貴社のBtoBビジネス向けCS調査は、ビジネスの成果につながっていますか?
本コラムでは、顧客満足度(CS)向上に向けた活動(以下「CS活動」)を効果的に行い、ビジネスの成果につなげるための「CS調査」のあり方について、当社の独自調査の結果をもとに解説します。
CS活動は、経営幹部の次のような問題提起から始まることが多くあります。
「お客さまのホンネを、我々は本当に把握できているのか?」
「お客さまの変化やニーズを捉えられているのか?」
「顧客理解を属人的ではなく、仕組みとして回せているか?」
CS活動はCX(顧客体験)向上や、カスタマーサクセスといった顧客起点の取り組みも含め、さまざまな形で展開されています。例えば、CS調査の実施はもっとも典型的ですが、他にも下記のような展開が見られます。
- 顧客情報の収集・活用という観点でのCRMやSFAシステムの充実、それに基づく具体的な活動と記録
- 商品開発にVoC(Voice of Customer:顧客の声)を反映させる仕組みの整備
- 現場スタッフの教育・研修
- CS活動を推進する現場メンバーを含めたCS委員会の運営 など
こうして見ると、CS調査は実態や課題を把握する「手段」であり、その他はその課題解決や推進をするための「体制」と言えます。そして、その先に企業としての具体的な評価があり、ビジネスの成果が存在します。
1. CS活動は部門を超えた全社活動だからこそ、データが重要
多くのCS活動、とりわけBtoBビジネスにおいては、経営幹部からの起案で始まることが一般的です。なぜなら、CS活動は営業部門だけの問題ではなく、商品自体の魅力や納品後の保守などのアフターサービスを含め、全社のさまざまな部門が協力する必要があるためです。1部門の起案では他部門を巻き込むことが難しいため、経営トップからの推進がスタート地点になりやすいと考えられます。
同様に、CS委員会といった活動形態をとる企業もよく見かけますが、これも全社的な協力や調整を行う組織体が必要になるためと考えられます。
企業経営に限らず、何事にもデータや情報といった判断の手がかり(拠り所)が必要です。かつてのKKD(勘、経験、度胸)も過去の経験に基づく暗黙知であり、大切な“拠り所”ではありますが、外部環境や企業文化が変化する中で、それだけでは社内の納得を得にくくなっています。CS活動を推進する上でも、客観的な“拠り所”が重要です。実際、CS委員会がCS調査を主幹している例も多く、部門を越えて全社で動くための「共通の土台」として、CS調査の結果が機能しています。
判断の手がかりには、売上や利益などの数値データに加え、CS調査やコンタクトセンターに寄せられる声、CRM・SFAに記録された情報といった広義のVoCも重要な役割を果たします。
データには大きく分けて「行動データ」と「意識データ」があります。現在、DXの推進により行動データは蓄積されやすくなっていますが、具体的な施策につなげていくためには、背景にある「理由」がわかる意識データを取得できるアンケートが引き続き有益です。また、BtoBビジネス向けCS調査では、営業担当者がリーチしにくい顧客企業内の関係者に対し、日頃はお話しいただけない不満を含め、一律のフォーマットでお伺いできるという大きなメリットがあります。
実際、当社の独自調査に寄せられたコメントでも、「これまで各営業担当者の属人的な感覚に頼っていた顧客評価を、定量的かつ客観的なデータとして可視化できたことが最大の成果」という声が挙がっており、CS調査による客観的な可視化がCS活動のベースとなり、成果への起点になることがわかります。
2. 成果につながるCS調査のポイントとは?
しかし、ただやみくもにCS調査を実施すればよいというわけではありません。当社では「どのようなCS調査が成果につながるのか」という観点で独自調査を実施しました。
当社の分析では、「成果を得られている企業」を以下のいずれかに合致する状況と定義しています。
- 『顧客の課題解決や成功』優先姿勢の浸透度の高さ:5段階の一番上の選択肢
- 過去3年間売上トレンド:10%以上の増加
- 過去3年間法人顧客数の増減トレンド:10%以上の増加
このような成果を得られている企業とそうではない企業を比較し、特徴的なアンケート項目を整理したものが下図です(※分析は、当社独自のテキスト&データマイニングツール「KeyExplorer」により算出された特徴量に基づいています)。
▼成果を上げている企業に共通して見られる特徴


