Case

「高水準」のその先へ ―日本新薬が求めたコンプライアンス意識の客観的評価

日本新薬株式会社

1911(明治44)年の創業以来、新薬メーカーとして人々の健康と豊かな生活創りに貢献してきた日本新薬。近年は難病・希少疾患を重点領域に据え、グローバル展開も加速させています。そんな同社では、内部統制部を中心にコンプライアンス意識の浸透に取り組み、社内の意識調査でも高い結果を維持してきました。そして、2025年からは、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用。なぜ新たな評価軸を求めたのか。その背景と取り組みの成果について、内部統制部の板野圭司さんと溝部慶子さんに話を聞きました。

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日本新薬株式会社 

内部統制部 部長

板野 圭司さん

 

内部統制部 コンプライアンス推進課 課長

溝部 慶子さん 

 

 

 

高水準の結果は本物か。内製調査に生じたある疑問

 

——まずはコンプライアンス推進課の組織体制とミッションについて教えてください。 

 

板野氏(以下、板野)|内部統制部には、コンプライアンス推進課とリスクマネジメント課の2つの課があります。当社では、コンプライアンスとリスクマネジメントを両輪として内部統制を推進しています。その中でコンプライアンスの浸透・定着を図る組織がコンプライアンス推進課です。

 

溝部氏(以下、溝部)|具体的には、コンプライアンスに関する社長のメッセージを4月と10月の年2回発信しているほか、月に1回の部門研修用の教材作成や、半年に1度社員に受講してもらうeラーニングの社内展開などを行っています。さらに、週1回、コンプライアンスに関する任意参加型のクイズを社員向けに配信するなど、継続的な意識喚起に取り組んでいます。定期的にさまざまな施策を展開しているのは、コンプライアンスやリスクマネジメントを社員一人ひとりに自分事として捉えてもらうためです。

 

 

 

——全社的なコンプライアンス推進体制はどのようになっているのでしょうか。

 

板野|社長を委員長とし、全社内取締役を委員とする「リスク・コンプライアンス委員会」があり、下部組織として「コンプライアンス推進会議」という諮問機関を置いています。医薬・機能食品・管理間接部門など、各事業部長が委員となっているこの会議体の役割は全社的な施策の方向性の検討です。ここで決められた内容は「リスク・コンプライアンス委員会」で承認を得た上で、各部門の管理職を通じて現場に浸透させていく流れになっています。

 

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——経営層と事業部門をつなぐ会議体を設けることで、全社的な方向性と現場の実情をすり合わせながらコンプライアンスを推進しているわけですね。先ほど伺ったさまざまな施策も含め、製薬企業ならではの高いコンプライアンス意識が感じられます。

 

板野|医薬品という、生命に関わる製品を扱う企業として、より高い倫理観が求められるものと認識しています。そのため、入社時の研修など、早い段階からコンプライアンスの重要性をしっかり伝え、知識と行動が結びつくようなサポートを行っています。

 

 

——取り組みの中で、社員の皆さんのコンプライアンス意識を把握する調査も実施されてきました。もともとは内製で実施されていたそうですね。

 

溝部|はい。質問の作成から社内展開、結果の集計および報告書作成に至るまでのオペレーションを内部統制部で担当してきました。

 

 

——2025年からは、社内の意識調査は、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」をご活用いただいていますが、外部の調査サービスに切り替えた理由について教えていただけますか。

 

溝部|内製で行ってきた調査では、高水準を維持してきたものの、その評価が正当なものなのか疑念を抱いたのが大きな理由です。自分たちで「意識が高い」と評価しても、客観的にみて、自社がどのポジションにいるのかがわかりません。そこで他社と比較する必要があると考え、ベンチマーク比較が可能な調査サービスの活用を検討しました。

 

板野|もう1つの理由は工数削減です。先にお話しましたように、コンプライアンス推進課ではさまざまな施策を継続的に展開しており、調査業務まで含めると負担が大きくなっていました。そこで調査の運営や集計・分析を外部委託することで、より重要な施策の企画・推進にリソースを割こうと考えました。

 

 

プログラム選定の決め手はベンチマークデータの精度

——委託先に日経リサーチを選んだ経緯を教えてください。

 

溝部|まずはWebで、調査会社の情報を収集しました。そして、最終的に3社のサービスを比較検討し、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」の採用を決定しました。

 

 

――比較の際、どのようなポイントを重視しましたか。

 

板野|やはり重視したのは、比較対象となるベンチマークデータの存在です。医薬品業界のデータをどれだけ保有しているかに加え、企業規模別などの細かなセグメントで比較できるかどうかも重要なポイントでした。そのような要件を満たしていたのが、「コンプライアンス経営診断プログラム」でした。

 

また、米国と中国の海外拠点も調査対象としていたため、日本語だけでなく英語、中国語への対応も欠かせない条件でした。調査後に十分な回答や分析結果が得られない事態は避けたかったため、海外調査の実績が豊富だったことも日経リサーチを選ぶ決め手になりました。

 

溝部|基本的な設問のパッケージに加え、独自の設問を追加できる柔軟性があったことも評価したポイントです。2025年に実施した第1回調査では、従来の内製調査で聞いていた内容から大幅に変えることなく、また日経リサーチの設問も活用し実施しましたが、今後は社会情勢などに応じて聞きたい内容が変わる可能性も踏まえ、そのような変化に対応できることも重要視しました。

 

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 心理的安全性が高めた調査の信頼性            

 

