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企業ブランドの進化は、2つの壁への挑戦 ―新指標「ブランド戦略サーベイ1000」2026から

記事の概要

企業ブランディングの課題は、その必要性を「経営の言葉」や客観的な数値で説明しにくい点にある。顧客だけでなく、社員・投資家・パートナーなど多様なステークホルダーから選ばれ続けるためには、共通言語としてのブランド指標が必要となる。  

新指標「ブランド戦略サーベイ1000」では、評価基準を従来の「感覚的な印象やイメージ評価」から「ブランド自体の強さ」と「商品、サービスへの貢献度」を掛け合わせた資産価値評価へと刷新し、測定企業1000社を、各社の企業ブランドの進化のフェーズにあわせて「ブランド浸透(ステージ1)」「ブランド貢献(ステージ2)」「価値維持・拡大(ステージ3)」の3段階に分類した。  

分析結果から、多くの企業が認知獲得後の「価値転換の壁」で足踏みしている実態が判明した。また、BtoCやBtoB、金融・インフラ業など、業種・業界によって認知向上や購買貢献へのハードルの高さが大きく異なることも浮き彫りになった。

業種に応じた適切なゴールやKPIを設定するために、自社のポジションをぜひ確認してみてほしい。  

ブランド戦略を経営の言葉で語れていない、という課題

 「あの競合のようにCMをやりたい。コーポレートブランドを強化したい。でも社長からは営業強化が先だろうと言われ、話が進まない」―担当者からしばしば聞かれる悩みである。

 根底にあるのは、なぜコーポレートブランディングに取り組む必要があるのか。経営の言葉で説明できないからだ。そもそも、ブランドとは、目に見えないフワッとしたもの。今、自社のブランド力が競合社と比べてどの程度で、誰に対して勝って、誰に対して負けているのか。将来の売上や、就職希望者の数にも影響が出そうなことが数字で見せることが出来たならば、この社長は、話の続きを聞いてくれたかもしれない。

 “コーポレートブランディングに取り組む理由”、それは「選ばれ続ける企業」であるためだ。「お客様」に選ばれることに注力すればよかった時代から、今はどうだろう。共に働いてくれる人、投資をしてくれる人、新事業開発を共に歩むパートナー。選ばれたい対象は増える一方だ。時々は優先順位も変わる。最近は、AIにまで選ばれる必要性も出てきた。

 様々なステークホルダーに、自社をどのように認知して、理解してもらうのか。やはり共通言語は必要で、その役割を企業ブランドは担ってくれるはずだ。

指標変更で誕生した新分類

 ブランド新指標の議論は、3年前からスタート。この間も、AIの登場、トランプ政権の再登場、円安、中東不安、半導体株の急騰。大きく私達の世界を変えてきた。正しい経営判断することが難しくなっているからこそ、ますます情報が必要となってくる。

 今回のブランドを「経営の基盤」、「無形資産」として捉える考え方は、グローバルで活躍する大手企業には馴染みがあるものだが、自社の認知度も正確には把握できていない企業にとっては、極めてハードルが高い考え方であることも事実だ。

 測定企業を1000社に拡大する中で、ブランドの現在地を、わかりやすく伝えられないか。そんな発想から生まれたのが、ブランドステージという考え方である。測定方法を従来の「感覚的な印象やイメージ評価」から「ブランド自体の強さ」と「商品、サービスへの貢献度」を掛け合わせた資産価値評価へと変更したことで、より分類がしやすくもなった。

 認知度を評価の一部に組み入れたことから、「ブランド浸透を促進するステージ」、「認知浸透後、ブランド貢献を高めるステージ」、「既にブランドが購買への貢献が確認できるステージ」までの分類が実現した。この分類は、業種・業界による、ブランド価値向上の道のりの違い、難しさも浮き彫りにした。

 

「認知の壁」を超えても、「提供価値の壁」に大きなハードル

 新評価基準に基づき、測定企業1000社を各社の企業ブランドの進化のフェーズにあわせて3つのステージに分類した。

ステージ1 ブランド浸透を促進するフェーズ ブランドの認知やエンゲージメントの力が相対的に低く、強化が必要となる初期段階
ステージ2 ブランド貢献を高めるフェーズ ブランドの認知や浸透は進んでいるが、購買や利用を促進する力がまだ弱い段階
ステージ3 ブランド価値を維持・拡大するフェーズ すでに購買や利用を促進する力があり、今後も維持・拡大をめざす段階

 

 今回の1000社分析の結果、多くの企業が『認知の壁(ステージ1)』は越えても『価値転換の壁(ステージ2、3)』で足踏みしている構図がみえてきた。いわゆる「知られているけど利用に進まない」、いわば購買や利用を促進する企業としての魅力、選ばれる企業になるための力が弱いという段階だ。これらは、業種・業界により大きなハンデがあることもわかってきた。

 

2つの壁_データ散布図


1. 認知が獲得できると評価が連動して進みやすい業種

食料品、医薬品、小売業など消費財、生活密着の業種。認知が獲得できると企業に対する評価の転換も進む傾向。

業種 件数 ステージ1 (%) ステージ2 (%) ステージ3 (%)

食料品

87

17.2

5.7

77.0

医薬品

25

36.0

20.0

44.0

小売業

121

33.9

25.6

40.5

※業種分類別の結果のうち、件数=20社以上の業種から一部抜粋して掲載

 

2. 認知の獲得自体に壁がある業種

機械、建設業、ゴム、繊維製品、電気機器、卸売業などBtoBや産業財の業種。一般消費者接点が少ないため認知自体がそもそもの壁。

業種 件数 ステージ1 (%) ステージ2 (%) ステージ3 (%)

機械

29

72.4

6.9

20.7

建設業

45

71.1

22.2

6.7

電気機器

88

63.6

12.5

23.9

情報・通信業

96

56.2

26.0

17.7

 
 

3. 認知は獲得できるが価値転換にハードルがある業種

電気ガス業、不動産業、保険業、銀行業、証券業などの金融、規制インフラ業種は、認知は獲得できるが、買われるとは限らない。価値転換自体が壁。

業種 件数 ステージ1 (%) ステージ2 (%) ステージ3 (%)

銀行業

26

26.9

61.5

11.5

保険業

20

5.0

95.0

0.0

 

そのゴール設定は正しいか?

 すでにコーポ―レートブランディングに取り組んでいる企業は、具体的な数値目標をもっていることが多い。認知、理解にとどまらず、提供価値のKPIを設定している企業も多い。時々思う。その目標はどこから?自社のブランド価値向上のためのそのゴール設定、水準は正しいのか?提供価値にジャンプする前に、もっと足もと、ブランドの地固め、認知の質を理解することから始めるべきではないか…。どうも業種・業界で目標にできる数値の水準、ハードルが高すぎるKPIはありそうだ。1000社の中の自社のポジション。一年に一度、ぜひ確認してみて欲しい。

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