【調査仕様について】
年1回程度は定期的にCS調査を行い、PDCAサイクルを回すことが大切です。また、BtoBビジネスでは関与者が多いため、顧客企業1社に対して複数の関係者に調査を行うのが基本形といえます。しかし、当社の調査結果によると、顧客企業1社に対して複数の関係者に調査を実施している企業は【約半数】にとどまっています。
【調査設計について】
適切な責任者が存在し、目的が明確であることは基本です。その上で、公正な実施のために対象企業・対象者の条件が明確に定義されていること(営業など現場の裁量に任せきりにしないことや、条件合致者を抽出できるCRMなどの整備状況が良好であること)、そしてアンケート作成時にさまざまなVoCを参考にしていること(日頃の活動の中で仮説に基づいた検証事項が検討されていること)が重要なポイントとなります。 調査回答のコメントでも、「本音を引き出しやすい適切なアンケートの設問を思案するのに時間がかかる」「対象先の選定や設問確認、依頼文の調整、関係部署への説明などに一定の負荷が掛かった」といった設計段階での苦労や悩みが見られました。
【分析について】
収集した調査データを、選択肢質問だけでなくフリーコメントも含めて十分に分析しているかどうかがポイントになります。これには、仮説検証など企業の分析リテラシーが求められます。 当社の調査によると、分析状況は下図の通りであり、選択肢・コメントの双方について「十分に分析している」と回答した企業は【約半数程度】にとどまっています。


【調査結果の共有・活用について】
このフェーズの難易度が最も高いと言えますが、広く社内に結果を共有し、施策化、KPI設定、施策の進捗管理を行うことが重要です。 当社の調査コメントでも、「改善案の策定や、現場へのアクションプランの落とし込みにおいて、効果的な運用プロセスが社内で確立しきれておらず、調査結果を具体的な業務改善につなげるフェーズで運用上の難しさを感じている」など、施策化プロセスに関する課題が多く挙げられていました。
当社の調査結果によると、全社で広く結果を共有している企業は【約25%】、総合満足度などの指標を会社として目標値(KPI)に設定している企業は【約60%】に達しています。なお、KPI設定については金融業界で設定率が高く、製造業やIT企業では低い傾向が見られました。 また、施策化の状況は以下の通りで、約40%が「会社全体と現場の双方で施策化を行っている」と回答した一方、同程度の約40%は「現場のみの対応にとどまっている」という結果が得られました。

3. さまざまな場面で見られるCS調査の効果
当社の調査に寄せられたコメントからは、CS調査がもたらす幅広い効果がうかがえます。経営判断への寄与、部門間連携の促進、現場の気づき、ベストプラクティスの展開など、多岐にわたる場面で効果が実感されています。
- 「お客様の声がダイレクトに経営層に届くようになった。それによって経営の意思決定と施策展開の迅速化に繋がった。」
- 「調査結果を基に各部門とディスカッションを行うことで、開発部門やバックオフィスを含めた社内全体に顧客起点の意識が芽生え、部門間の連携が以前よりスムーズになりました。」
- 「現場にフィードバックすることで様々な気づきに繋がり、行動変容に繋げられている。」
- 「高評価を受けた事例を社内共有することで、成功パターンの横展開や社員モチベーション向上にもつながりました。」
4. 貴社のBtoBビジネス向けCS調査は、客観的な拠り所になっていますか?
ここまで挙げてきたCS調査のポイントは、ビジネスの基本と言えるものばかりです。CS調査に限らず、目的を明確にし、仮説を持ってデータ収集・分析を行い、得られた課題を確実に施策化して実行することが求められます。これらは、これからの時代を生き抜く企業にとって必須のリテラシーであり、「顧客の声を聞く」という商売の基本そのものです。 CS活動を掛け声だけで終わらせないために、客観的なデータを拠り所に、部門の垣根を越えて成果に結びつく活動へと昇華させていくことが重要です。
貴社のBtoBビジネスにおけるCS調査の現状はいかがでしょうか。 当社の「法人ビジネス向けCS調査診断アセスメント」は、全10問の設問に数分でご回答いただくだけで、5段階評価と4分類スコア、そして貴社のCS調査に対するフィードバックコメントをご提供します。 5段階評価は★の数で示され、各段階の構成比は以下の通りです。診断をご利用いただくことで、自社の現在地を客観的に把握することができます。

法人向けCS(顧客満足度)調査の「実施・活用」の現在地を、ぜひ一度診断してみてはいかがでしょうか。
【調査概要】
- 調査主体:日経リサーチ
- 対象者:売上300億円以上の企業で、過去3年以内に法人向けCS調査を実施している担当者
- 回収数:357人
- 調査時期:2026年6月実施
この記事を書いた人
- エグゼクティブ・コンサルタント
- 市嶋 信子
国内外のCS・CX、マーケティング・営業、ブランディング、経営戦略・ビジョン策定などの多くのプロジェクトに従事。特に、B2B企業向けのCS・CX、営業改革を専門とする。アンケート結果に加え、企業が保有する実態データも合わせた分析も行い、データドリブンでの実践的な企業課題の解決を支援している。
法人ビジネス向けCS調査診断アセスメント
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