Report

「満足しています」の裏側 生保契約者の6割は、保険会社のことを話題にしない

「金融FOCUS」保険編より

「お客さま満足度は、おおむね良好です」

毎年実施しているお客さま満足度調査で、こうした報告を受けている保険会社は多いのではないでしょうか。

 

日経リサーチが実施した金融行動調査「金融FOCUS」で、生命保険契約者2万5,000人にメインで利用している保険会社に対する総合満足度を尋ねたところ、「満足」「やや満足」を合わせた回答者は57.9%。「やや不満」「不満」はわずか4.3%にとどまります。この数字だけ見れば、大きな問題はないように映ります。(図1)

 

しかし、「家族や友人にその会社を紹介したいか」を0〜10点で聞くと、印象は一変します。

 

積極的に勧めたい「推奨者(9〜10点)」はわずか8.8%。一方で「批判者(0〜6点)」が62.5%を占め(NPS−53.6)、最も多かった回答は、真ん中の「5点」で38.6%でした。(図2)

 

 

生保編1_図1_2

 

不満があるわけではない。けれど、積極的に人に勧めるほどの体験・思い入れもない。こうした「静かな契約者」こそが、今の生命保険契約者のリアルな多数派なのです。

 

話題にもならない、接点もない

家族や知人との会話やSNSなどネット上で、加入している保険会社を「話題にしたことがない」人は64.8%に上ります。

 

金融商品は「詳しくない」「人それぞれだから」「責任がもてない」といった心理が働きやすく、他人に勧めにくい側面があるのも事実です。ただ、問題なのは、この1年間に保険会社と「一度も接点(担当者の訪問、マイページ、ホームページ、DMなど)がなかった」人が43%もいる点です。

 

保険は『安心』という目に見えない価値を購入する商品だからこそ、何もない日常において加入を実感する機会がほぼありません。満足度が安定していても、それは信頼の表れではなく、単に関心が薄れているサインかもしれません。

 

ここで多くのCS担当者が直面するのが、「では、誰に、何をすればいいのか?」という壁です。

 

満足度スコアや自社の強みや弱みの把握から課題が見えても、具体的な「次の一手」につながらない。改善活動で満足度が上昇しても、業績や収益に結びつかないーー。全体の平均値ばかりを追っていては、この問いへの答えは見えてきません。 

 

契約者を「タイプ」で捉えると、打ち手が見えてくる

金融行動調査「金融FOCUS」では、お金に関する意識と行動から、生活者を8つの顧客タイプに分類しました。

 

保険編のデータで見ると、契約者は大きく3つの層に分かれることが分かりました。

 

A.すでに動いている層(16%)

①しっかり実践層

②自分で決めたい層

B.きっかけ次第で動く層(49%)

③関心はある準備中層
④まわりに合わせたい層

⑤守り重視の堅実層
⑥現状で満足層

C.今は響かない層(35%)

⑦そのうち考えたい層

⑧いまは関心薄め層

 

満足度やロイヤルティは、タイプによって大きく違います。

 

例えば、「①しっかり実践層」は満足度74.8%、NPS −24.9、ポジティブな口コミ経験も36.6%と、全体の2.5倍に達します。また、この1年以内の接点が「全くない」割合も18.5%にとどまります。


対照的なのが「⑦そのうち考えたい層」です。満足度47.1%、NPS −65.4に落ち込み、約半数の49.9%がこの1年以内の接点が「全くない」。さらに案内は「一切不要」と回答した人が52.6%に達します。

 

【表1:タイプ別の特徴】生保編①表1:タイプ別の特徴

 

上記からもわかる通り、全体の「満足度57.9%」の中には、関係の深いエンゲージメントの高い契約者と、関係がほぼ切れている契約者が混在していることになります。

 

「全員」を動かそうとしない

大事なのは、「全員に同じ働きかけを行う」ことではなく、「相手によって活動内容を変えること」です。

注力すべきは、契約者のほぼ半数を占める「きっかけ次第で動く層(49%)」です。(③④⑤⑥)
中でも、「③関心はある準備中層」は、満足度69.0%と高く、ポジティブな口コミ経験も29.2%あります。


また、全体の約2割を占める「⑥現状で満足層」は、今は保険会社との接点が薄い(接点なし50.5%)ものの、「初心者向け」「少額から」といった最初のハードルを下げるアプローチで動き出すポテンシャルを秘めています。

同じ「きっかけ次第で動く層」でも、背中を押すスイッチはタイプごとに異なります。だからこそ、自社の契約者にどのタイプが多く、業界平均と比べてどこに偏りがあるのか。それを知ることが、実効性のあるマーケティングのスタートラインとなります。

 

満足度を「測る」から「活かす」へ

満足度調査は、自社の現在地を知るための有効な手段です。そこに「誰に・どんなきっかけを与えれば動くのか」という解像度の高い視点を加えることで、満足度は単なるレポートから「打ち手を決める経営指標」へと変わります。

次回は、契約者の「関心はあるのに動かない」という心理構造をさらに掘り下げます。保障の見直しや資産形成に関心を持ちながらも、なぜ最後の一歩を踏み出せないのか。阻む壁の正体をデータで紐解いていきます。

 

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