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コンプライアンスは業績に優先する―西部ガスグループが見つめ直した潜在的リスク

西部ガスホールディングス株式会社

西部ガスグループは、九州北部を中心に都市ガスの供給事業を展開する西部ガスを中核とする企業グループです。約40社にのぼるグループ会社は、ガス関連工事業をはじめ、飲食業、不動産業など多様な事業を手掛けています。そんな同グループでは「コンプライアンスは業績に優先する」という考えのもと、長年にわたりコンプライアンスの強化に取り組んできました。2025年からは、それまで抱えていた課題を解消するため、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用。プログラム導入の背景や調査を通じて得られた気づきについて、西部ガスホールディングス グループガバナンス部 内部統制・コンプライアンスグループの内野伸一郎さん、河野めぐみさん、小塩秀治さんに聞きました。

西部ガスホールディングス株式会社_活用事例

西部ガスホールディングス株式会社

グループガバナンス部

内部統制・コンプライアンスグループ

 

課長 内野 伸一郎 氏

係長 河野 めぐみ 氏 

小塩 秀治 氏 

 

 

 

「コンプライアンスは業績に優先する」という理念を貫く理由

 

——まず皆様が所属されているグループガバナンス部 内部統制・コンプライアンスグループについて、業務内容やミッションをご説明ください。

 

 内野氏(以下、内野)|グループガバナンス部内には「IR推進室」「法務・株式グループ」、そして私たちが所属する「内部統制・コンプライアンスグループ」という3つの組織があり、私たちは西部ガスグループ全体のコンプライアンス強化に向けた取り組みを統括しています。

なお、西部ガスホールディングスの社長が委員長を務め、グループのガバナンス推進体制の中核となるグループガバナンス委員会の事務局の役割も担っています。

 

西部ガス_内野様

 


——グループガバナンス委員会と現場の連携はどのように図られているのでしょうか。

 

内野|各グループ会社には、ガバナンス責任者を配置することで、グループガバナンス委員会で示した方針を各社で着実に推進していく体制を構築しています。なお、ガバナンス責任者は、各社の総務担当役員や総務部長が務めることが多いです。

 

 

——貴社では「コンプライアンスは業績に優先する」という考えが根付いているそうですね。その背景を教えてください。

 

内野|当社はガス供給事業をはじめとするインフラ事業を中心に事業を展開していますが、地域のお客さまに選ばれるには、安心・安全に対する信頼が何よりも重要だと考えています。

その思いは、1930(昭和5)年の創業以来変わることはありませんが、これまで築いてきた信頼を損なうことは、決してあってはならないこと。そのためにも、コンプライアンスを重視することは、私たちにとっては最優先事項となっているのです。

 

河野氏(以下、河野)|2015年ごろに、金融庁と東京証券取引所が共同で「コーポレートガバナンス・コード」を策定するなど、企業統治やコンプライアンスへの関心が高まりました。当社で内部統制・コンプライアンスの専門部署が立ち上がったのも、ちょうどその頃でしたが、それもコンプライアンスを重視する姿勢があったからこそだと思います。

トップメッセージの発信を礎にコンプライアンス意識を醸成

——確かに、総務部や法務部がコンプライアンス推進活動を主導する企業も少なくない中、早くから専任部署を設置している点に、ガバナンスやコンプライアンスに対する意識の高さがうかがえますね。実際に取り組みを進めるうえではどのようなことを重視しているのでしょうか。 

 

内野|ポイントは大きく分けて3つあります。1つ目が「経営層のコミットメント」、2つ目が「風通しの良い職場づくり」、3つ目が「継続的な教育」です。 

 

まず「経営層のコミットメント」ですが、先ほどお話ししたように、グループガバナンス委員会の委員長を加藤(西部ガスホールディングス代表取締役社長 加藤卓二氏)が務めていることも、その一例です。

 