――調査は、2025年10月に国内外のグループ会社を含め、約2,000人の社員の方を対象に実施されましたが、調査運用で気を配ったことはありましたか。

 

溝部|回答者の匿名性を担保することは徹底しました。内製で実施していたときも「匿名」であることはアナウンスしていましたが、結局社内の1部署である私たちがデータを取りまとめるので多少の不安を抱く社員もいたのではないかと思います。その点、今回は第三者機関である日経リサーチが調査を実施したことで、社員にとっての心理的安全性は高まったのではないでしょうか。その結果、本音を含めた自由回答が以前より多く寄せられる傾向が見られました。

 

板野|調査設計などを行う段階で、日経リサーチから「回答を強制すると社員が本音を隠す恐れがある」との助言を受け、今回の調査では任意で実施する方針に転換しました。内製時は原則回答を義務化し、回答率は93.5%程度でしたが、今回は任意回答に切り替えたにもかかわらず、90.8%の回答率を確保でき、大きな変化がなかったことに安堵しました。

 

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――調査結果の分析について、以前の体制からどのような変化がありましたか。

 

溝部|以前は部門別での分析が中心でしたが、年代別や役職別など細かい切り口で分析が可能になったのは大きな収穫です。なお、今回外部委託をしたことで、結果に至った背景など、経営層への報告の際に、データをきちんと読み解けるのか不安がありました。そこで日経リサーチとやり取りをしながら、データの読み解き方を詰めていきました。ここが最も工数がかかった部分ですが、集計や分析そのものの手間がかからなくなった分、そこに時間をかけられたのはよかったと思います。

 

 

――内製から切り替えるきっかけとなったベンチマーク比較ですが、どのような条件でデータを絞り比較されたのでしょうか。

 

板野|比較対象を社員数1,000名以上の企業にするか、3,000名以上の企業にするかで社内でも意見が分かれました。当初は成長を見据え、社員数3,000名以上の企業をベンチマークとして検討しましたが、データを確認すると、社員数1,000名以上の企業が3,000名以上の企業に比べて高スコアであったため、より意識を高く持たれているであろう1,000名以上の企業にお勤めのビジネスパーソン層をベンチマークとして比較することにしました。

 

ベンチマークを改善活動の礎に。データ活用の価値 

――調査結果について、どのような感想を持たれましたか。

 

板野|全体的には、内製調査の結果と大きく変わらず、高い水準であることがわかり、ほっとしました。外部ベンチマークと比較しても概ね遜色ない結果で、自分たちの取り組みを客観的に評価することができたと感じています。

 

なお、唯一ベンチマークを下回ったのが「相談・通報制度(ほっとライン)の認知」についての項目でした。そこで、ホットラインの利用シーンを具体的に説明したQ&A形式のコンテンツの作成や、イントラネットからホットラインに直接つながる導線の整備などを現在実施しているところです。

 

 

――その他、今回の調査結果で得られた気づきがあれば教えてください。

 

溝部|内製で調査をしていたときは、社内で相対的に評価が低い部門があった場合、そこを重点的に手当てすべきだと考えていました。ところが、ベンチマーク比較をすると、その部門も業界水準で見れば決して低くないケースがあることが分かりました。社内の物差しだけで評価することの限界を実感しました。

 

これはグループ会社も同様です。これまでは、グループ会社同士の比較でスコアが低かった会社も、業界のベンチマークでみると水準を上回っていました。これまで自社のコンプライアンス水準は低いと悩んでいたグループ会社の経営陣が安堵したという声もあがっています。

 

 

――最後に、調査で得られるデータ活用の価値について改めて考えを聞かせてください。

 

溝部|データがなければ、施策が効果を上げているかどうかを示すことはできません。そのような意味でもデータは欠かせないものと考えています。ただ、データがすべてではないことも、常に意識する必要があると肝に銘じています。

 

例えば、施策運用側としては、任意参加のクイズの参加率を上げたいという思いはあります。しかし、参加率を上げることが目的化してしまっては本末転倒です。目的は、社内のコンプライアンス意識の維持・向上で、データや評価指標はあくまで目的を果たすためのツールとして位置づけています。そのような意識で、地に足のついた活動を続けていくことが重要だと考えています。

 

また、近年ではデータを重視する風潮もあり、そのような環境においては、施策の必要性や効果を説明する際にも客観的なデータが欠かせません。ベンチマークを含む調査結果は、施策を進める上での共通言語としても大きな役割を果たしていると感じています。

 

板野|業界の中での自社の立ち位置が分かるという点で、今回の調査で得られたデータの説得力は強いと感じています。自分たちだけで「良い会社だ」と評価しても社員側としては納得感が低いのではないか、という懸念がありましたが、客観的なデータがあれば、社員も自信を持つことができます。

 

コンプライアンスは事業活動の土台です。その水準を客観的に確認できたことは大きな収穫です。今後も年1回を目安に調査を継続し、課題が見つかれば改善を重ねながら、コンプライアンスを土台とした持続的な成長につなげていきたいと考えています。

 

 

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今回伺った日本新薬様のお話は、高い倫理観と厳格なコンプライアンスが求められる製薬企業において、客観的評価の重要性を示唆するものとなりました。社内調査だけでは把握しきれない自社の立ち位置を、ベンチマークと照らし合わせることで、強みや課題も含め、正確に捉えることが可能になるのです。日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」は、このような目的を果たすソリューションです。ぜひ、コンプライアンス推進活動の高度化・最適化につなげるための手段としてご活用ください。 

 

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