土に関する潜在的なリスクについて把握できることも特徴の1つですが、そのあたりの結果はいかがでしたか。

 

本田|部署によって疲弊感に一定のばらつきがあることが明らかになりました。ただ、この領域はコンプライアンス課だけで対応できるものではありません。組織運営や人材マネジメントとも深く関わるテーマですので、人事部門と結果を共有し、連携しながら対応策を検討していく必要があると考えています。

いずれにせよ、今回の調査を通じて、問題が顕在化する前の段階で、組織風土や従業員の働く環境に関する潜在的なリスクを把握できたことは、意義深かったと感じています。

 

 

――調査結果を受けて、現在、どのような取り組みを進めていらっしゃいますか。

 

本田|現在は、グループ全体のコンプライアンス意識のさらなる向上を重点テーマとして取り組んでいます。

調査結果の中で特に注目したのは、ベンチマークと比較すると、多くの評価項目が高い水準にあった一方で、「グローバル行動規範」の浸透度には改善の余地が見られたことです。

 

そこで今年度は、「グローバル行動規範」の理解と定着を促進するためのハンドブックの制作を検討しています。単に内容を理解してもらうだけではなく、常に手元に置き、日々の業務や意思決定の場面で判断の拠り所として活用できるようなものにしたいと考えています。そのうえで、順次、法務主管規程の浸透や現場での自律的運用へと発展させていく計画です。

 

 

――今回、コンプライアンス意識を測定する「コンプライアンス経営診断プログラム」のような調査にお2人が感じた価値を教えてください。

 

掃部|例えば、営業部門であれば、獲得契約数などによって成果が可視化されますが、管理部門の仕事は、その成果を定量的に測ることが容易ではありません。実際、自分たちの取り組みが本当に正しい方向に向かっているのか、迷いや不安を感じることもありました。

だからこそ、今回の調査によって、これまでの施策を客観的かつ定量的に評価できたことには大きな価値があったと感じています。自分たちが進めてきた取り組みの有効性を確認できたことで、一定の手応えと自信を得ることができましたし、これまで抱えていた漠然とした不安や“モヤモヤ感”を解消することにもつながりました。

 

 

――貴社のコンプライアンス推進における今後の展望を聞かせてください。

 

本田|私たちが目指しているのは、社員一人ひとりが自律的にコンプライアンスを意識し、行動できる状態です。もちろん、これは一朝一夕で実現できるものではありません。そのため、「グローバル行動規範」の浸透をはじめとするさまざまな施策を通じて、時間をかけながら継続的に取り組みを進めていきたいと考えています。

 

掃部|そのためにも、定期的に社内調査を実施し、取り組みの成果や組織の変化を継続的に確認していくことが重要だと考えています。調査の実施頻度については、施策の浸透状況や効果が表れるまでの期間などを踏まえて検討する必要がありますが、今後も客観的な視点で現状を把握しながら、改善を重ねていきたいですね。

引き続き、日経リサーチにはパートナーとして伴走いただけることを期待しています。

 

 

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松田産業の掃部様、本田様のお取組みで印象的だったのは、成果を可視化しづらい管理部門において、調査結果を「自社の現在地と施策の成果を客観的に測る指標」として有益に活用されている点でした。また「グローバル行動規範ハンドブック」の制作を検討されており、調査結果を踏まえ、次のアクションへ落としこむ実行力も参考になります。  
同社の自律的な企業文化づくりを、今後もパートナーとして全力で支援してまいります。貴重なお話をありがとうございました。

 

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