さらに、約5,000名にのぼるグループの従業員に向けて、加藤から直接メッセージを伝える機会を設けています。毎年78月を「コンプライアンス月間」と定め、さまざまな取り組みを展開していますが、その一環として先ほどご説明した「コンプライアンスは業績に優先する」という考えに基づくメッセージを掲載した印刷物を配布しています。

 

河野社長のメッセージは、デジタル上でも閲覧できるようにしていますが、社員一人ひとりに確実に届けたいとの思いから、印刷物として配布することにもこだわりました。業態の異なるグループ各社の従業員に統一したメッセージを伝えることを重視した結果です。

 

内野|グループ内には都市ガス供給会社のほか、ガス工事を行う会社や飲食事業を展開する会社、不動産関連の会社などがあります。業種によって従業員の働き方や価値観が異なるからこそ、トップの発信を起点として共通の価値観を浸透させ、地道な取り組みを積み重ねていくことが不可欠だと考えています。

 

 

——2つ目のポイントである「風通しの良い職場づくり」を実現するためには、どのような取り組みを行っているのでしょうか。 

 

 河野 |例えば、「ナイスフォロー活動」という取り組みを展開しています。社内イントラネットを活用して従業員同士の交流を深めるものです。感謝の言葉をシステム上に投稿すると、相手にメールで通知が届くシステムを活用しています。

 

昨年は年間約1,000通のメッセージが投稿されました。2カ月に1回発行している「コンプライアンス新聞」で優れた投稿を紹介するほか、投稿数が多い人や多くのメッセージを受け取った人を表彰しています。

 

さらに、職場単位で社内コミュニケーションの良い点や改善点について話し合い、その結果を報告してもらう取り組みも展開しています。

 

西部ガス_河野様

 

 

——こちらも地道かつ丁寧な取り組みを進めているのですね。3つ目のポイントである「継続的な教育」についてはいかがですか。  

 

内野グループの全従業員を対象に、毎年コンプライアンス強化に関する研修を実施しています。研修では、ドラマ教材を視聴し、その後、職場ごとにディスカッションを行います。こうして、“自分ごと”化を促していきます。

 

なお、研修のテーマは、その時々の状況や課題に合わせて、毎年変えています。2025年度は「どのような発言、行動がハラスメントになるのか?」というテーマで、より実践的な内容の研修を実施しました。

 

管理職向けには、独自開発した「インテグリティ(integrity:誠実さや真摯さを意味する)研修」も展開しています。倫理観や誠実さについて学んだうえで、グループワークに取り組むプログラムです。グループワークでは、職場で倫理性が高いと感じる人物を挙げたり、自身の倫理観について振り返ったりして、内省を促す内容となっています。

 

従来の研修はテクニックを学ぶことに偏りがちでした。しかし、最後の一線を守るのは一人ひとりの良心に他なりません。だからこそ、心理学的な視点も取り入れながら、人間の内面に働きかける内容にしているのです。 

 

河野|また、新入社員研修や新任リーダー研修、管理職研修でもコンプライアンスに関するプログラムを設定しています。さらに、経営層向けに有識者を招いた講演会を隔年で開催しています。 

 

不祥事をゼロにすることは難しくても、不祥事が起こりにくい環境をつくることは可能です。そのために経営層、管理職、一般社員というレイヤーにあわせた取り組みを多層的に展開しています。

 高水準の調査結果の先にある課題を探りたい           

——2025年から日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用されていますが、プログラムを導入するに至った経緯を教えてください。  

 

 小塩氏(以下、小塩) 2024年以前も、従業員のコンプライアンス意識を測る調査を13年間にわたって行ってきましたが、毎年良好な結果を得ることができていました。しかし、高い水準で結果が推移している一方で、質問内容や分析手法の固定化により、新たな改善テーマが見つけにくいことに課題を感じるようになったのです。

 

そこで、既存の枠組みにとらわれず、現場の実態を新たな視点から把握する必要があると考え、調査会社を見直す決断をしました。また、調査会社を変更することで、これまでとは異なる視点での示唆が得られることも期待しました。

 

西部ガス_小塩様

 

 

——数ある調査会社の中から日経リサーチを選んだ決め手は、どのようなことだったのでしょうか。 

 

内野調査会社を比較検討する中で、日経リサーチの担当者から話を聞く機会がありましたが、その際、私たちが実現したいことを十分に理解し、それを形にしてくれると感じたことですね。

 

具体的には、豊富なベンチマークデータを保有していることや、日本経済新聞社グループであるという高い信頼性を評価したことを覚えています。

 

加えて、業種業態が異なる約40のグループ会社を対象に調査を実施し、調査後には結果をそれぞれフィードバックしなければならないという、当グループの事情に合わせた対応ができる体制やリソースを備えていることも、判断材料の1つになりました。 

 調査で新たに見えた潜在的リスクと次の一手 

――調査は2025年10月に実施され、同年12月には結果も明らかになりましたが、調査結果に対してはどのような印象をもたれましたか。

 

内野|今回の調査は、従来から使用している設問項目を大きく変更しました。そのため、これまでは見えていなかった課題をいくつか発見することができました。

 

特に印象的だったのが、「形骸化した業務の存在により、従業員に疲弊感が広がっている」という結果です。この課題は私たちも肌感覚として認識していましたが、それがデータによって裏付けられたことに大きな意義を感じています。

 

――そのような結果は、これまでの調査では把握できなかったのでしょうか。

 

河野|はい。今回、労働環境に関する設問を新たに設けて明らかになった結果です。以前の調査では、サービス残業の有無などを確認する程度でしたが、業務の形骸化や属人化、非効率な業務の有無まで踏み込むことになりました。

 

組織風土を背景にした問題は、コンプライアンス推進における潜在的なリスクにつながります。こうしたリスクが顕在化する前に把握できたことは、大きな収穫でした。

 

――一般的には定量的な評価が難しい組織風土の問題について、調査結果というデータを得られたことで、経営層をはじめ社内への説明もしやすくなったのではないでしょうか。

 

河野|おっしゃる通りです。たとえ私たちが感覚的に課題を感じていても、それだけでは経営層に問題点を伝えるのは困難です。その点、データがあれば客観的な根拠として説得力が増しますから。

 

――現時点で、調査結果はどのように活用されていますか。

 

河野|今回の調査では、202512月に結果が出た後、20262月の経営会議や3月のグループガバナンス委員会で報告を行いました。繰り返しになりますが、客観性のあるデータにより、経営層もより解像度高く課題を認識できたと思います。

 

また、2025年度内に全従業員へ調査結果をフィードバックしました。そのうえで、グループ各社のガバナンス責任者に、次年度に向けた課題と改善策を報告してもらいました。この報告に基づいて、来年度末に改善施策の成果を検証し、各指標のスコアがどの程度変化したのか確認する予定です。

 

さらに、私たち内部統制・コンプライアンスグループはグループ各社を巡回訪問し、各社の経営層やガバナンス責任者と対話する機会を設けています。その際も調査結果を活用することで、これまで以上に深い議論ができるようになりました。

 

――今後の展望を教えてください。

 

河野|人事部門が実施している「従業員エンゲージメント調査」の結果と、「コンプライアンス経営診断プログラム」の調査結果を掛け合わせて、コンプライアンスリスクと、働き方や従業員の意識との関係をさらに精緻に分析していきたいと考えています。

 

その中から共通する課題を見つけ出し、人事部門と連携した施策につなげることで、より良い職場環境の実現を目指していきたいですね。

 

内野|私たちが目指しているのは、「業績よりもコンプライアンスを優先できる」組織の実現です。そのためには、一人ひとりの倫理観を磨き、風通しの良い職場をつくることが欠かせません。

 

厳しさだけでなく、このグループの一員であることに誇りを持てる。そんな職場環境を実現するために、これからも継続的に取り組みを進めていきたいと考えています。

 

 

西部ガス_サブカット

 

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